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越谷和史 interview:ヘアサロン『Of Hair』という看板の下で生まれた気持ち

東京・元麻布の閑静な住宅街に、ひっそりとたたずむ隠れ家のような美容室「Ten」。美容師の手「TE」が縁「EN」をつないでいくという意味を店名に込めたオーナーの越谷和史さんは、それを実現するかのように、身近なお客さまだけでなく、海外に飛び出して縁をつなぐ活動を始めている。

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憧れの先輩たちの背を追いかけて

越谷 和史さん

「もともと、人と接する、ルーティンではない仕事をしたいと考えていました。父の実家が床屋さんだったことや、美容専門学校に通っている友人に『美容師、面白いよ!』と勧められたことなどもあり、美容師を目指してみようと思いました。美容専門学校に在学中、インターン先として行かせていただいたのが有名な美容室『Of Hair』。社長の古里オサムさんが、当時はまだ世間に浸透していなかった『地球に優しく』という趣旨の話をされているのを雑誌で読んで、『この人はすごい!』と感動しましたね。それ以来、古里さんは尊敬し憧れる存在です。卒業後はそのまま『Of Hair』に就職しました。サロンには古里さんを筆頭に、憧れの先輩たちがたくさんいて、いつかは自分もあのようになりたいと努力を重ねていたら、あっという間に14年という時間が過ぎていました。

もちろん挫折もたくさんありました。中でも、最後の2~3年間、表参道店の店長を務めていた時期が一番大変でしたね。お客さまの数が増えてカットのスピードを求められ、回していく感じになってしまったんです。明らかに自分のキャパシティを超えてしまい、仕事を楽しめない。いわゆるスランプでした。こんな状態で店長をしていていいのかと葛藤しました。それまで追いかける先輩がいた時と違い、店長という立場まで到達した時にぶつかった壁は、なかなか乗り越えることができませんでした」

自分の力量を試してみたかった

「このころ、同時に悩んでいたことがあります。『Of Hair』は有名な美容室です。でも、その環境に甘えているのではないか。もし看板がなくなったら自分はお客さまにどう評価されるのか……。次第に、自分の足で立って力量を試してみたいという思いが芽生えました。まだ店長になる前、30歳になったころのことです。スランプ状態と重なっていたため、本当にきつくて、この状況から抜け出せたのは実は独立して1~2年ぐらいたってからなんです。スタッフには言えないことですね(笑)。本格的に独立を宣言して動き始めた時は、美容に敏感な人達の多い表参道や原宿、恵比寿といったエリアではなく、自分が年をとっても長く仕事ができるアットホームな場所を思い描いていました。実はこの店舗は、かつて叔父のデザイン事務所だったんです。幼いころから出入りしていた思い出の場所で、叔父から『ここでやらないか』と話があった時に、ここだって直感しました。住宅街にあり、あまり目立たない外観なので、税理士さんから『なんでここなの』って言われるんですが(笑)、とても気に入っています」

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これからはスタッフが育つ環境づくりを

越谷 和史さん

「まずは親しいお客さまにご来店いただきながら、足りない部分を補いつつ、現在の店舗の形をつくり上げました。場所柄か、新規のお客さまは年齢層が高くて、お友達を連れていらしてワイワイと楽しく過ごしていかれます。そうすると、ありがたいことにそのお友達の方々も、後日カットしに来てくださるようになりました。5年目を迎えた今、私が一番に取り組むべきことは、スタッフの教育だと考えています。髪に対する私の思いをしっかり理解してもらってから、カット技術の指導に入ります。初めはダメ出しばかりで自信を失うかもしれませんが、うまく出来たらきちんと褒める。それを繰り返していくと自信がついてきます。私もその姿を見てやりがいを感じます。

また、この夏から月1回だけ営業する『Eight』というジュニアサロンを始めました。スタッフにこのブランドを任せて、彼らが育っていけばいいなと思ったんです。さらにチャレンジしたいなら、独立も応援するというサイクルをイメージしています。

スタッフを押さえつけて、自分の手元に置いておくという気持ちはまったくありません。なぜなら、それは自分がこれまでしてきたことと真逆のこと。私自身が『自分の足で立つ』ことで自信を持てたし、今もそうだからです」

「ハサミノチカラ」で技術の輸出を

「日本の美容技術は世界に十分に通じるものです。私たち職人が目に見えない技術を輸出することによって、何かを変えられるんじゃないか。そう考えていた時に、フィリピンの孤児たちの髪を切ったり、カットを教えたりする『ハサミノチカラ』の存在を知り、これこそ技術の輸出だと思って参加しました。実際にフィリピンに行ってみると、孤児院の子供たちはやんちゃでいたずらしてくる。でもその眼の奥に、どこか寂しいものがあると感じました。私は幼いころから周りの人達にたくさんの愛情をもらって、自分自身もその愛情を持っているからこそ、お客さまを喜ばせようという思いでカットをしています。孤児院の子供たちのあの眼にはそれがない。そう分かった時に、私が『1年に1回は必ず日本から来て、髪の毛を切ったり教えたりしてくれるおじさん』として、無条件に子供たちに愛情を与える存在になろうと思いました。

今年、3回目の訪問を終えて、子供たちからもらった手紙に『カットを教えてくれたことで希望が見えた』と書かれていたのを読んで、自分は彼らから必要とされているんだと心から実感できました。

彼らのような境遇の子供たちの髪をカットして喜んでもらい、美容師の技術を教え、美容専門学校を現地につくり、そのシステムが回っていくようにする。これが私の美容師としての夢で、生きがいです。死ぬまでに実現できたらいいなという目標であり、スタッフにも常々これを目指しているサロンなんだと伝えています」

お客さまの次の一歩を後押しする仕事

越谷 和史さん

「美容師になって一番良かったと思うのは、美容師でなければ会えないかもしれない人に会えることです。例えば、大きな会社の社長が、お客さまとして私の店にいらっしゃる。そして私がその方の髪をカットしてさしあげる。そうすると、会社の規模は違っても同じ土俵に立っているかのようにお話をしてくださいます。美容室も会社組織であり、組織の運営の本質は一緒だから、勉強になると同時に、勇気をいただけます。もうひとつ、お客さまの気持ちを察して、後押しをすることも美容師の醍醐味だといえます。髪の毛には、人間のストレスや記憶がたまっています。次のステップを踏みたい、何かを切り離したい、カットで気分を変えたい。そんなお客さまの心の動きを読んで、後押しをしてさしあげる。そしてその方が次にいらした時に、輝き方が違っていたり、『髪を切って周りから褒められました』『自分が変わった気がします』と言っていただけるのが、最高なお褒めの言葉です。

髪をきれいにカットするという『道具』を自分の手に入れるまでは、確かにとても大変です。手に入れてからも終わりはなく、どんどん新たな課題が出てきます。でも、どんな時であっても、すでに『道具』が手に入っているからこそ、お客さまに勇気を持ってスタイルを提案できます。お相撲さんが引退で断髪式をするように、お客さまが新しい一歩を踏み出すタイミングに、私たちは関わらせていただけるんです」

技術とともに、感性を磨いて自信をつける

「これから美容師を目指している人達の目標はそれぞれだと思いますが、技術は自分のものになったら消えない財産なので、自分のものにするまで頑張ってほしいですね。『石の上にも3年』という言葉があります。美容師として完全になるには3年どころか、7年はかかるでしょう。与えられた仕事で実践を積み重ねつつ、何か問題が発生した時に、どうやってクリアしていくのか。それをいつも楽しめるようになるまで、大変でもやるべきだと思います。

それから、『きれいだな』『すてきだな』と思ったものを写真に撮って、何でこれをきれいだと感じたのかを考えるのも楽しいですよ。自分で気になったものをインプットして、理解して、アウトプットする。そうすると、自分が好きだと思うものが分かります。それは自分を知ることでもあります。これを日常的に続けていくと、幸福感があふれてくるし、自分の自信にもなるでしょう」

Profile

越谷 和史さん

越谷 和史(こしがや かずひと)さん

Ten代表

ハリウッド美容専門学校卒。有名美容室『Of Hair』に入社、古里オサム氏のもとで14年間勤務。最後の3年間は表参道店の店長を務めた後、2009年9月、35歳で独立した。現在、2人のスタッフとともにTenを運営するかたわらで、毎年ハサミノチカラにも参加ししている。

座右の銘:「灯火を升の中に置くなかれ」(灯火は升の下に置くのではなく、燭台に飾って周囲を明るく照らすもの)

ハサミノチカラhttps://relax-job.com/expert/hasaminochikara01.html

Company

Hair salon Ten

Hair salon Ten

元麻布の住宅街にある白い建物の1~2階をたっぷり使い、ゆったりとした時間を過ごせる美容室。部屋が広く、ソファもあるので、友達や家族連れで訪れるお客様もいる。しっかりとお客さまとお話した上でメニューやスタイルを決め、人生を楽しめるヘアスタイルを常に提案している。

東京都港区元麻布3-10-8 山水荘
TEL/FAX:03-3405-1008
http://hairsalon-ten.com/

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