中学生で決めた夢への道を着実に歩んで開業!【ハリジェンヌ 代表 光本朱美さん】#1
美容業界で働くうえで「独立」という目標を持つ人は多いはず。そんな方に向けて、独立して成功した先輩オーナーの経験談をお届けする本企画。
今回お話を伺ったのは、美容鍼エステサロン「ハリジェンヌ」代表の光本朱美さん。エステと鍼を融合した高い技術が世界的に支持され、来年オープン10周年を迎えます。
前編となる今回は、光本さんがなぜエステに東洋の鍼灸を取り入れたサロンを開くことになったのか、開業までの道のりをお聞きしました。
お話を伺ったのは…
ハリジェンヌ代表 光本朱美さん
2012年、表参道に美容鍼エステ「ハリジェンヌ」をオープン。現在では美容鍼エステサロン6店舗、美容脱毛サロン1店舗を経営するほか、海外27カ所と技術提携中。新しい美容鍼灸モデルの確立を目指し、多くの女性の美容を底上げするための情報発信を続けている。
小学5年生で「女性が輝く場を作りたい」をいう夢を持つ
──まずは開業までの道のりをお伺いしたいと思います。エステの道に入られたきっかけは?
私の実家は岡山県でエステを経営していたので、小さいころからエステティシャンの女性たちと触れ合う環境がありました。みなさんすごく前向きで明るくて、自分もそういう人になりたいと思っていたんです。経営をしている父の影響もあり、小学5年生のころには「こういう女性が輝く場を作りたい」と夢を持つようになりました。
小学校低学年のころから外見にコンプレックスがあったこと、あこがれのエステティシャンのお姉さんがいたこと、あと「好きなものはずっと好き」という性格だったので、継続することで良くしていける仕事がしたいという思いから、美容の仕事がしたいと考えるようになりました。
ただエステは両親がしているので、自分はもっと新しいものがしたいという気持ちもありましたね。中学生のころは、その「新しいもの」を探していました。
──すごく早い段階で美容の道に入ることを決めていたんですね。美容鍼との出会いは?
最初は中学2年生ごろ、ふつうの鍼灸との出会いでした。中高一貫のアスリート校に入学したんですが、そこに鍼の先生が来ていたんです。
甲子園前に肩が上がらなくなった野球部の高校生が、鍼1本で改善して笑顔になる。それを見て直感的に「コレが美容でできたら、すごく喜ばれるんじゃないか」って思ったんです。
そこから鍼の先生に鍼灸の話を聞きました。継続することでより改善できるという面も自分の構想にフィットしていたし、歴史が深いのも魅力的で。何より施術を受けた人が笑顔になることに感動したので、鍼灸と美容をリンクしようと決めました。
美容と鍼灸の融合を目指し、フランスへ留学
──中学生で開業の構想ができあがっていたんですね。
そうですね。そこからはいろんな鍼灸院でリサーチしました。するとやはり鍼は治療院というイメージで、美容における歴史がないことがわかりました。そこで世界の中でも美容とエステティックの歴史が長いフランスで、まずは美容の勉強と資格取得を目指すことにしたんです。日本だと5年かかる国際ライセンスを1年で取得できるコースに進むため、高校卒業後フランスに留学しました。
当時はフランス語が全然できなかったので、不安で仕方なかったですね。それでも夢のために、まずは行ってやるしかない!って感じで(笑)。実際、留学してからは大変でした。毎日のように化粧品や香水のプレゼンがあって、50人の前でフランス語で話さなきゃいけなかったり。1年で資格を取ると決めていたので、睡眠時間も削ってかなり勉強しました。
──留学経験で得たことはありますか?
いろんな人種の方に触れたことで、肌質や毛質、美容習慣、ストレスに対する向き合い方まで、こんなに違うんだと感じました。今までの自分の当たり前だけじゃダメで、柔軟性が必要なんだというのを、早いうちに経験できたのは良かったなと思います。フランスのエステや東洋の鍼灸の、いいところも欠けているところも見ていく必要性を実感しました。
メジャーではない美容鍼を学ぶため美容鍼灸の学会を作る
──資格取得後、帰国されてからは鍼灸の勉強をされたんですか?
帰国後は三重県にある鍼の大学で4年間学びました。専門学校より大学のほうがいろいろな経験が積めて、将来的に海外で仕事をするときにビザも取りやすいんです。だから美容鍼を最初に手掛けた方が鍼灸の学部長をされている大学を選びました。
ただやはり、まだ美容鍼というものはメジャーではなかったんですよね。だから学べる場を作ろうと思って、大学1年生で日本初の美容鍼灸の学会を作ったんです。全国から美容鍼をしている方を呼んで、100人くらい集まってくださって…。そういう場を作っていくのも大切ですよね。大学側には反対されましたが、いろんな方が協力してくださって、みんなで一緒に学ぶことができました。
──夢に向かってどんどん進んでいきますね!卒業後はすぐに開業されたんですか?
大学4年目に鍼の資格を取得して、卒業後は3年ほど鍼灸院に勤めました。経営一家で育ったこともあり、周りにサラリーマンがいなかったので、一度お勤めしてゼロからやっていく経験が必要だと思っていたんです。
私、最初の就職ってすごく大切だと思っていて。「人生で一回の就職だから、自分がここと思う場所で、その会社を絶対にのばしたい」という気持ちがあったんです。最初は自分の中で優先順位が決まっていなかったんですけど、就職先に求めるものを138個書き出して、その中から本当にしたいことを絞っていきました。
そうして決めた兵庫県の鍼灸院から、大学4年生の4月に内定をいただきました。即戦力になりたいと思っていたので、毎週三重県から兵庫県まで通って、いろいろ学ばせていただきました。
シンガポールでの開業に失敗…一念発起して表参道へ!
──3年お勤めされた後、ついに開業されたんですね。
最初はシンガポールで開業しようとしました。当時はシンガポールがすごく人気で、結果としては自分の実力ではビザが取れず失敗に終わりました。
当時の自分は不安感ばかりで、こうするんだと思って動くのではなく、できない理由ばかり考えて行動できない感じで…よくないスパイラルに入っていたんです。だから開業前の半年は、すごく苦しい時期でしたね。
──そこから表参道で開業することにしたのは何故ですか?
シンガポールで開業しようと思ったのは、自分の技術を世界中に人に発信したいという気持ちがあったからでした。だから「シンガポールがダメなら美容トレンドの発信地でもある東京・表参道だ」と思って。
独立開業したのが2012年5月で、8月に店舗オープンを決めました。とはいえ、住んだこともないし知り合いもいない、経営の経験もないのですごく大変でしたね。
──開業の際、苦労したことは何ですか?
最初は集客面ですね。待っていてもお客様は来ないので、近くのお店に直接行って美容鍼が何なのかを伝えるなど、店舗オープンまでいろんなところに足を運びました。お店ができるまでは、友人が経営している10坪のネイルサロンにパーテーションを立ててベッドだけ置いて施術させてもらって。
ただ「これがしたいんだ」という気持ちだけはすごくあったので、そこに共感してくださってご予約いただいたり、頑張っているから紹介するよと言っていただけたり。そういうつながりに、とても感謝した期間でした。
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中学生のころに決めた夢への道のりを着実に歩んでいった光本さん。苦労を乗り越えて開業したなかで気づいた、開業するために大切なことを教えていただきました。
開業するうえで大切なこと
1. 原点を高めておく
2. 今いる場所で圧倒的に一番になる
3. 不安と思うことにポジティブに挑戦する
「なんのためにそれをするのか、結局そこに戻ったりする」という光本さん。後編では、そんな光本さんが開業当初から大切にしていること、業績アップの工夫や変化についてお聞きします。
取材・文/山本二季
撮影/米玉利朋子(G.P.FLAG)