タフな環境、若い感性の吸収。成功のカギはたゆまぬ努力と高い柔軟性【ヘアサロンECLAT代表・ヘアメイクアーティスト 時田ユースケさん】#2
ヘアサロン「ECLAT」の代表であり、ヘアメイクアーティストとしても活躍する時田ユースケさん。前編では仕事に明け暮れた20代の日々と、「自分らしい働き方」の追求を紹介しました。
後編は、多忙な中でもサロンワークを続ける理由や、美容業界を目指す方へのアドバイスを伺います。
ECLAT設立~現在:スタッフへの信頼感、新しい感性、高い柔軟性が多店舗展開のカギ
──現在のECLATをオープンされたのはいつ頃ですか?
2017年ですね。現在は、アイラッシュ専門店を含む5店舗を展開しています。
──コロナ禍にもかかわらず、急成長を続けている秘訣はどこにあるのでしょうか?
実は、数字や計算は苦手で(苦笑)。だから、サロンの出店計画だけでなく各店舗のコンセプトや運営方針など含め、それぞれの店長任せです。うちのスタッフはみんな優秀で、本当によくやってくれています。特にECLATの浅井君には頼りっぱなし。ヘアメイクの現場でも手伝ってもらっているし、もう頭があがりません(笑)。
僕が代表として出来ることは、スタッフが「やりたい」と言ったことに対して「いいよ、やってみなよ」と任せることだけ。アイラッシュサロン開店のきっかけも、元々は僕のお客様だったアイリストの子が仕事を辞めるって聞いたから。「じゃあ、ECLATでお店やってみる?」という会話から始まりました。
──スタッフへの厚い信頼が感じられます。働いているのは若い方が多いようですね。
うちのスタイリストの平均年齢は24-25歳です。僕は相手の年齢や上下関係にこだわりがないので、お店の若いスタッフたちから新しい技術や感性を教えてもらうことでいつも刺激を受けています。ECLATが注目されたのは韓国ヘアやハイトーンカラーがきっかけでしたが、これからもトレンドを積極的に取り入れながら、柔軟にやっていきたいですね。
何事もまずはトライしないことには始まりませんから。万が一失敗したとしても、すぐにやめれば済む話でしょ?大切なのはスピード感とスタッフへの信頼感。スタッフから出た意見はとりあえずやってみる。それに対する検証と修正は、走りながらでも十分間に合います。
──求人にはどのようなツールをお使いですか?
求人はインスタグラムでの募集のみ。いつもありがたいことに、新卒も中途もたくさんの応募をいただいており、全員の熱意・やる気に応えられていないのが申し訳ないなとも感じています。店舗を増やすことで採用枠を拡げ、美容人材を育てていくことが今後の目標の1つではありますね。
──ほかに、お店として何か目標はありますか?
大阪・名古屋・福岡など、地方から出店のお誘いをいただいています。それを実現することと、海外、特に韓国への展開ですね。現在の美容分野は韓国風メイクなど輸入が主になっていますが、今度は日本のヘアやネイル技術の国外発信を仕掛けてみたいと考えています。
サロンワークとヘアメイクの両立:自分が成長を続けるために必要な場所
──本日の取材は、ヘアメイクの現場の合間にお時間をいただきました。多忙な毎日ですが、サロンワークも続けていらっしゃるそうですね。
美容師とヘアメイク、両方続けることで感じられる気づきや学びがありますから。どちらも自分にとって必要な場所です。
サロンは、お客様自身が「このお店・スタイリストが良い」と選択し、自分のホームに施術を受けに来てくれる商売。美容師は受け身のままでも成り立ちます。ヘアメイクと違って、自分の作風やオリジナリティを出しやすいのも大きなやりがいだと思います。ただ、そのスタイルに慣れてしまうと、施術させてもらうことに対して「慣れ」や「当たり前」という感覚が出てきて、流れ作業になってしまう怖さがあるとも感じています。
一方、ヘアメイクの現場はスタッフや雰囲気が毎回異なり、ピリピリしたヘビーな空気やタイトなスケジュールで極限状態になる場合も。そんな精神的にタフな状況下、求められる以上の最高の結果を出さなければいけません。自分を成長させ続けるという点で、これ以上に最良の環境はないと思っています。
──そのストイックな姿勢が、今の時田さんを形作っているんですね。
努力すれば必ず報われるなんて綺麗事を言うつもりはないけれど、努力しない限り決して成功することはないということは確かです。何もしないで結果を出せるのは、ほんの一握りの天才か運が良い人。そして僕は天才型ではなく、コツコツした努力が必要なタイプ。だからこそ、何事にも手を抜くことはしたくないんです。
この業界は若手でも輝ける世界。自分が20代の頃は、30代40代の先輩がやっているような仕事をやりたくてがむしゃらに頑張ってきました。その積み重ねがあるからこそ、今では大御所の方と一緒に働く機会も多くいただき、1つずつ夢がかなっていると実感します。
次はきっと大丈夫。1つだけのチャレンジだけで終わらせないで
──お話を伺っていると、私も仕事を頑張らなきゃと背筋が伸びる気持ちになります。
そんな大層なものじゃないですよ(苦笑)。ただ、僕みたいに周囲にうまく馴染めなかった人間でもここまで頑張れているんだぞという姿を見せることで、集団における人間関係に悩む若い子たちにとってロールモデルの一例になるといいなという思いはあります。
美容業界に限りませんが、若い人には1回のチャレンジだけで諦めるのではなく、いろんなことを見て、いろんな人に出会って、試行錯誤してほしいですね。人間って、1つ壁を超えれば加速度的に成長していくもの。花が咲くときはいつかきっとくると信じて、自分の殻を打ち破ることに挑戦してもらいたいな。
──ヘアメイク、スタイリストを目指す方へのアドバイスをぜひ。
これまで、流行の発信や美容師の実力は東京に一極集中していました。けれど今は地方のサロンも遜色ないスキルを持っているし、インスタなどを使って個人がセンスや技術をアピールできる時代。競争相手が多く、厳しい時代だからこそ、自分の売り・強みを分析し、さらにうまく生かすことを意識しなければいけません。
自分の「見せ方」を分かっている子は強いと感じます。世界観がしっかりしていて、オリジナルのスタイルを確立すること。僕も意識していることですが、今の時代の流れに自分が当てはまっているかを常に自問自答し、新しい感性を貪欲に吸収し続けることが大切かなと思います。一緒に頑張っていきましょう。
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時田さんの成功の秘訣
1.「自分らしい働き方」の追求
2.スタッフへの信頼感と、相手の年齢や立場にこだわらない柔軟性
3.環境に甘えないたゆまぬ努力
取材・文/黒木絵美
撮影/喜多二三雄
Salon Data
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電話:03-6427-9740
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