10年以上通える「卒業しないエステ」を実現。「KIARA plus」代表・宅野あきさん

現在、横浜で自宅エステサロン「KIARA plus」を運営する宅野あきさんは、20年以上に渡って現役で活躍するエステティシャンです。宅野さんのコンセプトは「卒業しないエステ」、「10年通えるサロン」。お客さまの内、8割が15年以上通い続けるリピーターだといいます。宅野さんによると、大切にしていることは「お客さまが困ったときに思い出してもらえる存在になること」。前編では、エステティシャンとしてのこれまでの歩みや、お客さまの信頼を得るために行っていることについて伺います。

お話を伺ったのは…
宅野あきさん

エステティシャン、日本キャメス協会認定講師。大学生時代、広島県のエステサロン「KIARA」でアルバイトしたことをきっかけにエステティシャンの道へ進み、26歳で社長に就任。これまでに3000人以上のカウンセリング・施術を行う。35歳で出産したのをきっかけにサロンワークからお客様のサポート管理、スタッフ教育など在宅ワークに切り替え、2022年5月に横浜に自宅サロン「KIARA plus」を開業。82歳まで現役エステティシャンとして働くことを目指し、活動を続けている。

Instagram:@kiara.aki

ブログ

自宅サロン「KIARA plus」

必要としてくれるお客さまの存在があったからこそ、続けることができた

お客さまが喜び、感動してくださることが自分にとっても最大の喜びだという宅野さん

――エステティシャンになろうと思われたきっかけを教えてください。

大学生時代、友人に頼まれてエステサロン「KIARA」のアルバイトの面接について行ったら、私もスカウトされて。初めはちょっと働いてみようかな、と軽い気持ちでしたが、進路を考えはじめる頃にはお客さまもついてくださって…。このままお客さまを放り出すわけにはいかない、そんな気持ちからKIARAへの就職を決めました。その頃には自分の施術によってお客さまのお肌がどんどん変わっていくことがやりがいにもなっていたんです

――それ以来、エステティシャン一筋なんですね。

ええ、そうです。19歳から働き始めて26歳で社長に就任し、35歳まで広島で活動をしてきましたが、夫の転勤により横浜に移住することになりました。同じタイミングで出産したこともあり、サロンワークからお客さまのサポート管理など在宅ワークに切り替えたのですが、子育てをしながらでもエステティシャンとして直接お客さまと携われる場所がほしい!という思いから、今年の5月に自宅サロン「KIARA plus」を開業しました

――これまでに大きな失敗や、挫折しそうになったことはありましたか?

もちろんありますよ! サロン経営が厳しくなった時期があり、そのときは記憶がないほど必死に働きました。エステティシャンだけでなく、外商やTVのお仕事、教育関係、海外取引…できる仕事はすべて引き受けて走っていましたね。

――大変だった時期、何が原動力となったのでしょう?

やはりお客さまの存在ですね。経営が厳しくなっても、通い続けてくださるお客さまがたくさんいらっしゃったので、この壁を乗り越えてなんとかしなくては、という責任感がありました

従業員のみんながひとつになって頑張ってくれたことも、苦境を乗り越える原動力になっていました。当時を振り返ると、スタッフ教育面など反省することがたくさんあるのですが、本当にありがたい仲間たちに出会えて感謝しています。

時間をかけて得た信頼が「卒業しないエステ」に繋がる

自社で開発した化粧品を手にする宅野さん。本当に良いものを作るために開発に取り組んだ

――お客さまとスタッフの存在は宝物ですね。具体的に、どのようにして苦境を乗り越えられたのでしょうか。

経営が厳しく、数字に追われていたときに、私たちのサロンをよく知る税理士の先生からいただいた「お前たちはまだ終わってないだろう。売り上げを伸ばしたいなら、お客さまが本当にほしいと思う商品やサービスを考えよう」というアドバイスをきっかけに、単に売り上げを作ることではなく、お客さまに心から感動していただくことに集中することが大切だと気持ちを切り替えました

もともと自社で開発した基礎化粧品があったのですが、改めて成分を見直す中で、いまも扱っている美肌菌の化粧品を作っているメーカーの方と出会いました。私を含めスタッフが実際に使ってみて、感動したんですね。それで、お客さまにもこの感動を届けたいと声をかけ、商品開発に取り組みました。本来であれば同業他社に提供していただけるものではないんですが、私たちが置かれた状況を知って応援してくださったんです。本当にありがたいですね。いまも美肌菌化粧品「BIOSETRE」は、サロンを運営する上で重要なツールです。

――オリジナル商品の売り上げは、それほど重要なのでしょうか?

そうですね。サロンを運営する上で物販は非常に重要で、特にスキンケア化粧品は毎日使うものですから、お客さまと繋がり続ける重要なツールになります。また、新しくサロンを出したいという方に商品を卸すことも可能です。

――なるほど。宅野さんが掲げる「卒業しないエステ」「10年通えるサロン」になるために、最も大切なことはなんですか?

「痩せたい」「お肌の調子が悪い」など、お客さまが困ったときに真っ先に思い出してもらえる相談役になること。これがリピーター顧客さまの育成につながります。いまはどんな情報もネットやYouTubeで検索すれば調べられるような時代ですから、一般論は要りません。初めのカウンセリングやトリートメント中の時間を通じてお客さまの状況を伺い、体質や年齢、肌質、生活環境など色々な情報をもとに、お一人お一人の状態を見極めながらアドバイスできるかどうか。

私はお客さまに対して毎回1つのステップを提示するんですね。例えば「3㎏痩せたい」というお客さまがいらっしゃったとします。状態を見て水分代謝が悪い方であれば、痩せる前に必要なポイントとして「まずは水分をしっかり摂ることから」とお伝えし、1つ課題をクリアしたら次のステップへ進むといった具合です。無理して短期間で痩せさせてしまうとリバウンドしてしまいますから、ご自分に合った方法で体の中からきれいになっていただくことを心がけてきました。結果として、私のお客さまは15年以上通ってくださっている方が8割を占めています

いつも等身大の自分で、お客さまに寄り添いたい

横浜市にある自宅サロンは1日1~2組限定。お客さまとしっかり向き合う時間にしたいと話す

――お付き合いが長くなるほど、信頼関係が濃く、深くなりますね。エステティシャンとして22年間、どんなことを大切にされてきましたか。

等身大で生きることです。この22年の間で、私自身にも色々な変化がありました。どんなときも嘘、偽りのない自分をお客さまに見ていただくことで、お客さまが私を信頼してくださり、共に歩む時間を共有できていると感じています。嘘や偽りがない自分でいることは、長くエステティシャンとして活動を続ける秘訣でもあると思いますね

――お客さまと一緒に、年輪を重ねているんですね。

本当にそうですね。すべて積み重ねてきた努力であり、決してラクをしてたどり着いた結果ではありません。お客さまから信頼を得るためには、私自身が勉強をして知識を身に着けていることや、常に体の中から健康で、きれいであることも重要です。誰だって、肌がぼろぼろのエステティシャンのトリートメントは受けたくないですよね(笑)。そういったことも含めて、常に「等身大」の自分を見ていただくことが重要だと思っています。

宅野あきさんが「卒業しないエステ」「10年通えるサロン」運営を実現している3つのポイント

宅野さんが長く通いたくなるサロンの運営を実現しているポイントは以下の3つでした。

1.お客さまに喜んでいただくことを最優先にサービスや商品を考案している

2.お客さまと繋がり続けるためのツールとして物販にも力を入れている

3.施術の際は毎回小さなステップを与え、次回予約時に共有する

もともとは食の仕事に就くことを目指し、大学では栄養士の資格を取得したという宅野さんは、食事や栄養指導も積極的に行っています。エステティシャンになってからはインドでアーユルヴェーダも学んだのだとか。「人に伝えるのだから、自分もきちんと学んでおかなければ」という宅野さんの姿勢がたくさんのお客様の信頼を得ている理由だと感じます。後編ではプライベートサロンやオンライン講座など現在の働き方について伺いました。後編もお楽しみに!

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