医療従事者と患者さん間のギャップがなくなるまで、SNSで情報発信を続けていく【アトピー・超敏感肌のくすり屋 わくたよしのぶさん】#2

現在、くすり屋の3代目を任務しながら、敏感肌やアトピーに悩む人たちをターゲットに、SNSで発信を続けているわくたさん。

前編で伺ったのは、わくたさんがSNSを始めることにした理由やそれに込めた想い、はじめに開設したTwitterについて。Twitterのフォロワー数が増えたきっかけとYouTubeの動画を制作する際に気をつけていることなどをお話しいただきました。後編となる今回は、SNSを使用して情報を届けるために配慮していること、SNSによって仕事にもたらされた影響、今後の展望をお聞きします。

お話を伺ったのは…

「老舗のくすり屋・わくた漢方(株)」の3代目 わくたよしのぶさん

他業種に新卒として就職するも、父親の病気を機に退職。その後は北海道にて、代々より訪問販売を行う「老舗のくすり屋・わくた漢方(株)」を継ぎ、3代目となる。現在は、くすり屋と並行しながら幼少期からアトピーに悩まされた経験を活かし、SNSにて発信を行っており、SNS総フォロワー数は4万人ほど。また、自社より敏感肌の人に向けたスキンケア商品を自ら開発するなど、肌に悩む人々を救うべく意欲的に活動中。

常に正しく誠実に情報を届けるために配慮していることは「寄り添う気持ち」

――反応が増え始めてから、情報を発信する際に気をつけていることはありますか?

だんだんフォロワーやチャンネル登録者数が増えていくと、誰しも人気者になれたと勘違いすることってあると思うんですね。僕もきっとそうなってしまうなと予測していたので(笑)、必ず初心に立ち返ることを忘れずに心がけていました

――ご自身で初心に立ち返ることができたのはなぜですか?

SNSでの活動をしながらも、くすり屋としての訪問販売員の仕事を両立していたことが大きく影響していると思います。SNSとは違って実際に直接対面するわけですから、継続的に対応できる人間力が求められるんです。

というのも、普段僕が訪問販売しているご利用者様の大体が60代以上でSNSに関与していない方が多いので、僕にいくらチャンネル登録者数やフォロワーが増えたところであんまり反応がないんですよ。ご利用いただいている方々が求めているのは、正しい知識や情報のほか、人とのつながりを大事にしている方ばかりですから、とっても天狗になっている場合ではありません(笑)。常に背筋が伸びる思いで仕事ができるので良い刺激となっていると感じますね。

――SNSを始めてから気づけたことなのですね。続けて、心がけていることをお聞かせください。

心がけていることは、何か商品を紹介するときは僕がいいと思ったり、商品のために紹介するのではなく、エビデンスがしっかりとれている商品を紹介することです。そもそも、僕が経験してきたことが全部正しいとは限りませんし、みんなにその方法が当てはまるわけでもありません。

見てくれている人の悩みに役立つ知識や商品を紹介することが何より大事ですし、自分の正しさを証明するためのSNSにはしたくないと思っています。あくまで僕が紹介しているのは、皮膚の悩みにまつわる情報。そのあたりは嘘偽りなく、真っ当な意見で向き合いたいと日頃、強く思っていることですね。

――どれだけみなさんに寄り添っていらっしゃるのかが、伝わってきます。

「僕のチャンネルでは、僕自身のパーソナルな情報や人間性よりも、なるべく役立つ情報を届けることを軸にしています」。とわくたさん

寄り添う、という点では、美容をポジティブなイメージに変換していきたいとも考えています。というのも、アトピーや敏感肌である方たちにすれば美容ってマイナスであることが多いんです。根深い肌悩みがない方たちは一般の美容に詳しいインフルエンサーやBAさんの情報を参考にすることができますが、深刻な肌悩みのある方は同じ情報でも参考になることが少ないのです。その少ない層に向けて、方法やアイテムによってポジティブに変換できるんだよと。できるだけ、美容のマイナスイメージを払拭できたらいいなという気持ちも込めて配信しています

SNSで発信していたことで必要としている人に認知してもらい、届けることができた

監修者には「完成は難しいかも」と言わせたこともあったとか。「作るからには不要なものやファッション性のある成分は入れず、実用的で効果のある商品でないと意味がないと思って開発に向き合いました」。と、わくたさん。

――では、SNSの活動をしてから仕事の幅が広がったと思うことはありますか?

仕事自体はあまり変わりありませんが、SNSをやっていたおかげで届けたい層に届けられる土台ができたと感じます。それを実感できたのは、一年前に自社で「リソスキン トータルケアミルク」という商品を開発したとき。

僕を始め、アトピーや敏感肌で悩んでいる方が使えるスキンケアがあればいいなと思ったことを受けて始めた企画でした。ですが、アトピーや敏感肌の方に向けた商品というのは法律上、「アトピー向け」などと明記することができないんですね。どうしよう…と考えたとき、普段からSNSで配信していたおかげで伝えることができました。

この出来事で分かったのは、アトピーに効くとか大きな声で伝えることはできないけれど、間接的に認知してもらうことが可能だということですね。

――思っていた反響は得られたのでしょうか?

けっこういただきましたね。大変だったけど、作って良かったなと思える反響をいただきました。加えて、まだまだ肌で悩んでいる方が多いこと新しい悩みなども寄せられていて。開発した商品も「アトピー向け」と称して販売できないなど、患者さんまたは肌に悩む消費者と開発者または医療従事者との溝があることを改めて実感することになりました

さらに僕自身、余計に不確かな情報を流すことはできないなと、考える良いきっかけにもなりました。新たな悩みの声をいただき、現在は第二弾として化粧水を思案中です。

「医療従事者と患者との間のギャップ」を埋めるために柔軟な対応力を持っていたい

――…ということは、これからもスキンケアアイテムの開発を続けられる予定なのでしょうか?今後の目標も併せてお聞かせください。

いえ、継続的な開発は特に考えていないです。既にある商品を作るなら僕が作る必要はないですからね。ただ、それぞれ肌悩みを抱えている人たちがほしいと思う商品がない場合、さらには悩んでいる人が一定数いればその都度要望に応えて対応したいと思っています。それに当たる商品が、たまたまオールインワンミルクと現在開発中の化粧水というだけで。

今後の目標としては、最初にSNSを始めるきっかけにもなった、医療従事者と患者さんとの間にあるギャップを埋めるための活動を続けていくことです。そのためには、患者さんだけではなく医者にも現状に気づいてもらうことが必要になってくるので、SNS上で積極的に医療従事者の方とコンタクトをとり、定期的にセッションして交流をとっています。

最終的には僕の発信がなくてもいいくらいになって、患者さんと医療従事者と双方によりよい選択ができる世の中になっていけばいいと思っています。

信頼される配信者になるための3か条

1.自身の経験や学んだ知識を正確に伝える

2.同業者と積極的に交流し、自身の知見を効率よく広める

3.発信する情報の軸をぶらさず、誠実さを忘れない


取材・文/東菜々(レ・キャトル)
撮影/SHOHEI

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