美容学生がすべきは、SNSを活用して応援者を増やすこと/株式会社ⅲ 寺村優太さん #2
就活に効果的なSNSの活用法について、有識者へのインタビューを通して学ぶ本企画。前回に続き、美容業界のSNS活用を牽引し、教育・採用のコンサルティングなども行っている、株式会社ⅲ(スリー)代表 寺村優太さんにお話を伺います。
後編となる今回は、前回よりさらに詳しく、美容学生におすすめのSNS活用法を教えていただきました。
お話を伺ったのは…
株式会社ⅲ(スリー)代表 寺村優太さん
山野美容専門学校を卒業後、都内1店舗を経てフリーランスに。ヘアケアに特化し、著書『前からも後ろからもキレイがあふれる美髪のルール』を出版。2020年、株式会社ⅲ(スリー)を立ち上げ、「美容師 V R カリキュラム事業」を始めとする教育改革の他、プロダクトのプロデュース・開発、採用・求人や集客、SNS活用法などについてのコンサルティングや講習活動などを行う。
Instagramの「好きで繋がる」特徴を利用して
学生だからできる方法で応援者を増やす
――美容学生が始めるなら、おすすめのSNSはなんですか?
今の美容学生の子たちが美容師になった時に、集客で一番使えるのはTikTokかもしれません。集客対象は、自分より年下になる可能性が高いので、その年代はTikTokで情報収集している人たちが多いんです。その場合は、髪のセルフアレンジの解説や、プチプラコスメのレビューなど、同年代~やや年下の子が知りたい美容情報を発信してフォロワーを増やすのがいいと思います。
でも就職活動に活かすなら、Instagramもおすすめです。美容学生がまず取り組むべきSNSでの活動は、自分の応援者を作ることだと思います。それには、好きなものという共通点で他者との繋がりを作りやすいInstagramが適しているんです。
――「応援者を作る」方法は?
まず自分のアカウントの投稿内容は、美容に関する発信をしなくてもいいと思います。例えば、自分の盛れている写真だったり、ファッションコーディネートを載せたりするだけでもOK。その上で、#1でお話したように、ストーリーに自分の努力している様子をあげていき、成長過程をハイライトにまとめていきます。
ある程度ハイライトがまとまったら、自分が好きなものについて検索して、その中からプライベートでSNSをしていそうな方たちにコメントするんです。
例えば、おしゃれなカフェが好きなら、いいなと思うカフェの投稿に「急に質問してすみません。素敵な写真を見て私も行きたいと思ったんですが、お店の名前を聞いてもいいですか?」と聞いて、やり取りしてみる。そこからDMでお礼をしたりとコミュニケーションを重ねていくうちに、アカウントを見てもらえます。
アカウントから好きなものや人間性が感じられたり、美容師を目指して頑張っている様子が見えてきたりする中で、好感を持ってもらえるようになる。フォローしてもらえたらフォローを返す。その後は、それまで同様にストーリーで努力の様子を伝えていきつつ、できればコミュニケーションを取り続け、「美容師になったらカットモデルお願いします!」と言えるくらいになったらベストです。
「かわいいな」「応援したいな」と思ってもらえる、人間性のアプローチとコミュニケーション。それをあざとく、計画的にやっていける人が、美容師になってからもお客様から支持されるんです。そのための練習だと思って、やってみるといいんじゃないでしょうか。
SNSを通して「他人を褒める」練習は
美容師になってから必ず役立つ
――美容師になってからも必要なコミュニケーションを学びつつ、応援者を作っていくんですね。
その人がどこを褒められたら嬉しいのかを察していく練習ですよね。それは、美容師になってから、お客様に接するのと一緒なんです。
技術がないうちから応援してくれる人を増やすには、まず相手を好きになることが、すごく大事だと僕は思います。Instagramをビジネスではなくプライベートで使っている場合、承認欲求を満たされたいという気持ちがあるものです。その承認欲求を満たしてくれる相手のことは、やっぱり好きになるし、「応援したい」と思いますよね。
僕だったら、「1日30人にコメントする」と目標を立てて、授業の休み時間や放課後を使って取り組みます。「いいな」と思った投稿があったら、全力で褒めるコメントを考える。そこからフォローに繋がらなくても、いいところを探して言語化する練習になります。
――逆にNGな方法は?
ハッシュタグから美容に関連する投稿をしている人に、端から「いいね」やフォローをして、フォローバックされなかったら解除していく…という方法を教えられることもありますが、嫌われるだけなのでやめた方がいいです。
本当に自分が仲良くなりたいと思ったり、「いいな」と思ったものだけに、ちゃんとコメントをする。そうでないと、的確な返信はできません。
同様に、明らかに美容師のアカウントだと感じられるものだと、美容学生の場合は不利になります。一般の方は、自分の投稿に知らないアカウントからリアクションがきたとして、そのアカウントが美容師っぽい投稿ばかりだと、「営業だな」と感じてしまいます。
でも、自分の可愛いと思うものや好きなものを投稿していて、プロフィールに「美容師を目指して日々がんばっています」ということが書かれたアカウントだと、コメントや「いいね」をされた相手も、純粋に自分の投稿をいいと思ってくれたんだと感じられて嬉しいですよね。だから学生のうちは、無理に美容アカウントを作ろうとしなくていいと思います。
――投稿内容でNGなものはありますか?
喫煙や飲酒、ちょっとメンヘラな投稿は、デジタルタトゥーを残すようなものなので、鍵付きアカウントでもしないほうがいいです。もし美容師として活躍できるようになった時に、リスクにしかなりません。
また、美容学生は学校以外で人に施術してはいけません。友人のヘアカットやカラーも本来NGですし、美容室でのアルバイトでも施術に入ってはいけないんです。しかし実際のところ、本人の経験になるしバレないだろうと施術させてしまう美容室もあります。そこで学生側がSNSに投稿してしまうと、大きなトラブルに発展してしまう可能性も。
SNSに投稿してよいものなのか、きちんと考えてから投稿することが大切です。
SNSでのコミュニケーションを
戦略的に行って選ばれる人材に
――これから就活に向けてSNSを活用したいと考えている美容学生に向けて、アドバイスをお願いします。
1つは、ストーリーとハイライトで、自分が練習してきたもの、努力の積み重ねを毎日コツコツ残しておくこと。それだけで、就活での見られ方が全く違ってきます。
もう1つは、もし少しでも入社したいと思うサロンや、素敵だと思う美容師さんがいたら、学生のうちに長文のDMで、熱意が伝わる文章を送っておくこと。返信が来なくても、面接の時などでエピソードとして話せますし、その場で見てもらえたら「こんなに前から、うちに入るために努力してきてくれたんだ」と感じられて、好感度が上がります。
この2つは、ぜひやってみて欲しいです。
また裏技的なものですが、例えば美容学校に講演にきた方のSNSの投稿にコメントをしたり、その人をタグ付けして感想を投稿するのもおすすめです。採用に積極的なサロンオーナーさんは、意外とそういうところを見ていて、「いいな」と思った学生をフォローしていたりします。
そんな風に、就活に有利な状況を作っていくことを考え、SNSでのコミュニケーションを戦略的に行うことが大切だと思います。
美容学生がSNSを活用するときのポイントまとめ
1.ビジネス感のない投稿×努力の記録で好感度アップ
2.一般の方とコミュニケーションを取り、応援者を作る
3.長文DMや感想コメントで、就活に向けて種をまく
取材・文:山本二季