ニッチなジャンルにこそ大きなチャンスがある! 【マタニティ整体白金サロン アクシェ 代表・川崎有希子さん】#1
サロンで働きながら「いつかは独立」と考えている人も多いのでは。そんな目標を抱いている方に、さまざまな独立の形を前編と後編の二回にわたってお届けします。
今回、ご登場いただくのは白金で妊産婦を対象にした整体サロン【マタニティ整体白金 アクシェ】を主宰している川崎有希子さん。前編では、対象を妊産婦に絞ったきっかけや、サロンを開くにあたってこだわったことなどをご紹介します。
お話を伺ったのは…
マタニティ整体白金サロン アクシェ 代表
川崎有希子さん
’04年に看護学校を卒業後、看護師として大学病院などに勤務する。産婦人科や美容皮膚科で経験を積むかたわら、ベビーマッサージやマイクロピグメンテーションの資格を取得。‘12年に自宅で妊産婦を対象にしたサロン開き、翌年には移転し現在に至る。
看護師として働きながら「何で起業するか」を模索
――看護師という安定した職業に就きながら、起業を考えたのはなぜですか?
看護学校に通っていたときから、「看護師」という職業に魅力を感じながら、「その先」を考えている自分がいました。10代のころから、父親が働く姿を間近で見ていて「男性に負けないくらい仕事をしたい」とずっと思っていたんです。起業するなら看護師の資格と知識を生かしたいと思っていましたが、「なに」で起業するかは、現在のマタニティ整体に出会うまで模索していました。
――医療の分野から美容にシフトしたのは何かきっかけがあったんですか?
看護師として救命救急科、手術室、産婦人科などさまざまな科で経験を積みました。その1つに美容皮膚科があるんです。一般的な病院と美容クリニックとでは仕事の内容がまったく異なります。一度美容系の仕事をすると病院勤務に戻るのが難しい…と思っていたので、期限を1年間と決めて転職しました。
クリニックに通うどの患者さまも、施術を受けるとキレイになって、自信をつけて明るい表情でお帰りになる。クリニックの施術は「医療」なので反応がダイレクトで結果が早いんですよね。「医療を美容に使わないなんてもったいない!」と思いました。患者さまが変わっていく姿を見ているだけで、私自身、すごく楽しかったんです。今まで「真面目な人だと思われたい」という意識がすごく強くて、病院ではずっと堅苦しい立ち居振る舞いをしていたのを、いったん捨てる決心をし、1年後に美容クリニックを辞めて病院勤務に戻りましたが、起業するなら美容業界がいい…と思うようになりました。
――サロンを始めるに当たって、妊産婦に着目したのはどんなきっかけですか?
産婦人科に勤務していたとき、たくさんの妊産婦さんに出会いました。そのときに「マッサージを受けたいけれど、妊婦だから断られた」とか、「子どもを預けられないから子連れで施術を受けたいと言うと、受け付けてもらえない」というお声をたくさん聞いたんです。
妊産婦さんだって、自分の時間が欲しいですよね。でも、受け入れるサロンにしたら、妊婦さんを受け入れて何かが起きたら困るし、お子さんを連れて来ても面倒を見るスタッフがいない。そうなると、お母さんのための時間をつくるのは、私しかできないことなのかも…と思うようになりました。
そこで妊産婦さんのキレイになりたい気持ちを優先できるような美容と解放、ビューティ&リリースをやろうと決心したんです。
妊産婦を施術するなら自分も経験してから!と出産後にサロンをオープン
――妊産婦のためのサロンをつくると決めて、すぐに起業したんですか?
妊産婦さんのサロンをつくるには、まず自分が妊娠・出産を経験してみないと分からないのでは…と思っていました。意図的に妊娠したワケではなく(笑い)、自然な流れで妊娠・出産をして育休中にマタニティ整体の資格を取りました。
育休が終わって勤務していた病院に復職する選択肢もありましたが、その当時の婦長さんに背中を押されて、そのまま退職。とりあえず、自宅でサロンを開くことにしました。
――ということは、川崎さんも赤ちゃんを育てながらの開業ですか?
そうです。子どもが熱を出したときは本当に大変でしたね。どうしても手が回らないときは、実家の母に頼って乗り越えました。
自分が子育てをしているからこそ、「ママだって自分の時間が欲しい」という気持ちが痛いほどよく分かりましたね。小さなお子さんがいても安心して施術が受けられるように、3~4名の託児スタッフを確保しました。
――サロンを開いて、集客はどうしたんですか?
実は私SNSが苦手で…。私が妊娠している間に知り合ったお友だちや、子育てをしている間に出会ったママ友に声をかけました。そのお友だちがまたお友だちに声をかけてくださって、お客さまの輪がどんどん広がっていった感じですね。
今でも直接お声がけした方や口コミでいらしたお客さまがほとんどです。
――1年も経たないうちにサロンを構えたんですね。
自宅サロンは「お試し」感覚でした。まずはどんな方が、何を望んでいらっしゃるのかを探りたかったんです。その結果を基にサロンをつくりました。
子どもが1歳になるかならないかという時期だったので、自宅と子どもが通うスクールに近いことを条件に物件を探して、今の場所を見つけたんです。結婚する前から「サロンを開くなら白金がいい」とずっと思っていたので、夢が叶いました(笑)。
――託児スタッフはそのまま?
自宅サロンのときは3~4名でしたが、ここに移ってからは6人体制にしました。託児スタッフはサロンに常駐しているのではなく、お客さまのご要望があればお願いしています。なのでメインを3人にして、それでも都合が付かなければ他の3名に声をかける…という体制です。
私のサロンでは保育士などベビーシッターの資格を持っている方、子育て経験のある方にお願いしています。子育て後の就職をサポートしたい…という気持ちもあるんです。もちろん結婚などを機に仕事を辞めた方もいますが、託児所の専任スタッフとして転職した方もいます。なかにはお客さまに「専任のシッターになってほしい」って、引き抜かれた方もいるんですよ。うちのサロンをステップアップの場として、どんどん大きく羽ばたいて欲しいですね。
川崎さん流! サロンを開業する前に心がけていたポイント
1.なにで起業するかを模索するために、いろいろなことにチャレンジしてみる
2.具体的なエビデンスや実体験に基づいて施術メニューを考える
3.お客さまが求めていることをしっかりリサーチすること
サロンを開業するとき、必ず「託児所スペース」をつくることを決めていた川崎さん。一瞬でも子育てから解放されて自分の時間を堪能して欲しい…という気持ちからだとか。それがサロンのコンセプトでもある「ビューティ&リリース」。川崎さんの底抜けに明るい雰囲気に、プレママさんもママさんも身も心も癒やされているようです。
後編では事業を継続させるために必要なこと、そして海外での事業展開についてお話を伺います。
撮影/森 浩司