コロナ禍での独立でも赤字知らず。「毎回ちゃんと感動のある施術」で2ヶ月待ちの人気サロンに。メンズセラピストサロンL with U ゆっくん先生#2
おじいちゃんに肩もみをしたら泣いて喜んでくれたことがきっかけとなり、セラピストを目指した東雄一さん。東さんのトリートメントは、神秘的でトラディショナルな手技に、解剖生理学をミックスさせた「ゴリアロマ」と呼ばれるもの。大きな男性の手だからこそ実現する、深く重い圧が魅力です。
東さんは、コロナ禍での独立にも関わらず、一度も赤字を出すことなく、2ヶ月待ちの人気サロンを作りました。人気の理由は、女性セラピストよりも丁寧な所作。そして、また来たいと思ってもらうために、毎回ちゃんと感動があること。その感動に匹敵する空間づくりの現れが、このお姫様仕様のサロン内装なのです。
お話をお伺いしたのは…
メンズセラピストサロンL with U
ゆっくん先生/東雄一さん
ミュージシャンからエステティシャン、セラピストへと転身。深く重く美しい「ゴリアロマ」創設者。コロナ禍での独立だったが、一度も赤字を出さず、2か月待ちの人気サロンに急成長中。プリンセスの部屋、クイーンの部屋という名がついたお姫様仕様の施術ルームは、スタッフの手作りなんだとか。2022年マッサージワールドカップ総合世界2位。2022年fann channel awardリラク部門優勝。
リピートしてもらうためには、毎回感動がちゃんとあること
――コロナ禍真っ只中に独立されたそうですが、ご苦労はなかったですか?
ありがたいことに初月から黒字でした。赤字を出さずに始められたのは本当に良かったと思います。実は、辞めてから独立するまでに1ヶ月しかなかったので、その間は寝る間も惜しんで必死に考えました。サロンのコンセプト、メニュー、内装などすべてのことを。あのムチャクチャは二度と味わいたくないですね(笑)。
――オープン当初はどんなお客様が来てくださったのですか?
エステティシャンのときに施術モデルをしてくれた方や、体を整えるのは僕に任せたいと言ってくださる方が支えてくださいました。前のお店のお客様には、大々的にオープンしますとは言えなかったんですが、僕がいなくなったことでSNSで見つけて来てくださる方もめっちゃいました。
――信頼関係が築けていたお客様がたくさんいたということですね。
本当にありがたいです。講師として話すときによく言うんですが、技術は当たり前にないといけない。技術があった上で次に必要なことは、気持ちだと思うんですね。お客様にどうやったら喜んでいただけるのか。おもてなしの部分が大事だと思います。口で言うのは簡単ですけど、いざこれをお客様に届けるのは簡単なことじゃないですよね。
――東さんは、どうやってお客様を喜ばせてきたのですか?
男性セラピスト自体がそもそもニッチな存在ですよね。例えば、街角アンケートで男性セラピストのサロンに行きたいかという質問をしたら、YESと答える人は少ないと思います。その少数のお客様が、実際サロンに足を運んでくれたときにどう感じるかが大事だと思うんです。僕は仕事柄、女性セラピストのサロンによく行きますが、女性セラピストよりもていねいな所作を心がけています。メニューのご案内から、タオル1枚かけるのも、すべてにおいてここだったら大丈夫と安心していただけるようにしています。それから、カウンセリングにはめちゃくちゃ時間をかけています。
――どれくらいかけるんですか?
長いと20分くらいかけることもあります。もちろんお客様の不調についても質問しますが、これからどんな施術を行い、お客様に何が起きるかを明確に伝えて、目線を僕と同じ高さに揃えていただく作業をします。
――2ヶ月待ちという人気の理由は、その丁寧さにもありそうですね。
一回一回の施術に妥協しないということは、胸を張って言えます。施術を受けたお客様が、ここにしかないトリートメントだと思ってくれて、また来てくれる。男性セラピストという職業がやっと評価される時代が来たという背景もありますが、一度来てくれた人がまた来たいと思い続けてくれること。そのために、毎回感動がちゃんとあることが大事だと思います。
――前回の感動を超えないといけないということでしょうか?
変化ではなく、もっと普遍的なものですね。ここに来たら、この不調から抜けられるという安心感みたいなもの。愛知県から月2回のペースで通ってくださっている方や、東京から来てくださる方もいるんですが、そういう方は唯一無二のサロンだと思ってくださっているんだと思います。
サロンの内観は、お姫様になりきれる非日常空間
――お姫様仕様のサロン内装が気になっていました。
コンセプトは、非日常でお姫様になっていただくこと。僕自身が美しいトリートメントと主張しているので、サロンを出るまでは非日常を味わってほしいと考えています。例えばめちゃくちゃおいしいフレンチのお店なのに、床が油でベタベタだったらちょっと違うなって思ってしまいますよね。これからなりたい自分と、その背景が一致しているほうが満足度は上がると思うので、お花畑にいるような「プリンセス」と、女王様チックな「クイーン」の2部屋を用意しました。
――東さんの美しいトリートメントにマッチした内装ということなんですね。お客様の反応は?
うわっ!てびっくりされる方が多いです。プロジェクタを切っても美しいということにこだわっているので、施術中に天井を仰ぐとプラネタリウムのようになっているんですよ。インテリアはネットで購入したり、歩いていて一目ぼれしたり、全部自分たちでコーディネートしました。トリートントを受けるときはうつ伏せが多いので、あまり周りは見えませんが、施術後にタオルを外したときの世界が美しかったら、終わった瞬間に現実に引き戻されずにすみますよね。
――とことんお客様目線なところが素晴らしいです。話は変わりますが、2022年マッサージワールドカップ総合世界2位受賞。これはどういう大会なのでしょうか。
毎年、世界中のセラピストがコペンハーゲンに集結して行われる大会なんですが、コロナ禍のため映像でエントリーできる試みがあったんですね。タイ古式部門、スウェディッシュなど5つの部門に分かれていて、僕はいちばん自由なフリースタイル部門にエントリーしました。部門を超えてすべての参加者の中で技術のなめらかさを競う総合部門で第2位を受賞しました。
――世界2位ってすごいことですよね。受賞理由はどこにあると思われますか?
僕自身、海外の方の施術を受けたことがあるんですが、やっぱり日本人の繊細な技術ってすごいんですよ。海外で活躍されている日本人の美容師の方もたくさんいますが、日本人には繊細なことをするのが得意な国民性があると思います。ざっくり、大雑把になることがなく、指先まで魂を宿らせることに長けている。足の指の先まで丁寧にケアしていく美しいトリートメントを、海外の方にはじめて知ってもらえたんじゃないかなと思っています。
東さんのサロンが2ヶ月待ちの大人気の理由は
1.女性セラピストよりもていねいな所作を心がける。
2.また来たいと思ってもらうために
毎回感動がちゃんとある施術を提供する。
3.お客様が陶酔する施術にマッチしたお姫様仕様のサロン内装。
ここで非日常が味わえる。
キラキラしたプリンセス仕様の施術ルームで、ダンスをするようにトリートメントを行う東さん。その姿にくぎ付けになり、今回のインタビューが実現しました。そもそも男性セラピストというまだまだニッチな世界で、いかに来てくれたお客様に喜んでもらえるかを考え抜き、それがお客様にきちんと伝わっていることが勝因なのではないかと感じました。
取材・文/永瀬紀子