どんな経験も自分の糧になる。無駄なことなんて1つもないんです 私の履歴書 【アロマ調香デザイナー®︎ 佐藤亜紀子さん】#2

自然の恵みである天然精油のデザイン性と機能性を組み合わせ、世界にたった1つの香りを創り上げる「アロマ調香デザイン®︎」。このオリジナルのメソッドで人や空間、多様なシーンに合わせて調香するのが「アロマ調香デザイナー®︎」で、佐藤亜紀子さんもその1人です。

総合商社を出産のタイミングで退職。母となり家庭を守りながら、海外生活での経験からアロマと出会い、その後のネクストキャリアとして香りの世界を選び、アロマ調香デザイナー®︎という職を目指すまでの物語を前編でお伝えしました。

後編では、アロマ調香デザイナー®︎として本格始動した佐藤さんの様子やこれまでのキャリアとの関連性、さらに佐藤さんの仕事観について迫ります。

「アロマ調香デザイナー®︎」は、香りやアロマの世界における仕事の1つの選択肢

香りの世界で、やっとやってみたいことが見つかった佐藤さん。ネクストキャリアがついにスタートするかと思いきや…?

――アロマセラピストとしての土台を持ちながらも、アロマ調香デザイナー®︎を目指すべく勉強や経験を積み重ねていた佐藤さんですが、その後は…?

帰国後、再度本格的にアロマを学び直しながら、アロマ調香デザイナー®︎としての活動を始める準備を進めていました。家庭の事情もありすぐに本腰を入れることができなかったのですが、いよいよ活動しようと思った矢先、コロナ禍になってしまって…

――この時期は、しばらく対面での接触もはばかられる時期でしたね…。

そうなんです。それまでのような活動自体がままならず、アロマ調香デザイナー®︎としての活動を一旦ストップせざるを得ませんでした。その間は、オンラインで調香することもありました

また、在宅でヘアケアメーカーの貿易業務の仕事にも携わっていました。自身の語学力を活かすこともでき、天然の香りを特徴としたヘアケアのプロダクトの取り扱いなどもあり参考になりました

その間にも可能な範囲でIAPA(一般社団法人プラスアロマ協会)の講座を担当したり齋藤の事業の手伝いなどをさせてもらっていました。そして、世の中もだんだん落ち着いてきたところでTOMOKO SAITO AROMATIQUE STUDIO(トモコ サイトウ アロマティーク スタジオ)のメンバーとして始動することとなります

何のために香りを作るのか? 大切なのは、相手への想像力

アロマ調香デザイナー®︎として本格的にキャリアを積み始めた佐藤さんが、仕事において大切にしていることとは?

――アロマ調香デザイナー®︎として空間演出や商品開発の仕事をされていく中で、心がけていることはありますか?

企業でも個人でも共通することですが、「クライアントが求めていることは何か」ということについて、とにかく深掘りすることです。ヒアリングはもちろんですが、雑談の中にもヒントがあります

例えば、ガーデニングが趣味のお客様だったら、お庭で育てていらっしゃる植物について伺ったり、お客様の思い出の場所が香りを創るヒントになったりすることも。その人を構成する要素やルーツ、生活スタイルなどについてもお聞きして香りづくりをしています

以前アロマセラピストの資格を取得する際に学んだ、対面でのコンサルテーションについての知見も、今の仕事に役立っていますね。

――お客様が求めることを目に見えない香りに落とし込むというのは、とても難しそうですね。

ああでもない、こうでもないと、チームのみんなでたくさん考えます。けれど、お客様が求めていたものをピタッと香りで表現できたかどうかって、一瞬でわかるんですよ。お客様の表情が目に見えて変わるんです。この仕事のやりがいを感じる瞬間ですね。

また、お客様の中には「香りを作りたいけれど何から始めたらいいのかわからない」と、相談に来る方などもいらっしゃいます。そのような方とヒアリングを重ねる中で、まずコンセプトから提案させていただいた時に「それそれ!」「それが言いたかったの!」といったような、お客様の真意を汲み取れた瞬間なども、同じくやりがいを感じます

――何か、印象的に残っている具体的なエピソードなどありますか?

知人から受けた個人の仕事ですが、フェムケア用のオイルにつける香りの調香を依頼されたことがあります。製造を委託しているOEMメーカーから香料の提案は受けたらしいのですが、どうにもピンと来なかったようで…。

なぜその商品を作りたいと思ったのか、消費者にどんなことを提供したいのかなど、彼女の起業や商品開発のストーリーを聞いた上で香りのコンセプトを作ったのですが、香りの評判がとても良かったんです。基材のオイルが売りのプロダクトでしたが、香りを重視した販売へ転換されたことは、香りの力を再認識した事例でもありました。

――香りの影響力って大きいですね! アロマ調香デザイナー®︎の仕事の一環としてIAPAでインスタトラクターもされていますが、その際に心がけていることはありますか?

自分の常識を押し付けないこと。様々な学習履歴をお持ちの方がいらっしゃるので、「これはわかるだろう」と勝手な判断をせず、丁寧に伝えることを意識しています。

相手への思いやりを持ち、想像力を働かせることは、空間演出やプロダクトデザインに携わるにあたっても同様のことですね。

――現在の活動は、アロマ調香デザイナー®︎としてスタジオでのプロジェクトや個人での依頼、IAPAでのインストラクター、といった感じでしょうか?

そうですね。それらに加え、友人と一緒に、子育て支援のNPO法人様向けにボランティア活動をすることもあります

心身を整えるアロマセラピーを通じて、育児をサポートしたりママたちのストレスをケアしたりすることを目的に、アロマセラピーの講座や寄付活動などを実施しています。ママが参加する間はボランティアスタッフが赤ちゃんのお世話をしてくれるので、小さなお子さんがいても安心してご参加いただけます。

現在は本業が忙しくて自身の参加頻度も不定期になっていますが、今まで子育てと向き合ってきた私の経験も活かせたらと思いながら携わっています

自身のこれまでの経験を生かしながら、海を超えて私たちの香りを伝えたい

佐藤さんが見据えるアロマ調香デザイナー®︎としての未来は、それまでのご自身の経験が詰まったものだった

――今後の展望についてお聞かせください。

TOMOKO SAITO AROMATIQUE STUDIOが創り出す香りを、海外で展開する機会をもっと増やしたいですね。

スタジオが香りをプロデュースした先の宿泊施設や商業施設を訪れた外国の方から、「素晴らしい香りだ。ぜひ購入を検討したい」などといった問い合わせをいただくことが多くなってきました。

お申し出は大変ありがたいのですが、特定の施設へ向けたオリジナルの香りはその施設からの購入に限定していることから、弊社からお売りすることはできません。しかしプロダクトだけでなく、演出を手がけた空間そのものも海外へ周知するきっかけになり得るのだと実感できた出来事でした

海を越えるとなると輸送面のハードルの高さや精油の供給元の確保など、どのように展開していくかという面で課題はありますが、不可能じゃないと思っています。

TOMOKO SAITO AROMATIQUE STUDIO独自のプロダクトの展開もある

――海外との関わりへの思いを抱くようになったのは、なぜですか?

高校時代にアメリカへ留学した際、日本のことをもっと海外の人々に知ってほしいと感じたことが発端ですね。その頃から「将来は、海外と日本の架け橋となれるような仕事がしたい」と考えるようになり、大学もこれを軸に選びました。

今、スタジオが創った香りを、国内の施設や商品を媒介として海外の人々へ伝える瞬間に立ち会えています。総合商社や海外生活で培った経験や感覚、語学力などが生きる場面も、わずかではありますが増えてきました。昔からやりたかったことがアロマを通じて実現できているように感じています

――アロマはもちろん、美容やヘルスケアに関わる業界を目指す方々へ向けて、アドバイスがあればぜひ!

知識や五感を、常に磨き続けてほしいですね。世の中も自分自身も常に変化し続けるものだから、アップデートを怠らない心がけは大切です。

あとは、自身の体調管理にも気を配りましょう。香りに関わる仕事で言えば、風邪なんかは大敵ですから。

――佐藤さんにとって「働く」とは?

「楽しむこと」ですね。アロマ調香デザイナー®︎の仕事は、調香というクリエイティブな側面に加え、お客様とのヒアリングやフィードバックなどといったコミュニケーションの側面との両方があり、毎日とても充実しています。

もちろん、自分の興味関心が強い分野で働けていることも大きいと思います。しかしそれができているのは、やりたいことにたどり着くまでに、これまでのキャリアできちんと向き合って何かしら身につけてきたものがあるからじゃないかしら。それは、そんな大層なものである必要はないんです。

人生に無駄なことなんて1つもありません。これまで身につけてきたあらゆる知識や経験が線で繋がる瞬間は、きっと必ず訪れます

佐藤さんの成功の秘訣

1. 1つ1つのことを懸命にやり切る姿勢

2. 将来を見据えた戦略性

3. 広い視野と深い探究心

 

撮影/内田 龍
取材・文/勝島春奈


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