経営もエステティシャンの仕事も「責任」。それを上回る楽しさが継続の理由【整体エステ GAIA 代表 南雅子さん】#2
日本で初めてエステに整体カイロを取り入れた『整体エステ』を生み出した、「整体エステ GAIA」代表の南雅子さん。トータルビューティサロンを経て、さらなる結果を求めて人体について深く学び、作り上げた『整体エステ』で成功をおさめました。
後編では、33年続いているサロンの経営面、これから美容業界を目指す方へのアドバイスをお聞きします。
お話を伺ったのは…
「整体エステGAIA」主宰 南雅子さん
エステティシャンとして20年活躍後、カイロプラクティック・整体師の資格を取得。整体、カイロプラクティックの技術を取り入れ、整体エステボディ調整を開発。1990年「整体エステGAIA」を開業し、2011年より整体エステ協会を設立してスクールを開校。著書『股関節ハッピーダイエット』『すべては股関節からはじまる』『股関節ストレッチ』『骨から小顔』等。23年9月、42冊目となる『死ぬまで寝たきりにならない ごろ寝整体』を刊行。
誰かの悩みを研究し改善する喜びが得られ、
そして感動してもらえるのが美容の仕事
――美容のお仕事のいいところ、やりがいは?
人の喜び、感動してくれること。「あなたに会えてよかった」と言われることが、一番のいいところです。また、学びを深め、研究を続けることも、やりがいにつながります。めぐり会った人の悩んでいるところ、不調なところを探して、そこを改善することに喜びを感じるので、悩んでいる人に出会うと研究テーマができて嬉しいんですよ。
だから、これまで仕事が嫌だとか、苦痛だと思ったことはありません。最近は、ずっと働いてきたので、ちょっと遊びたいなと思いますけど(笑)。この仕事は、私の場合は天職だったと感じます。
――では、お仕事で大変だと感じることはありますか?
エステティシャンとして、大変だと感じることはあまりないんですよ。経営者としては、経営した責任がありますから、そこが一番大変だと思います。経営を維持するためには、利益もあげなければいけない。遊びだけで経営はできないけれど、責任だけでは仕事が楽しくなくなっちゃいますから、そのバランスを考えるのは大変なことです。
でも起業することは、とても楽しいことだと思います。新しいことを起こすということ、時代に合ったものを見つけ出すことは、私は好きなので楽しんでできています。
――南さんが経営者として大切にしていることは?
大変なことと同じ、「責任を持つ」ということです。私は最初に入ったサロンのオーナーが「経営者」という感じで、利益を追求する人だったんです。私は職人的な人間なんですが、そのオーナーから「1日何人できる。精々10人なんて利益もたかが知れている」というようなことを言われて。ちょっと反発もしましたけど、学ぶところは学びました。赤字で経営は成り立ちませんから。
――利益をあげるためには何が大切だと思いますか?
お客様に来ていただいて、私たちがお役に立てなければ何にもならないわけです。だから大切なのは、お客様の気持ちやニーズを知ること。また世の中の動きを知るなど、技術だけではないものも必要だと思います。今お客様が何を求めているか、何をしてもらいたいかだけなんじゃないでしょうか。
人間関係が構築されていれば顧客は長く続いていく
信用を得るためには結果を出すことが大前提
――集客面の取り組みについて教えてください。
基本的にはクチコミがほとんどです。あとは当初から雑誌の取材を受けていたり、芸能人がテレビで紹介してくれたりしたので、それを見て地方からも訪ねて来てくれました。
ただ、この業界はリピーターが絶対なんです。ミスを犯したり、評判を下げるのが、非常におそろしい業界。だから信用が大事というのが基本です。信用を得るためには、結果を出す。
私の場合は、一時やればいいという考えでも、何度も来てもらいたいという考えでもなく、長く良い関係で付き合っていきたいという気持ちがあります。元々エステなどの美容をしていて顧客が長く続くというのが基本でしたから、やっぱりボディにおいても「仕上がっても人間関係がちゃんとできている」というところを目指していました。
――お客様との接客で気をつけていることはありますか?
「接客」というものが私はあまり上手じゃなくて(笑)。接客というよりも、人同士の関わりとして接して喜んでもらうという意識が強いです。体を見て本当のことを言いますし、結果や過程を細かく伝えます。強いていうなら、それが良かったのかなと思います。
あとはやっぱり、きちんと望みを聞き取り、そこで結果を出すことが一番大切なことだと思います。お客様は望みを持ってくるわけですから、体のなかにテーマはいっぱいあるんです。それが叶えばお客様は満足する。だから、お客様の希望として、どこをどう変えたいのか、必ず6カ所は聞きます。
――結果を出すために、持っておくとよい知識は何でしょうか?
人間の体の仕組みを知らないといけないと思います。骨、筋肉、血液、リンパ、神経、ホルモンの6つを知るのは、施術する側として当たり前のことです。本当の意味で、「人間の体とはどんなものなのか」を考えることが大切だと思います。
年齢による体の変化に合わせながら
仕事の新たな展開を模索し続けていく
――今後の展望は?
もう70歳なので、年齢的にサロンに立つのは限界だと思うんです。今書いている本も、『寝たきりにならない』というテーマですから。でも世の中の役に立つことは何だろうというのは、ずっと考えています。
――これから美容業界で働く方や、サロン経営を目指す方にアドバイスをお願いします。
美容という仕事は、自分の年齢も関係してきます。目が良くないといけないし、手が動かないといけない。だから仕事は、時代だけでなく、自分の体に合わせて変えていく。幅の広さを持っていないと、1つダメになったら全部ダメになってしまいます。楽しい仕事ですが、自分の体に合わせて、どんどん次の展開を考える方がいいと思います。
とはいえ、まずは好きなことをやるのが一番。美容の世界は幅が広いので、自分に合っているものが絶対に何かあると思います。好きなことは、長く働くための活力になりますよ。
そしてサロンを経営するなら、まず開業するには覚悟をすること。そして、3年も赤字が続いたらすぐに撤退すること。改良案もなく、もう少しと続けて赤字が膨らむのは反対です。見栄を張らず、楽しくやることが大切だと思います。
取材・文:山本二季