美容業界の市場規模は?美容室業界の動向と将来の展望、課題について解説

美容師は、人々の快適で清潔な生活を支える重要な職業です。人が生きているかぎり、美容師の職がなくなることはないでしょう。しかし、感染症の流行で経済が停滞したここ数年、美容室の市場規模は減少傾向にありました。

働く美容室がなくなれば厳しい立場におかれることから、美容師にとって、美容業界の市場活性化は他人ごとではありません。

そこで、当記事では美容業界の市場規模や美容室の動向、業界全体で取り組むべき課題や今後の展望について紹介していきます。

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美容業界(美容室)の市場規模はどれくらい?

ホットペッパービューティーアカデミーが発表しているデータによると、美容室の2023年上期の市場規模は約1兆3,500億円。理容室は約2,800億円、エステサロンは約3,400億円、ネイルサロンは1,200億円で、美容系全体では約2兆5,000億円となっており、美容室は美容系の市場の中で半分以上を占める、もっとも大きな市場であることがわかります。

2020年に感染症の流行で低迷していたものの、徐々に回復の傾向です。それでは、美容室の規模がわかるデータをもう少し詳しく見ていきましょう。

引用元
美容業界の市場規模は?美容室業界の動向と将来の展望、課題について解説

美容室の数

令和3年度の衛生行政報告例によると、美容室の数は26万4,223軒、理容室の数は11万4,403軒となっています。美容室の新規オープンの数は1万4,778軒となっており、総数・新規開店数ともに前年比アップという結果に。

美容系の業界全体は横ばいなのに対し、美容室の数は増えています。

引用元
令和3年度衛生行政報告例の概況|厚生労働省
令和3年度衛生行政報告例 統計表 年度報 生活衛生|厚生労働省

美容師の数

令和3年度の衛生行政報告例によると、美容師の数は56万1,475人、理容師の数は20万6,747人です。また、令和4年度の美容師免許の新規登録者数は1万7,876人、理容師免許の新規登録者数は1,472人となっています。

引用元
令和3年度衛生行政報告例の概況|厚生労働省
新規免許登録件数|公益財団法人 理容師美容師試験研修センター

美容室全体のトレンドや傾向は?

ここからは、美容室のトレンドやお客様の傾向など、美容室業界の動向をチェックしていきましょう。

引用元
美容センサス2023年上期<美容室編>|ホットペッパービューティーアカデミー

利用料金は微減ながら年間利用回数がアップ

ホットペッパービューティーアカデミーの調査によると、女性全体のサロン利用金額の平均は一回あたり7,293円で、前年に比べて0.7%とわずかに減っています。一方で、年代別では15~19歳で6.8%、30代で2.8%の増加です。

また、利用回数では、女性全体の平均が年間4.32回で、前年比4.1%の増加。年代が高くなるほど回数が増える傾向にあり、60代では5.77回、前年に比べ6.3%増えています。

男性の美容室客単価が過去最高

男性の美容室利用者も年々増えてきており、一人あたりの平均利用金額は過去最高となっています。全体では前年比2.3%の増加、年代別では50代で5.5%、60代で7.6%増と50・60代で増えているのが特徴です。また、20代でも6.7%増えています。

カラーの利用率は女性で微減、男性も減少傾向

近年、明るいカラーリングの流行で、カラーの利用率は増加傾向にありましたが、2023年ではわずかに減少の傾向です。女性全体のカラー利用率は1.5%の減少、年代別では40・50代の減少幅がもっとも大きく、3%ほどの減少となっています。

男性は全体的には横ばいという結果ですが、カラーは1.7%の減少でインナーカラーや白髪染めのニーズが高まってきていることがうかがえます。また、注目したいのは男性のパーマ利用率です。男性のパーマ利用率は微増傾向にあり、特に2023年では20代のパーマ利用率が4.1%増加しています。

店販商品の年間購入金額が増加

女性の店販商品の購入金額は年々増加傾向にあり、2023年度上期では1万2,424円と最高額を記録しています。年代別では50代がもっとも多く、1万5,299円。次いで40代の1万4,856円となっており、年代別で見ても1万円前後と店販購入にかける金額が大きいことが見てとれるでしょう。

コロナ禍で急速に広まったオンラインを利用した購入方法の普及で、女性の店販商品の購入に対するハードルが下がったことも一因だと考えられます。

一方で、男性の店販購入金額は、全体で7,779円。前年の8,856円から12.2%の減少です。

ネット予約の増加

サロンの予約方法は、インターネットの利用が一般的になっているいることがうかがえます。女性全体の過去一年のサロン予約方法で、電話予約は24.6%と年々減少傾向にあり、今後も減り続けると予想されます。

対して、インターネット予約は全体の半数以上が利用しており、年々増加傾向です。男性も電話予約は前年比-2.5%と減少傾向にある一方で、インターネットを利用した予約方法は増加。

インターネット予約の割合は、女性全体で56%、男性全体も51.5%となっており、その便利さから今後も増えていくと考えられるでしょう。

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美容室業界の課題

美容室が増え続けるなかで、美容室全体が活気のある市場となるために必要なことは何でしょうか。

美容室業界の大きな課題のひとつは、人材不足です。美容室の数は増え続けているのに対し、美容師の離職率は高い傾向にあります。

美容室業界が今後も発展していくために、解決すべき課題について整理してみましょう。なお、課題への解決方法については後述します。

引用元
新規高卒就職者の産業分類別(大分類※1)就職後3年以内の離職率の推移|厚生労働省

下積み期間の長さ

美容師は、免許を取得してから、一人前のスタイリストとしてお客様を担当するようになるまでの期間が長いという特徴があります。サロンによってまちまちですが、長いところでは5~7年ほどの年月をアシスタントとして過ごさなければならないこともあるようです。

アシスタントでもやりがいを感じられることはありますが、スタイリストに比べるとやはり少ないため、仕事を続けるモチベーションを保ちづらいことが考えられます。

給料の低さ

美容師は給料が低いというイメージをもつ方も多いかもしれません。実際には、店舗や働き方によって高給を得ている美容師もいる一方で、美容師の平均年収は330万円ほどというデータもあります。これは全国平均の443万円に比べて、低いといわざるをえません。

また、一人前のスタイリストになれなければ、指名料で給与を増やすこともできないため、下積み期間が長いほど、必然的に給与は低くなってしまうことも考えられるでしょう

関連記事
【美容師の給与満足度】あなたは収入に満足できていますか?アンケート調査をもとに徹底解説!

引用元
美容師|jobtag 厚生労働省
令和3年分民間給与実態統計調査|国税庁

勤務時間の長さ

美容師は、給料が低い傾向がある一方で、勤務時間が長いという特徴があります。開店準備から閉店後の作業までを含めると、どうしても勤務時間が長くなってしまうためです。

アシスタントの場合は、残って練習をすることもあり、さらに勤務時間が長くなってしまいます。プライベートを重視する人にとっては、辛いと感じることもあるでしょう。

課題を解決するには?

それでは、美容室の業界が抱える課題を解決するためには、どうすればいいのでしょうか。まずは、上述したような課題に対して、解決策を見つけ、業界全体で取り組んでいくことが求められます。

スタイリストデビューの基準を明確にする

スタイリストデビューの基準や期間は、店舗によって違います。前述したように店によっては5~7年ほどの期間を要するケースもあり、アシスタントにとってはモチベーションの維持が難しいこともあるでしょう。

そこで、アシスタントの期間を明確にしたり、スタイリストデビューまでの基準を設けたりすることで、目標に向かって頑張るモチベーションが生まれます。

美容師の給料を上げる方法については、以下の記事も参考にしてください。
美容師の給料・平均年収はどれくらい? 給料を上げるためにできる7つのこと

労働時間に見合う給料の設定をする

低いと言われることが多い美容師の給料ですが、その中でも低く設定されていることも多いアシスタントの給料では、年齢が上がるほど続けることが難しいと考える人も出てくると考えられます。

それを解消するには、適切に残業代を支払う、労働に見合った対価をきちんと支払うことが美容室業界全体で当たり前になっていく必要があるでしょう。

利益が出る仕組みを整える

アシスタントやスタイリストなどスタッフにきちんと給料を支払うためには、利益を上げなければなりません。そのためには、適正な客単価の設定や来店客を増やす仕組み作り、業務効率化をして、きちんと利益が出るためにできることをやっていくことが重要です。

業務効率化をするには、予約システムを導入して予約や顧客管理にとられているコストを削減し、接客する時間を増やしたり集客の施策を行なったりすることに注力できるようにする必要があります。

適切な休憩と労働基準内の労働時間を遵守する

適切な給料ややる気をもたせるための仕組み作りにくわえて、労働環境を整えることも重要です。

労働基準法では8時間以上の労働時間に対し、1時間の休憩をとることと定められています。美容室の場合、お客様の来店に合わせて合間に休憩をとることも多く、必ずしも守られているとは限りません。

適切な休憩は仕事へのモチベーションを保つためにも必要なため、工夫してスタッフ全員がきちんと休憩時間を確保できるようにしていきましょう。

また、美容師は他業種に比べて休日が少ないといわれています。昨今ではプライベートを重視する傾向があるため、土日の休みも含めて、適切に休みをとれる環境を作っていくこともスタッフの確保には必要です。

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Z世代の美容師がこだわりたい転職軸を知っていますか?答えは「働き方」です

引用元
労働基準法|厚生労働省 e-Gov

美容室業界の今後の展望は?

美容師は、技術職。AIに置き換わることはないといわれている職業のひとつで、今後も需要はあり続けると考えられます。

ただし、ここまで見てきたように美容室全体として取り組むべき課題があることも事実です。その課題のひとつとして、理容師の数が減少していることも挙げられます。

今後理容室では後継者不足、人材不足となることも予想されており、そのための対策も考える必要があるでしょう。

ホットペッパービューティーアカデミーの調査によると、メンズ美容の需要は伸びており、今後も高まると予想されています。そこで、男性向けのメニューを増やしたり、顔そりやシェービングなどにも対応できるよう、理容師免許とのダブルライセンスの取得をするなど、男性客を取り込んでいくことが鍵となるでしょう。

また、ネット予約が増えていくと考えられることから、ネット予約やキャッシュレス決済への対応をすることも、美容室業界の市場活性化に必要なことだといえます。

もちろん、美容室業界の課題に対して真摯に取り組む美容室も多いです。逆をいえば、美容師の労働環境の改善に取り組まない美容室は、人材の確保ができなくなることも考えられます。そうなれば、すべての美容室で労働環境が改善されていく流れになり、美容師にとっても働きやすい職業になっていくでしょう。

引用元
美容センサス2023年上期<美容室編>|ホットペッパービューティーアカデミー

美容業界の市場規模は回復傾向!課題に取り組み業界の活性化をはかろう

感染症の流行も収束の様相を見せていることから、今後美容室の市場規模は回復していくでしょう。

美容室業界には、人材不足や労働環境を整えることなどさまざまな課題がある一方で、その課題解決に取り組もうとする動きもあります。

美容室の数が増え続けるなかで生き残っていくためには、利益を上げ続ける施策や人材確保のために労働環境を整える工夫をしていくことが大切。今後は、美容師の労働環境はよくなっていくはずです。

美容師全体で課題に取り組み、業界の市場活性化をはかっていきましょう。

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