幼い頃から夢見た美容師になり、トレンドを生み出すサロンで活躍【美容師 若井友紀さん】#1
有名店でスタイリストデビューするも、Violetに入社してアシスタントからリスタートした若井友紀さん。すぐに頭角を現し、お客様はもちろん雑誌やヘアカタログの仕事でも信頼を獲得して人気美容師に。セットが簡単に決まるカット技術や、スタイリングやホームケアのアドバイスも的確だと評判です。
前編では、Violetで働くことになったいきさつや、同じ店で働く美容師との結婚、出産後の働き方についてパートナーやサロンと話し合ったことなどをお聞きしました。
お話を伺ったのは…
Violet(バイオレット)表参道店
クリエイティブスタイリスト 若井友紀さん
2011年に関西美容専門学校卒業。HAIR DIMENSIONに入社し、24歳でスタイリストデビュー。2015年にVioletに入社してアシスタントから再スタートし、翌年スタイリストに。顔周りの似合わせや髪を柔らかく見せるカットを得意とし、お客様のライフスタイルに合ったホームケア方法も伝授。プライベートでは美容師のパートナーと結婚し、2021年に出産。2022年に職場復帰してママ美容師として活動中。
美容師第一歩は「お好み焼き」が決定打!?
――いつから、美容師になりたいと思っていたのですか。
小学生のときに初めて母親に連れられて行った美容室で、担当の女性美容師さんがキラキラしていてかっこいいと思ったのがきっかけです。楽しそうに仕事をしていて、いつも可愛くしてくれて、素敵だなと思いました。
子どもなのでいろんな仕事に目移りもしましたが、卒業文集には「美容師」と書いて、それが実現しました。
――夢に向かって具体的に動き出したのは?
自分の進路を真剣に考えたのは中学生の頃です。目の前でお客様が喜ぶ姿を見られる仕事というのは、そんなに多くはない。やっぱり美容師っていいなと思って。はじめは親に反対されました。中高一貫の進学校だったので、大学に行って安定した職業に就いてほしかったようです。自分で専門学校の資料を取り寄せたりして、東京の学校に行きたいなとも思いましたが、地元である大阪の学校に入りました。
――最初にお勤めされたのは、東京の有名サロンだったそうですね。
ヘアメイクの仕事をしたいという思いがずっとあったので、それができるサロンを自分で探したり、学校の先生に相談したりしました。カリスマ美容師ブームで有名だったHAIR DIMENSIONを勧められ、カリキュラムがしっかりしている点が魅力的だったので受けることにしました。のちのち聞いた話ですが、面接1位で受かったらしいです。
――すごいですね!その理由を自己分析すると?
たぶん、お好み焼きを焼いて持って行ったから(笑)。普通は作品撮りしたものなどを持って行くと思うんですけど、当時のその会社は一芸というか印象に残ることをする方がいいと先輩から聞いていたんです。先生にも相談したら、私がお好み焼き屋でバイトしていたからなのか、「お好み焼きでも焼いて行けば?」って。それで、面接のときに東京のお好み焼き屋さんに頼み込んで、焼かせてもらいました。
――そこまでする熱意が買われたのかもしれませんね。
そう思っておきます(笑)。とにかく、「お好み焼きの子」という強烈なインパクトを与えられたと思います。
憧れの美容師が率いるVioletに移籍
――Violet入社のタイミングやきっかけを教えてください。
スタイリストデビューして1年ほど経ったとき、当時AFLOATで活躍していた前原穂高がVioletをオープンさせることになり、前のサロンの店長もそこに参加することになりました。私も一緒に働きたいと思い、面接してもらったんです。
――なぜ一緒に働きたいと思ったのですか。
スタイリストになる前から、前原がつくるヘアスタイルを見ていました。当時はヘアカタログから自分の好きなスタイルを選んで、それを練習してテストしていたのですが、私が「これ可愛いな」と思う作品は必ずと言っていいほど前原が担当していて。どうしてこんなに上手なんだろうねと、先輩と話したりしていたんです。それで、Violetに入りたいと思いました。
――若井さんにとって、前原さんは憧れの存在だったんですね。
Violetに入社後、前原のアシスタントとして近くでいろいろ学ばせてもらいました。撮影スキルがずば抜けていているし、トレンドをつかむ力や生み出す力に長けているところがやっぱりすごいと思いました。Violet歴8年目となった今でもそれは変わりません。
――これまでに、美容師を辞めたいと思ったことやくじけそうになったことはありますか。
Violetでのアシスタント時代がきつすぎて、ぐらついたことがあります。前のサロンで一度スタイリストデビューしていたので、自分のお客様も担当しながら、アシスタントリーダーとしての仕事もこなし、外部の撮影にもついて行って…。ハードすぎて、心が折れかけました。
でも、辞めてしまったら来てくださっているお客様に申し訳ないし、前のサロンからずっと一緒に働いている先輩の励ましもあって、踏みとどまりました。
――再びスタイリストになりヘアメイクの仕事もして、お忙しかったと思いますが、パートナーとの結婚を決めたのはいつですか。
子どもが好きなので結婚や出産はしたいけど、仕事ももっと頑張りたいと思っていました。そんな中で結婚を意識し始めたのは27歳頃。実際に結婚をしたのは29歳です。
美容師同士というのは結婚のハードルにはなりませんでしたが、おつきあいの時点では同じ店というのがちょっとネックでした。うまくいったからいいけど、もし途中でダメになったら働きづらくなってしまうこともありますから。
妊娠・出産から復帰後まで、ことあるごとに話し合い
――妊娠したときに、サロンと話し合ったことは何ですか。
生んだら仕事に復帰したいという気持ちがあり、それを伝えました。代表からも「子どもができてもこういう風に働ける」という形を、周りのスタッフに見せてあげてほしいという話もありました。出産して復帰するスタイリストは、この店では私が初だったので。
――産休・育休についてはどんな相談をしましたか。
初めてのことだらけで、何をしてほしいのか、何が必要なのかもわからなかったんです。言われて初めて、給料はどうなるんだろうとか思ったり。ただ、代表も本部のトップも子どもがいるので大変さを知っているし、制度に関する知識もあるので相談しやすかったです。労務士さんもいるので、復帰してからどういう働き方ができるか詳しい話も聞けました。
復帰後に初めて気づくこともいろいろありましたね。うちの場合、祝日は夫が休めないので私が休みを取ります。そうすると年末年始やゴールデンウィーク、シルバーウィークに働けないので、当然、収入が減ります。そこで有給を使えるのか相談して、ちゃんと対応してもらえたのでありがたかったです。
――おふたりの休日はバラバラなんですか。
もともと、子どもが熱を出したときにお迎えをどうするかという問題があったので、どちらかが迎えに行けるように休みを完全にずらしていたこともありました。でも、家族みんなで揃う時間がないと、うまくいかないというか、子どもにとってもよくない。それで今は、週に1日は休みを合わせようということになりました。夫の店舗は年中無休ですが、私の店舗の定休日である火曜に休みを取って、家族が揃う日をつくっています。
――産休前と復帰後のお客様の引き継ぎはスムーズでしたか。
産休前の引き継ぎは、お客様ひとりひとりの髪質や人柄に合ったスタイリストを紹介しました。わりとスムーズに引き継げて、産休に入ってからリピート率ランキングに入っていたんです。つまり、引き継いだお客樣が、私が休んでからもちゃんと来店してくださったということ。お客様が美容室難民になってしまうのを避けたいというのが一番の思いだったので、嬉しかったですね。
復帰後、私の担当に戻った方もいれば、引き継いだスタイリストがそのまま担当している方もいらっしゃいます。私が夜や日曜、祝日に出勤できないということもありますし。
――現在の勤務時間や勤務日は?
平日は11時か12時、土曜は10時から営業で、17時まで働いています。月に2〜4回ほど、夫が休みの日に19時までサロンワークを延長することもあります。そのときは夫が子どもを保育園に迎えに行ってくれます。
自分の夢や憧れに向かって、まっすぐ突き進んで来た若井友紀さん。結婚し、2歳の息子さんの子育てや家事に追われながらも、美容師として活躍し続けています。
後編では、妊娠中から始めたママ向け情報の発信、復帰後の生活で大変だったこと、若井さんが大切にしている「笑顔」のお話などをご紹介します。
撮影/喜多二三雄
取材・文/井上菜々子