【美容師のカット技術】grico TOMOMIさん流 スッキリかつ洒落感も漂う『スリークセンターパート』#1

さりげなくお洒落を取り入れたい男性に人気なのが、センターパートのスタイル。「分けてもサラリと下ろしてもサマになり、かつスタイリングの手軽さもポイントです」と教えてくれたのは、grico ディレクターのTOMOMIさんです。

今回は、女性スタイリストでありながらメンズヘアにも定評があるTOMOMIさんにインタビュー。前編では、メンズヘアで人気を集めるようになった経緯と、ヘアトレンドについてお伺いします。

「grico」ディレクター TOMOMIさんにインタビュー

grico TOMOMIさん

とある男性のお客様からの電話が美容師人生を変えた

−−TOMOMIさんはメンズカットでも活躍されていますが、最初から男性メインで切っていたのですか?

最初からメンズで行こう! ということでは全然なかったんですよ。美容師になって最初に就職したサロンでまず6年くらい働きました。そこでいろいろ考えることがあって、もっと挑戦したいという思いが強くなりgricoに参加させてもらったのですが、当時はどちらかというと何でも得意なオールマイティタイプで売ってましたね。私めちゃくちゃ負けず嫌いで、練習は人一倍がんばって、スタイリストデビューも1年半くらいで達成できたんです。若い頃からとにかく技術を磨くことに一生懸命でしたね。

−−注目されたきっかけは何かあったのですか?

まずですね、gricoに入ってから衝撃の出来事があって。男性のお客様ですでに4年くらい担当していた方がいて、その日もいつものように切りに来て、帰っていったんです。そしたらその後にお店に電話がきて、代表のエザキが受けたのですが、「TOMOMIさんの人柄は好きだけれど、カットは正直気に入ってないし、満足していない。エザキさん、もっとしっかり指導してあげてください」という内容でした。もう驚き、というかすごくショックでした。私としては100%だと思ってやっていたことが、そのお客様にとっては100%でも何でもなかった。しかもデビューしてからけっこう経っていたから、私はここからどう変えていけばいいのか、思い悩んでしまいました。

−−順風満帆と思いきや、驚きの展開……!? そこからどうシフトチェンジしていったのですか?

技術は積み上げてきたつもりだったけれど、そこで満足してはいけない、常に磨き続けなければいけないんだなと反省しました。まずは、身近にいるオーナーのエザキの感覚に近づこう、真似しようと思いました。エザキはサロンの代表であり、業界でも認められている存在だったので、そういう人の感覚にすり合わせていけたらもっと上達できるのではないかと考えたからです。

お客様をカウンセリングしたら、エザキのところへ行って「これからこういうイメージでこんな風に切って…」と相談。終わったら最後に見てもらいアドバイスしてもらったり。お客様にもだいぶ協力いただきました。「ごめんね、私もっともっと上手くなりたいから、ちょっと最後にオーナーにチェックしてもらってもいいかな?」と伝えて……もう無我夢中で、2年くらいはそんな風にエザキの指導を受けながら頑張りました。本当に必死すぎて、当時の記憶がいろいろないです(笑)

−−すでに一人前のスタイリストだったのに、そこからの踏ん張りがすごい!

お叱りの電話をくれた方も、私のためを思って言ってくださったのだと思います。そのお客様が男性だったこともあって、女性だけでなくメンズカットもたくさん練習しましたし、その時に男性のお客様も増えていきました。それからメンズ雑誌にも数多く呼んでもらえるようになり、メンズヘアのトレンド大賞企画に参加させていただいて、初代グランプリをとることができました。あえてメンズのブランディングをしていたわけではなかったけれど、そんな流れがあって、みなさんに注目していただけた感じなんです。

−−オールマイティでもあり得意分野も見つけたTOMOMIさんにとって、自己ブランディングとは?

私、女性のスタイルもロングも大好きなんです。だから、オールマイティで頑張っていこうというのは今も変わっていません。ただ、メンズカットでも声をかけてもらえるようになって、何かに突出しているのもいいんだな、強いんだな、と感じたのは事実。これからの時代は特に、自分の強みとかブランディングというのがないと難しいのだと思います。全国に何十万人といる美容師さんの中で埋もれてしまわないように。

私はメンズカットを広げていった結果、仕事にも幅が出てきて、今は男性アスリートのヘアメイクをさせてもらう機会が増えています。アスリートの方に、「昔、メンズグランプリとったんですよ」とか話すと、「え〜TOMOMIさんが!?」と興味を持っていただいたり、そこから話が展開したり。自分をアピールできる何か強いものがあると、そこからまた新たなブランディングにつながっていく可能性もあるんだなと感じています。

お客様もスタッフもみんな家族。そういう思いで接しています

−−サロンワークで大切にしていることはどんなことですか?

自分の中でイメージ像をしっかり作ること、そして、お客様へはそのイメージをお洒落に伝えてあげることですかね。美容室に来る時って、やっぱり『変えたい』とか『リフレッシュしたい』という気持ちがあると思うんです。だから、毎回来ていただける方には、いつも同じではなく毎回ちょっと変えるようにする。

私は洋書の切り抜きをブックにしたものを作っていて、カウンセリングする時によく使っています。もちろん普通のヘアカタやインスタとかを見ながらスタイルを決めていく時もありますが、こういう洋書ならではのかっこよさとかお洒落なスタイル写真を見ながらだと、イメージしつつ気分が高まるじゃないですか。「あれ? 今日の髪型、めちゃくちゃお洒落になるのかな…!?(ワクワク)」みたいな。最初にしっかりイメージできると不安や緊張もなくなるし、ポジティブな気持ちで施術に入れますよね。技術云々というのはもちろんありますが、最初の『入り』というのも大事にしています。

あとは、これは施術が終わってからの話ですが、最近ではお子さんと一緒に来られるお客様も多いので、切り終わってから家族で写真を撮ってあげたりもしますね。その写真を後でお送りすると、とても喜んでいただけます。みなさんいろんなタイミングで髪を切りに来ると思うんです。例えば、妊娠して大きいお腹で髪切りに来るのが最後だから、とか。そういう大切な時を写真に残せたらいいですよね。

gricoでは、スタッフもお客様も同じ家族として考えているので、人を大切にする、自分たちが関わる人たちを幸せにする、そんな思いでお客様に接しています。

−−今回ご提案いただいたスタイルについて教えてください。

少し短めのセンターパートのスタイルが人気です。やってみたいけどちょっとお洒落難易度高めだな、と感じてしまう男性も多いと思うので、前髪をラウンド気味にしてアレンジの幅が広げられるようなデザインにしました。分けても下ろしても、流しても、簡単に決まりやすいスタイルです。また、カットに奥行きを持たせているのもポイント。フラットにならず立体感が出るので、頭の形もキレイに見えるし、シンプルながらお洒落な雰囲気が出ます。

TOMOMIさんが提案する『スリークセンターパート』

マッシュベースに自然なグラデーションで奥行きを持たせたカット。さらっと軽いツヤのあるセンターパートがお洒落に見せるポイントに。前髪はスタイリングに幅が持てるよう、ラウンド気味にカット。自分での再現性が高いのも魅力。

TOMOMIさん流『スリークセンターパート』のいいところ

1.どんな髪質でもOK。さりげなくトレンドヘアに

2.ワックスだけの簡単スタイリングで決まる

3.分けても下ろしても◎ スタイルの幅が広がる

男性のお客様からの厳しい助言が、自分の技術を見直すきっかけとなったTOMOMIさん。美容師歴を16年以上積み重ねた今でも、担当したお客様のスタイルポイントや気づいたことを手書きでまとめているそうで、「これだけはずっと続けているんです」と、大切なノートを見せてくれたのが印象的でした。

後編では、そんなTOMOMIさんがデザインする『スリークセンターパート』の作り方について、詳しく教えていただきます。

▽後編はこちら▽
【美容師のカット技術】grico TOMOMIさん流 スッキリかつ洒落感も漂う『スリークセンターパート』#2>>

取材・文:青木麻理(tokiwa)
撮影:片岡 祥
ヘア:TOMOMI(grico)
モデル:加藤康貴

教えてくれたのはこの人!

TOMOMIさん
grico ディレクター

都内1店舗を経て、2011年に株式会社grico入社。スタイリストとして活躍し、2017年に妊娠・出産。出産後2ヶ月で復帰し、現在はディレクターとして幅広く活動している。美容業界誌の表紙やファッション誌、海外ファッションブランドヘアメイク、アスリートのヘアメイクなども担当。メンズトレンド大賞でグランプリを獲得し、メンズカットでも注目を浴びるように。最近では、『ブランドサロンのママ美容師』としても数多くのメディアから取材を受ける。
インスタグラム:@gricotomomi

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Salon Data

grico(グリコ)

住所:東京都渋谷区神宮前6-14-12 モード・エス2F
TEL:03-6427-9062
URL:http://grico-h.com/

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