趣味×仕事を極め、e-Sportsに特化した美容室をオープン「e-Sugar」佐藤けいすけさん
自分の趣味や好きなことを仕事に活かせたら。それは多くの人が夢見ることではないでしょうか。今回お話を伺った佐藤けいすけさんは、そんな夢を叶えたひとり。ご自身の趣味だったe-Sportsに特化した美容室「e-Sugar」を2023年8月にオープンさせたばかりです。
そのきっかけとなったのは、前のサロンで働いていたときに、ひょんなことからe-Sports選手と知り合ったこと。その選手が佐藤さんの存在を拡散してくれたことでゲームやアニメ好き、2.5次元の舞台俳優の方などに徐々に広がっていき、前のサロンを辞める直前には顧客の半分を占めていたそうです。そこまで勢いよく佐藤さんの顧客が増えたのは、美容室に苦手意識を持つゲームやアニメ好きの人が多く、その人たちが通いやすいサロンだったからだといいます。
今回、お話を伺ったのは…
佐藤けいすけさん
美容師/「e-Sugar」代表
都内一店舗を経て2023年8月、渋谷にe-Sportsに特化した美容室「e-Sugar」を開業。顧客の多くを、ゲーム関係者、趣味がゲームやアニメの人、2.5次元の舞台俳優とそのファンなどが占める。e-Sportsの大会やイベントのヘアメイクも担当している。
美容に苦手意識のあるゲーム好きな人が、安心して通える美容室を実現
――どうしてe-Sportsに特化したお店を開こうと思ったのですか?
前のサロンに勤めていたときに、ゲームやアニメ好きの方、2.5次元の舞台俳優さんなどが、お客さまとしてたくさん来てくれていたからです。きっかけは僕が趣味としてあるゲームに力を入れていて、Twitterにゲームアカウントを作っていたことでした。大会に出たり、イベントに行ったりすることもあり、たまたまそのゲームの日本ランキング1位の人と知り合えたんです。
その方が僕の勤めていたサロンに髪を切りにきてくれて、それをTwitterで発信してくれました。そうしたらその次の日に、今度は日本ランキング2位の方が来てくれて。4年くらいかけて徐々にゲーム好き、アニメ好きの方が通う美容師として認知が広がっていきました。
――それで独立しようと?
個人で集客ができていたこと、年齢が30歳を超えたということもあり、独立を考えるようになりました。ゲームやアニメ好きのお客さまが今後、長く通ってくれるためには、独立して自分の色を出したお店を出したほうがいいのかなと思ったんです。そこで思いついたのが、e-Sportsと美容をかけあわせた、これまでにない新しいコンテンツでした。
――最初から意識してゲームやアニメ好きの方に特化しようとしたわけではなくて、趣味を楽しんでいたら、結果的にそうなってきたという感じなんですね。
はい。ゲームやアニメ好きの方に強く訴求できたのは、2つの要因があったと思っています。1つは僕の元に通ってくれた日本ランキング上位の方に拡散力があったこと。もう1つは、ゲームやアニメ好きの方は、美容室に行くのに抵抗がある、緊張してしまう方が多いということです。そういう方たちにゲーム好きがたくさん通っている美容師だと認識してもらえたことで、ハードルを下げることができたのではないかと思っています。
美容室にゲームはおけないと知り、事務所を併設
――開業までに苦労したことは?
元々は美容室にゲームを置き、「ゲームのできるサロン」を謳いたかったのですが、調べていくうちに美容室には法律的な観点からゲームが置けないことがわかって試行錯誤したことです。e-Sportsに特化しているサロンにゲームがないのはさみしいと思ったので、どうにか置く方法はないか模索し、美容室と事務所のスペースを仕切りでわけることで実現しました。カットが終わったあとで、事務所スペースに移ってゲームプレイを楽しんでもらっています。
――ちなみに脱毛サロンも併設されているそうですね。
はい。脱毛サロンを運営しているスタッフは、元々は僕のお客さんだった人で、別の場所で脱毛サロンを経営されていたんです。そこに僕のゲーム界隈のお客さまを紹介したら、ゲーム好き、アニメ好きが集まる脱毛サロンになって(笑)。共通のお客さまも多く、同じ場所でカットも脱毛もできたらお客さまにとってはすごく楽だと思ったので、一緒に独立をしないかと声をかけたんです。e-Sports、美容室、脱毛サロンが「e-Sugar」の3本柱になっています。
もっとe-Sportsを盛り上げたいとの気持ちから、大会のヘアメイクも担当
――e-Sportsの大会やイベントのヘアメイクも担当されているそうですね。
これは前のお店にいたときに始めたことで、配信を5~10万人が見てくれる大会の選手や実況の方のヘアメイクを担当させていただくことがありました。今のゲームの大会は顔がアップで写ることがあったり、ユニフォームも格好いいのに、髪の毛のセットはしていない人や美容が苦手な人が多く、僕にもできることがあるのではないかと思って。こちらから運営の方にアプローチをして、実現しました。
――実際にe-Sportsに特化したお店をオープンして反応はいかがでしたか?
おしゃれな空間だということで評判なのと、前のサロンからのお客さまにはマンツーマン施術になってうれしいと言っていただくことが多いです。前のサロンでも、そこまでアシスタントを使っていたわけではないのですが、3人くらいは掛け持ちして施術をしている状態だったので、どうしてもシャンプーなどはアシスタント任せになっていました。僕だからと安心して通ってくれていたお客さまも、シャンプーの時間だけは緊張すると言われることも多かったので、すべて僕が担当することになり、より安心して通ってもらえるようになりました。
またe-Sportsやアニメに特化しているのは新規のお客さまにもインパクトがあるようで、広告宣伝費を一切使うことなく、集客にも成功しています。
佐藤さんが趣味×仕事を成功させた3つの理由
1.最初は仕事につなげることを意識しなかった
2.ゲーム界隈でいろいろな人とつながり、認知が広がった
3.美容室が苦手なお客さまが、安心して通える環境を整えた
後編ではなぜ佐藤さんのお客さまはリピートが多いのかを掘り下げます。好きなことでつながっているお客さまとその話題で盛り上がるのだろうと思っていたら、意外にも大切にしていることは、「趣味の話だけに終始しないこと」だという佐藤さん。またお客さまとの距離は遠すぎず、近すぎず、目指すのはバーのマスターとお客さまの関係性だといいます。後編もお楽しみに!