縁をつなぐことに尽力し、ヘアメイクの仕事もつかんだ新人時代「Sweet Room代官山」歩夢さん
「Sweet Room代官山」に入社して4年目の歩夢さん。美容師としては、3年のカリキュラムを1年半に短縮し、異例の早さでスタイリストデビューを果たします。また入社1年目から、外部でヘアメイクの仕事もしており、アパレルのルック撮影、雑誌や映画など活躍の場も広げています。
前編ではなぜそのようなことが可能になったのかを伺います。新人時代にとくに心がけていたのが、さまざまなコミュニティに顔を出し、顔を売ることだったと話す歩夢さん。サロンへの入社も、ヘアメイクの仕事も縁によってつながったものだといいます。
今回、お話を伺ったのは…
歩夢さん
美容師/「Sweet Room代官山」所属/ヘアメイクアップアーティスト
富山県出身。中学時代に美容師とヘアメイクアップアーティストになることを決意。中学生から美容師見習いを経験し、高校時代は学校に通いながらアシスタントとして技術を磨く。国際文化理美容専門学校卒業後、「Sweet Room」に入社。現在は入社4年目で、美容師としてだけでなく、ヘアメイクアップアーティストとして、撮影チームに参加。雑誌、映画、アパレルのルックブックなどの撮影現場にも参加するなど、精力的に活動を続けている。
3年のカリキュラムを1年半に短縮。ルールにとらわれない行動力が鍵
――新卒で「Sweet Room」に入社されたそうですが、「Sweet Room」は業務委託サロンですよね。新卒でいきなり業務委託サロンに入るのは、レアケースだと思いますが、どんな理由があったのでしょうか。
完全にご縁なんですよね。学生時代に昔からファンだったカメラマンのアシスタントをさせていただく機会があり、撮影先として伺ったのが「Sweet Room」でした。そこで社長に会って「美容学生をしながら、カメアシをしています」と伝えたら「もし美容師として行くところがなかったら、うちで雇うよ」って言ってくれて。
「Sweet Room」は業務委託サロンですが、僕は中学生のときから美容室で職業体験みたいなことをさせてもらったり、高校時代もずっとアシスタントとしてバイトもしていたので美容師として根拠のない自信があって、最初からフリーランスとして働こうと思っていたんです。ヘアメイクなどほかにやりたいこともあったので、ある程度自由がきくほうがいいと思って。
――では最初からフリーランスに?
いえ。その後、技術のなさを実感して、いきなりフリーランスになるのは無理だと思いました(笑)。うちの会社のシステムでアシスタントのときは社員として雇用してもらうことができたので、アシスタント時代は社員として働き、1年半ほどでデビューすることができたので、そこからは業務委託という形で働くことになりました。
――1年半でのスタイリストデビューは、かなり早い方ですね。
通常であれば3年かかるカリキュラムを、1年半ほどで終えることができました。
――なぜそれが可能になったのでしょうか。
サロンによって異なると思うのですが、うちの会社の場合は毎週日曜日に技術のチェック会があって、それに合格すると次のステップに行けるという仕組みでした。僕にはその週に1回を待つ時間がもったいなくて、待てなかったんです。そこで日曜を待たずに平日にもウィッグで技術練習をして、技術指導をしていた他店の店長のところまで切った物を持って行くようにしていました。その方法でオッケーがでたらどんどん次のステップに進み、時間を短縮することができたんです。
――練習もほかの人より、量をこなしていたということですか?
量はそんなに多くなかったと思います。長時間の練習を僕は非効率だと思っているので。そのときの課題を短期集中で取り組むようにしていて、2週間くらい練習をしないときもありました。新人時代はむしろ、コミュニティに顔を出し、ご縁を広げていくことに力を入れていて、これがデビューを早めることにもつながったと思います。
つながったご縁で早期デビュー、ヘアメイクの仕事をつかむ
――なぜ縁が広がったことが、デビューを早めることにつながったのでしょうか?
うちのサロンではスタイリストデビューするまでに、カット100人、カラー50人のモデルさんを呼ばないといけないのですが、そのモデルさんをご縁でつながった人だけで呼ぶことができたので、かなり早く達成することができました。ちなみに僕はモデルハントにSNSは一切使ったことがありません。
――具体的にはどうやって人脈を作ったのですか?
たとえば古着屋さんや飲み屋さん、開催中の個展など、定期的にさまざまなコミュニティに顔を出して、自分の顔を覚えてもらうようにしました。この人脈は今でも生きていて、今美容師とは別にヘアメイクの仕事もしているのですが、ヘアメイクの仕事はそこからいただくこともあります。
――美容師と並行してヘアメイクの仕事をされていると。仕事の割合でいうとどれくらいなのですか。
将来的にはもっとヘアメイクを増やしていきたい思いがありますが、現在は美容師が8、ヘアメイクが2くらいの割合です。3年ほど前から、ヘアメイクやスタイリスト、カメラマンなどで構成されるチームに所属しており、そのチームに依頼がくることもあれば、個人で依頼を受けることもあります。
――3年前というと、入社1年目くらいですよね。どのようにヘアメイクの実務経験を積んでいったのでしょうか?
ご縁が広がっていくと、カメラマンやスタイリストと仲良くなることが増えて、まずはそういう人たちと組んで、作品撮りをすることで経験を積んでいきました。お金は発生しないけれど、そうやって実践を積んでいくのが、一番いい練習になるのではないかと思います。
――最初に仕事につながったのは?
今のチームに入ったことで、ブランドのルック撮影を引き受けたことです。ちなみにチームに入ることになったのもご縁で、チームの代表を務めているスタイリストの方と、同じ古着屋さんに通っていて、常連として話したことがきっかけでした。
100点は永遠にない。怖くても一歩を踏み出す
――お話を伺っていると、経験があまりないことでも、声をかけられたら行動されていると感じます。なかなか勇気のいることではないでしょうか。
僕がもっとも大事にしているのは、とりあえずやってみようという精神です。1回やってみて、合わない、できないと感じたらそのときに辞めればいいと思っています。チャンスというのは実はたくさん転がっているもので、それに気付き、逃げ出さずに挑戦することが大切で。とりあえずやることを習慣化しないと、チャンスが来たときに逃げる癖がついてしまうと思うんです。あともうひとつ大切にしているのが、自分の100点を待たないということです。
――100点を待たない。
僕はこれまでの活動の中で、美容師としてもヘアメイクでも、100点を出したことってないんですよね。撮影したその日はすごくいいと思っても、次の日見たら10点だなと思うこともしばしば。全然満足できません。でもこういうことって、これから多分永遠に続くんのではないかと思います。永遠に100点はないと。
多分一歩踏み出せない人というのは、10点をとるのが怖いんだと思うのですが、やらなかったらずっと10点のままですよね。やればそれが20、30、40点とあがっていくかもしれない。だから失敗しても、とりあえずやってみることが大事だと思います。それに自分が失敗だと思っていても、ほかの人から見たら意外とすごいことをやっているかもしれないし、やってみないと分からないこともたくさんあると思っています。
――確かにそうですね。ちなみにご縁をつないでいく、コツはあるのでしょうか?
自分はこんなことをやりたいと、宣言することが大事だと思います。それも1回や2回じゃなくて、とにかく言い続ける。そうすると面白いと思ってくれた人から助け船を出してもらえるようになります。宣言すると、自分が行動するしかなくなるという効果もありますね。
あとは、自分と知り合った人を利用するのではなく、自分と知り合った人を全員幸せにする気持ちで接することも大事にしています。ちょっとおこがましいかもしれませんが、自分がみんなを引っ張り上げていくような気持ちです。そういう気持ちで接していると、ご縁は数珠つなぎのようにどんどん広がっていくんですよね。
美容師、ヘアメイクとして活躍している歩夢さんが、新人時代に心がけてきた3つのポイント
1.時間を有限ととらえ、圧倒的な行動力でスタイリストデビューを早めた
2.とりあえずやってみる精神で、一歩を踏み出し続けた
3.人脈を利用するのではなく、つながった人を幸せにする気持ちを持った
後編では、中学生時代から職業体験のような形で、美容室に入っていたという歩夢さんの、行動力の源をさらに掘り下げます。また新人時代の方が、ブレーキをかけずに行動できていたと話す歩夢さんに、新人時代の経験からどんなことを学んだかも伺います。
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