伸び悩んだ新人時代。技術の悪い点を知ることでステップアップ!・「M.SLASH 表参道」美容師・紫藤大貴さん
表参道のヘアサロン「M.SLASH表参道」の代表を務めながら、プレイヤーとしても活躍する紫藤大貴さん。2023年にはJHA(ジャパン・ヘアドレッシング・アワーズ)優秀新人賞を受賞している実力の持ち主です。この企画では、美容師は新人時代になにをするの?デビューはどのように決まるの?新人時代の動きや挫折しやすいポイントは?といったみなさんの疑問についてお聞きします。
前編では、入社1年目の動き方やいち早くステップアップするためにデザインの良し悪しを見抜く目を鍛えることの大切さなどについて伺いました。
お話を伺ったのは…
M.SLASH表参道・紫藤大貴さん
静岡県浜松市出身。実家がヘアサロンを経営していることから高校時代に美容師を志し、「名古屋中部美容専門学校 名古屋校」に入学。卒業後、2013年にM.SLASHへ就職している。美容師11年目となる現在、スタイリストとして活躍しながら「M.SLASH表参道」の代表。2023年JHA優秀新人賞を受賞する実力の持ち主である。
基礎を学ぶ入社1年目。先輩からのフィードバックを糧に成長
――入社1年目はどのようなことを行うのでしょうか。
この10年でデビューまでの期間は短くなりました。僕の時代は、シャンプー、ブロー、カラーなどの基礎や接客といったサロンワークの流れを覚えることがメイン。3〜5年のアシスタント期間は当たり前でした。現在は、基礎技術を磨くことは変わりませんが、デビューまでの期間が2〜3年と短くなっている分、1年目は計画的な練習をすることが求められます。
1年目の計画は基本的にどのサロンでも、ヒアリング、個人面談があるので先輩と一緒に考えることになります。そのため、特別不安を抱く心配はありません。
――紫藤さんの1年目は順調でしたか。
いいえ、すごく大変でした。僕は不器用なタイプで、カットやシャンプーなど技術力が伸び悩むことが多くありましたね。その度に、お客さまから料金をいただいているにも関わらず、こんなシャンプーでいいのかと恐怖を覚えるほどです。そういった気持ちから、さらに施術が上手くいかないこともしばしばありました。
――それは、どのように乗り越えたのでしょうか。
学生時代に野球に打ち込んでいたこともあり根性はあったので、とにかく他の人の何倍も練習していました。ただ、問題点もわからずに練習しても技術は向上しません。スタイルを完成させたら先輩に確認をお願いして、フィードバックを貰うようにしていたんです。間違ったことに一生懸命になると、変な癖がついてしまったり成長効率が悪くなったりするので、いち早く自分の技術の悪い点を知ることがステップアップにつながると思います。
学生時代との違いは比較されること。競争を勝ち抜くため効率のいい練習を
――学生時代と入社してからの違いは何ですか。
美容学校の技術は、上手いか下手かではなく国家試験に合格するかどうかです。つまり、人とは比較されません。対して、サロンヘ入社してからの技術は人と比較されるようになります。お客さまが自分よりも他の美容師のほうが良いと感じたら、離れていってしまうシビアな世界です。努力を怠ることは自分の価値を落とすことになるので、学生時代よりも技術は磨くようになりました。
――技術を磨く際に工夫していたことはありますか。
具体的に僕の場合はウィッグを使っての練習が多く、時間を意識したトレーニング、精度を意識したトレーニングなど、練習のたびに何を磨くのかを考えて取り組んでいました。最初からどちらも意識して練習するのは難しく、効率が悪いです。段階を踏んで、成長を目指していくのがおすすめだと思います。
JHAを受賞できたのは、スタイルの良し悪しが分かる目を育てたから
――美容師を目指すようになったきっかけを教えてください。
実家がヘアサロンを経営していることが目指すようになった大きな理由です。幼い頃は、美容師というものに特に興味はなく、野球選手になりたい一心で野球ばかりしていました。ですが、高校生の時に進路を決めなければいけない状況に置かれて、自分の将来を考えた時にオフィスで何時間もパソコンに向かう姿が想像できなかったんです。そのため、変わった仕事をしたいと思い、身近にあった美容師という職業をめざすようになりました。高校時代は野球部で坊主だったので、その反動で髪を扱うことに憧れたのかもしれません(笑)。
――美容学生時代に特に取り組んでいたことは何ですか。
基礎技術はもちろんですが、アップスタイルというアート性の高いスタイルなど、ヘアデザインの部分を特に磨いていました。学生なのでアルバイトもしなければならず、あまり時間はなかったのですが、学校の授業が終わった放課後に教室が閉まるまで練習したり、家に帰ってからも時間を見つけて黙々と練習したりしました。
もともとは、美容師になった後にお客さまに提供しないヘアデザインは必要ないと思っていたんですが、そのようなヘアデザインが非常に上手い友人がいたため、対抗心を燃やして取り組み始めたんです。何度も練習を続けた結果、学生時代に「STYLING CORECTION」という全国大会で優勝しました。
――具体的に技術はどのように磨いていたのでしょうか。
時間さえあれば業界誌に掲載されているヘアスタイルを見て、気になるカットの解説を読み込んで再現していました。当時は、何がおしゃれで何が綺麗なスタイルなのかを理解していなかったので、業界の先輩が手がけたスタイルを見て、試して、吸収して技術と感覚を磨いたんです。1日中、ヘアスタイルを見て研究する日も当たり前のようにありましたね。
――その経験は今でも生きていると感じますか。
すごく感じていますね。僕には美容師の師匠がいるのですが、「技術を鍛えるよりも目を鍛えろ」と強く言われていたんです。成長するためには、良いスタイルとは何か、どの部分が良いから良いスタイルなのか、良し悪しを見抜ける目を持たなければいけません。そのような目を持たずにいると、技術の磨き方、スタイルの作り方を間違えてしまいます。僕が2023年JHAで優秀新人賞を受賞できたのは、学生時代から現在までさまざまなヘアスタイルを見続けて、目を鍛え続けたからです。
紫藤さんが考える新人時代のステップアップにつながる3つのポイント
1.デビューに向けて計画的に練習を続けること
2.他人からフィードバックを受け、自分の技術の悪い点を知ること
3.さまざまなヘアスタイルを見て目を育てること
後編では、新人時代に挫折しやすいポイントやその克服法、デビューの決まり方、入社前にやっておくべきことなどを伺います。
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