就職活動で気づいた、自分を知ることの大切さ。四六時中、自分を見つめなおして「SiikaNIKAI」鶴巻樺乃さん
2016年に、青山、原宿、代官山と、都内にある別々のトップサロンで10年以上の経験を積んだ3人が集まり、オープンした「siika」。その2号店「SiikaNIKAI」は、ファッション誌やヘアカタログにもよく掲載され、高い技術とセンスが人気を集めています。同店で活躍中なのが、アシスタントの鶴巻樺乃さんです。
前編では、鶴巻さんの専門学校時代の様子や就職先を探す条件を検討した際のお話を伺いました。
後編では、「siika」での採用試験について詳しくお聞きします。
アットホームな雰囲気に惹かれ「siika」を志望し、採用試験に臨んだ鶴巻さん。スタッフ全員に見守られる面接と、2日間にわたるサロンワーク試験を経て、無事合格をつかみました。面接では取り繕わず、等身大の自分で臨むことを意識したそうです。
今回、お話を伺ったのは…
「SiikaNIKAI」アシスタント
鶴巻樺乃さん
東京都出身。新卒採用でsiikaに入社。真面目で根気強く、周囲からの信頼を集めるスタッフのひとり。
スタイリスト、アシスタントが全員見守る面接に大緊張
――「siika」の採用試験は、どんな流れで進みましたか?
私が就活をした年は、2年生の9月ごろに書類選考があり、その後、面接とサロンワーク試験がありました。
――履歴書を書くにあたって、どんなことを意識しましたか?
毎日生活をしながら、自分の長所と短所を見つける努力をしました。短所についてはどのように克服をしようとしているかを書いた記憶があります。
少し戦略的な話になってしまいますが、単純に短所を伝えるだけだと不利になってしまうと考えたので、長所と短所が表裏一体になっている短所を書くようにしていましたね。私の場合は「責任感が強すぎる」というところを強調しました。
――面接はどなたが担当されていましたか?
オーナー2名と店長2名、計4人に面接をしてもらいました。私が面接を受けたときは、スタイリストやアシスタントを含めた全員の投票制で、採用者を決めるという形式だったので、スタイリストとアシスタントが全員、後ろの方にいて、面接を聞いていました。大人数に面接を聞かれていると思うと、とても緊張しましたね(笑)。
――面接で受けた質問のなかで、印象深いものはありましたか?
「落ち込んだときにあなたはどうなりますか」と質問されたのが印象に残っています。落ち込んだときの気持ちの切り替えの仕方について聞かれているのかなと思い、取り繕わず、正直に「友達に話をして泣き、スッキリするようにしています」と答えました。「何かあっても、切り替えて仕事に臨める」ということを伝えましたね。
――今だから言える面接のアドバイスはありますか?
嘘をつかず、自然体でいることが大切かなと思います。美容師は毎日、何人ものお客様と会話をするコミュニケーションのプロです。10代の私たちが取り繕ったところで、それを見透かされてしまうと感じます。だからこそ、ありのままの姿で素直に面接に臨むことを意識するとよいかなと思いました。
サロンワーク試験では、「周りが見えていること」をアピール
――サロンワーク試験はどのように行いましたか?
「siika」には2店舗あるので、それぞれの店舗で1日ずつ、営業中のサロンに立ってアシスタント業務をしました。まだ国家試験に通っていないので、お客様に触れることはできませんでしたが、「周りを見ることができている」ということを伝えられるような行動を、意識していたように思います。
たとえば、先輩がお客様にお茶の種類を聞いたとき、すぐさまバックヤードに入っていって、先回りしてお茶を準備しておくなどしていました。即座に行動できるように、聞き耳を立てながら集中して行動していましたね。
――他にも意識したことはありましたか?
私が試験を受けたときは、もうひとりサロンワーク試験を一緒に受けている人がいたので、ふたりでやることがかぶらないように気をつけました。仕事の取り合いになってしまうのもよくないと思ったので、ふたりで協調し、尊重しあいながら、今求められている仕事をやるということを意識しましたね。
――合格が決まったのはいつ頃でしたか?
2年生の10月か11月頃だったと思います。家に帰る途中の道で電話をいただいて、飛び上がるほどうれしかったのを覚えています。
――入社までの間で努力したことはありましたか?
国家試験に合格することです。私の通っていた美容専門学校は、ハイレベルな施術を求められるため、「国家試験対策としての勉強」は、かなり短期間に詰め込んで行う形式でした。「本当に間に合うのだろうか」と心配になりましたが、国家試験のレベルよりも難しい技術を日常的に求められていたため、「やってみたら、意外とできるじゃん!」ということが多かった印象です。
また、スタッフの方たちと仲よくなりたかったので、お客さんとして「siika」に足を運んで、コミュニケーションを取ることも意識していました。
就職活動は、自分を顧みるきっかけになった
――自分に合ったサロンを見つけるために、どんなことをしておくといいでしょうか?
自分を分析することが大切だと思います。大型店の方がいいのか、アットホームなサロンの方がいいのか、男女の比率はどれくらいの方がいいのかなど、譲れない部分を就活の前に考えておいた方がいいと思いますね。またどうしてそういうサロンを選びたいのかという理由を明確にしておくことも大切です。
サロンは世のなかにたくさんあるので、迷い出すときりがなくなってしまいます。条件にあったところだけを視野に入れて、ぶれずに就活することも大切な気がします。
――入社後に意識していたことはありますか?
変な言い方になりますが、仕事に対して、過剰に期待をしないようにしていました。美容師は、いくらなりたい職業だったとはいえ、あくまで仕事。キラキラした仕事だけではないことも念頭に置いてスタートしたので、実際の仕事内容とのギャップはほとんどありませんでした。
まだできることが少ない状態なので、「私にできることを精一杯やる」ということも意識していました。入社直後にできることといえば準備や掃除くらい。でもそれを積み上げないと次のステージには行けないと考えて、地道にコツコツやることを意識しました。
――鶴巻さんにとって、就職活動はどんな経験でしたか?
人生で一番大変な経験でした。本当に道がわからなくなったときは友達と意見交換をして、自分の考えを口に出すことで、考えを再認識するということを繰り返してきました。四六時中、自分のことを考えて、自分の軸を作ったり、考え直したりする時間だったようにも思います。
大変な時期だったからこそ、価値観を見つめ直したり、大変なときに自分のご機嫌をどのようにとるかということも学びがあったように思いますね。
――美容師を目指す方に一言アドバイスお願いします。
美容師という職業は、熱い思いを持ち、志が高い方が多い仕事だと思います。周りの方からもたくさん刺激を受けることができる職業なので、私は「美容師になってよかったな」と思っています。
自分の実力のなさに時々落ち込んだり、お客様からの声だけでうれしくなったり、波のある仕事だと思いますが、そこがまた楽しく、魅力のある仕事だと思います!
鶴巻さんが就活を成功させた3つのポイント
1.嘘をつかず、自然体な姿で採用試験に臨んだ
2.軸を定めて、ぶれずに志望サロンを探した
3.就職活動を通して、自分の価値観を見直した
楽しみながら、真摯に美容に向き合う鶴巻さん。理想を着実にかなえていく実現力の裏には、自分を知る努力がありました。これから美容師として活躍を目指す方は、ぜひ参考にしてみてくださいね。