セラピストという仕事は人と会わないとできない仕事 私の履歴書【アンリュミエール オーナーセラピスト保戸塚優美さん】#2
南フランスのゲストハウスのようなエステサロン「アンリュミエール」。オーナーセラピストの保戸塚優美さんは、OLを経てフランスのエステ専門学校に留学。17年前にアンリュミエールを開業しました。
この後編では、保戸塚さんが考案した顔深筋マッサージの特徴やセラピストという仕事とは? 向いている人は? についてお聞きします。保戸塚さんは、セラピストという仕事は絶対に人と会わないとできない仕事だと語ってくれました。
顔のコリをほぐして表情筋をリセットする顔深筋マッサージ
――まずはサロンのコンセプトを教えてください。
表面的に美しくなるだけでなく、自分の持っている自然治癒力を呼び起こすことを大事にしています。そのためにフェイシャルもボディもオーガニックの化粧品を使って、体内の老廃物をデトックス。またストレスがあると本来の筋肉の使い方ができなくなってしまい、自然治癒力を引き出す妨げにもなるので、いかにストレスをリセットするかも念頭に置いています。
――では顔深筋マッサージとはどんな施術なのでしょうか。
顔のコリをほぐして表情筋をリセットするマッサージです。顔の深層には30以上の筋肉がありますが、感情を抑えこむことで緊張し、緊張が繰り返されることで固定してしまいます。例えば我慢強い人はエラになる咬筋がこっていることが多く、ここを深いところからほぐしていくことで筋肉のこりがほぐれ、エラの張りや顎関節症などを緩和し、顔の輪郭や歪みを整えていきます。
――顔深筋マッサージはフランスで学んだ手技なのですか。
フランスの手技はもっとソフトタッチなんですよね。顔深筋マッサージは、ホテルスパ時代やその後わたしがさまざまなところで修得した技術の中から、日本人向けならこんなのがいいのではと思ったものをまとめたオリジナルの手技になります。
オープン当初の集客はポスティングとホームページの作り込み
――開業17年目ということですが、最初から集客は順調だったのでしょうか。
最初はすごく苦労しました。いまはセキュリティが厳しくなっていますが、当時はいまほどではなかったのでマンションをまわってポスティングをしました。あとはインスタもなかったので、とにかくホームページを作り込みました。
――フランスの雰囲気漂う、且つ内容の濃い素敵なホームページですよね。
ありがとうございます。ホームページは現在に至るまでに3回作り直しています。もちろん制作会社に作ってもらっていますが、事前に集客セミナーに参加して、サロンの特徴など発信の仕方を学び、1ページ何千文字という情報量を入れて作り込みました。そのせいか「たるみ」とか「シワ」とかお悩みで検索してたどり着く方も多く、遠くからご来店くださる方もいらっしゃいます。
――17年の間には大変な時期もありましたか。
コロナ、震災、リーマンショック。山あり谷ありでしたね。
――そんなときはどうやって乗り越えてきたのですか。
いつも大変なんですが、やっておいてよかったなと思ったのはマニュアルをちゃんと作ったこと。個人サロンだとすべての施術のマニュアルを作っているところは少ないと思うんですが、文字とイラストと最近では動画を撮ったり。この業界はどうしても人の入れ替わりがあるので、マニュアルがあると教えやすいですし、スクール開講のときも作っておいてよかったなと思いました。
――確かにマニュアルがあると正確に伝わりますよね。
あとは1階にお店があることはよかったなと思います。クーポンサイトに掲載したのはオープンして1年間無料の期間だけ。路面店なので人に知ってはもらえるんですよね。
セラピストは絶対人に会わないとできない仕事
――保戸塚さんはセラピストをどんな仕事だと思いますか。
人に会わなくてもできる仕事が増えていると思うんですが、セラピストは絶対人に会わないとできない仕事。お客様には施術やセラピストと話すことで元気になったり何か感じとってもらえるものがあると思うんですね。そういう意味でも最終的にはやっぱり人と人との結びつきが大事な仕事ではあると思います。
――ではセラピストに向いている人は?
人とコミュニケーションをとるのが好きな人はセラピストに向いていると思います。でもコミュニケーションスキルがめちゃくちゃ高い人がいいかというと、それだけではダメなんですよね。コミュニケーションは最低限とってあとはもう休みたいというお客様もいらっしゃるので。この人は話したいのか、それとも寝たいのか。そこをちゃんと見極められて、いい塩梅で接客できる人がいいんじゃないでしょうか。
――指名のとれるセラピストにはどんな人が多いですか。
年齢はまったく関係なくて、きちんとやるスタッフは指名がとれる傾向にあります。技術はもちろんですが、やっぱり接客面でいい加減なところが見え隠れすると指名はつかないですよね。
――やっぱり接客が重要なのですね。保戸塚さんが望むセラピストはどんな人ですか。
教えたことを忠実にきちんとやってくれるのが大前提。それプラスお客様の要望をちゃんと理解した上で、自分で考えてやれる人。施術が始まったら1対1ですし、うちでは1時間半~2時間ぐらいの長めのメニューが多いので、自分で考える力は必要ですね。
――では最後に保戸塚さんにとって「働く」とは?
働くことは、自分が成長できる学びの機会だと感じています。仕事をしていなかったら知り合えないような方とお話することでいろいろな学びがあります。またお客様に喜んでもらえることが仕事のやりがいとなり、それで自分自身の生活の質が上がる。そうやって自分にも跳ね返ってくると思うんですよね。
働くって人生の大きな時間を占めるので、やりがいとか楽しいことがないと続かない気がします。それがあると苦しいときも留まれるんじゃないかな。
保戸塚さんがセラピストとして長く活躍している理由は
1.エステ留学やホテルスパ時代に貪欲に学んだ
2.顔深筋マッサージを考案した
3.ホームページを作りこみ検索で集客を上げた
フランス留学では大学生のときとは比べ物にならないほど勉強し、ホテルスパ時代は先輩の事細かなチェックをありがたいと思いながら学びを深めたという保戸塚さん。夢中になれるものを見つけて、一途に努力する。それが保戸塚さんが長く愛されるセラピストである理由なのかもしれません。
撮影/大崎聡
取材・文/永瀬紀子