かっこつけすぎず「ありのまま」が、画面越しのお客さまに安心感を届ける。「この人なら大丈夫」と思われる本質とは?【kon.代表・甲斐敢さん】#2
SNS発信が潮流となりつつある美容業界。就職活動におけるSNSの影響力も年々高まっています。本連載では、就活に役立つSNS活用法を、現役美容師のリアルな経験から紐解きます。
フォロワー16万人を超え、圧倒的な集客力を誇る『kon.』代表の甲斐敢さん。後編では、数多の動画の中で指を止めてもらうための仕掛けや、ブランディングの真意、そして流行に左右されない「バズる本質」について伺いました。
お話を伺ったのは…
『kon.』代表・甲斐敢さん
大村美容ファッション専門学校卒業。有名店2店舗を経て、2023年、原宿に縮毛矯正・髪質改善に特化したサロン『kon.』を設立。確かな技術力に裏打ちされたSNS発信が多くの共感を呼び、次世代を牽引する若手実力派として注目を集めている。
動画の「冒頭2秒」の仕掛けと「答え合わせ」ができる構成を意識
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――甲斐さんの動画は、お客さまの嬉しそうな表情がとても印象的です。特に心に残っている言葉はありますか?
「早くお母さんや家族に見てもらいたい」「変わった自分を見てほしい」と言っていただけたことですね。その方の人生の中で、自分の技術が少しでも力になれたのかな、と思える瞬間です。その喜びはずっと心に残っています。
――昨年のフォロワー増加ランキング(HAIR info調べ)では上位でしたが、どう感じられていますか?
正直、数字に関しては全く気にしていないんです。集客においてフォロワー数はあまり関係ないと思っていますから。もちろん「信用の指標」の一つにはなるとは思いますが、数字を追うことは目的ではないですね。
――動画が溢れる中で、「他とは違う」と思わせるために意識していることはありますか?
「開始2秒で面白いと思わせること」です。無意識に画面をスクロールしている人の指を止めてもらうために、最初の2秒に注力しています。そのために、僕自身もかなりの頻度でSNSを見て研究しています。バズっている投稿には必ず、視聴者を離さない細かな仕掛けが隠されているので、美容師の投稿に限らず、あらゆるジャンルの動画からそのパターンを学ぶように。
――具体的に、その「開始2秒」にはどんな仕掛けをしているのですか?
僕の場合は、カウンセリング中の少し意外性のあるやり取りを切り取って、冒頭に置いています。最初は何の動画かわからなくてもいいんです。まず印象的な言葉や「音」で指を止めてもらい、動画が進むにつれて「そういうことだったのか」と答え合わせができる構成にしています。
例えば、お客さまがふと漏らした「(私の髪でも)本当に大丈夫かな……」という不安げな一言を、あえて最初に持ってくることもあります。これはホストの方々の動画でよく使われている手法を参考にしています。
――見せ方の研究も徹底されていますね。ビフォーとアフターを前・後編に分けて投稿しているのも戦略ですか?
はい。実は、前・後編に分けるとコメント欄にお叱りの声が溢れることもあるんです。でも、そうやってコメント欄が賑わうことで、結果としてリーチが伸びる側面もあります。
演出としての狙いは、「この後どうなるんだろう?」とワクワクさせることです。開始2秒で指を止めてくれた方に、続く1分間でさらに興味を持ってもらい、最終的にプロフィール画面まで飛んでもらう。プロフィールへのアクセス(プロフィールリーチ)を増やすことで、予約にも繋がりやすくなります。
――流行の移り変わりが早い中、時代に合わせた戦略はありますか?
以前は自分の好きなものだけを載せていましたが、徐々に「求められるもの」にシフトしていきました。ただ、ニーズに寄りすぎても、自分自身の熱量が続かなくなってしまうので、「やりたいこと」と「需要」が交差するラインを常に微調整し続けています。
今はカウンセリング動画が反響を呼んでいるので、やりたい技術(縮毛矯正)を、カウンセリングという形に落とし込んで発信しています。自分のこだわりを押し付けるのではなく、時代が求める「形」に変換して届けるイメージですね。
――発信の核となる「技術」についても伺いたいのですが、独立後、全国のサロンを回られた経験も今の技術に繋がっているのでしょうか。
そうですね。2年間、各地で独自のルーツを持つ縮毛矯正のプロフェッショナルの方々と交流し、お話を聞いたり、お互いに技術を見せ合ったりする機会をいただきました。そこで自分なりに良いものを取捨選択し、実験を繰り返したことで、師匠から受け継いだ基礎と僕なりのエッセンスが掛け合わさり、今のオリジナルな技術に繋がっています。
かっこうをつけすぎず、ありのままで。お客さまが心を開く「安心感」の作り方
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――技術もSNSも非常に努力されていますね。甲斐さんのそういった人柄がファンを作る鍵だと感じますが、ご自身のキャラクターをさらけ出すことに抵抗はなかったですか?
昔は「モテたい」という気持ちがめちゃくちゃ強かったんですよ(笑)。でも、その「モテたい感」が出ていると、逆にモテないんだなと気づいて。それからは「かっこよく見せたい」という欲が、ほぼゼロになりました。
自分のちょっと残念な部分やダサい部分を隠さずに見せることが、結果としてお客さまにとっての「安心感」に繋がる気がしています。もちろん、最初は恥ずかしさもありましたが、ありのままをさらけ出す方が受け入れてもらえると学んでからは、変な遠慮はなくなりましたね。
――甲斐さんの「素」の姿が共感を呼んでいるのですね。もし今、フォロワー0のアシスタントに戻ったら、まずは何をしますか?
今の時代、SNSを見ていてもわかると思うんですけれど、「専門性」がないと選ばれにくいというのがあります。もしゼロから始めるなら、まずは「自分の好きな施術に特化していて、かつ発信力の強いサロン」に入ることが一番の近道かなと思います。
ただ、それは理想であって、誰もがそういうお店に入れるわけではないと思うので、もしそれが難しい場合は、まずは1ヶ月間、バズっている人の投稿を分析し、統計を取って「今、何が求められているのか」を把握します。その上で、自分でもできそうな部分を徹底的に真似することから始めます。
今の時代、「バズっている人の真似をする」というのが、一つの答えかもしれません。
――SNS時代、分析は大切ですね。一方で、個人の魅力が試される厳しさも増しているように感じます。
SNS上で個人として戦わなきゃいけない厳しさはありますが、「バズる本質」は今も昔も変わらないんじゃないかなと思います。
――甲斐さんが考える、その「本質」とはどういったところですか?
結局のところ、最後は「人柄」だと思うんです。人間の性格や考え方は、どうしても顔つきや表情に出ます。「なんとなくこの人、好きになれないな」とか「なんだか嫌悪感がある」といった直感的な感覚って、誰しもありますよね。
だからこそ、「人から見た自分がどう映っているのか」を客観視できる力が、めちゃくちゃ大事だと思っています。どれだけ素晴らしい技術や素材を持っていても、魅力が伝わらずに埋もれている人を見ると、本当にもったいないなと感じます。
画面を通して、良くも悪くも「人間性」が透けて見えてしまう。それが「この人なら大丈夫」と思ってもらえるかどうかの分岐点であり、本質なのかなと思います。
ーー最後に、美容学生や若手の方にメッセージをお願いします。
「自分を追い詰めすぎないこと」が大切だと思います。SNSも、技術も、人柄を磨くことも、自分磨きも……今の美容師に求められる要素は、数え上げればきりがないほどたくさんあります。もちろん努力は必要ですが、「やらなきゃ、やらなきゃ」と自分を追い込みすぎると、心に余裕がなくなって視野が狭まり、何より仕事が楽しくなくなってしまいます。
実は、楽しんで仕事をしていない空気って、お客さまに敏感に伝わってしまうんですよね。そうなるとリピートには繋がりませんし、SNSの画面越しでも、その「余裕のなさ」はどこか透けて見えてしまいます。
「やる気満々です!」と肩肘を張るより、少し力を抜いて「ラフな気持ち」でいるくらいの方が、今の時代には合っている気がします。「考えすぎない強さ」を持って、ぜひ美容師という仕事そのものを楽しんでほしいですね。
明日から実践できる!SNSでファンを作る心得
1.開始2秒に「気になる言葉や音」を置き、続きが気になる構成を作る
2.素を出すことで、圧倒的な安心感を届ける
3.ラフな心で楽しみながら、発信を継続する
取材・文/Maki Nagai
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「kon.」
住所:東京都渋谷区神宮前1-9-29 Fleg 2F


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