技術だけではお客様に選ばれない。「人間力」を磨き続けた新人時代【美容師 越川健司さん】♯1
「美容師が磨くのは、技術だけではない。大切なのはむしろ人間力なのかもしれない」。
現在は「Little錦糸町」でスタイリストとして活躍する美容師の越川健司さんは、厳しい下積み時代のなかで、美容師にとって本当に必要なものに気づいたといいます。
挫折しかけた経験や、先輩からの厳しい指導。前編では、越川さんの新人時代を振り返りながら、美容師としての土台を築いた経験について伺います。
今回、お話を伺ったのは…
越川健司さん
「Little錦糸町」スタイリスト

千葉県出身。高校卒業後、美容室に就職し、通信課程で美容師免許を取得。複数のサロンで経験を積んだあと、フリーランスに転向。現在は「Little錦糸町」に所属。丁寧なカウンセリングと1人ひとりに寄り添った提案を強みとし、リピートにつながる関係づくりに定評がある。
Koshikawa’S PROFILE
お名前 |
越川健司 |
|---|---|
出身地 |
千葉県旭市 |
出身校 |
東洋理容美容専門学校 |
趣味や休みの過ごし方 |
趣味は英会話、料理、飼い猫と遊ぶこと。休日は、映画鑑賞や恋人や友達と食事をしたり、飲みに行ったりしていることが多いです。 |
憧れの人 |
坂巻哲也さん |
道具へのこだわり |
「Chaotic origin dub」のオーダーメイドのシザーケースをずっと愛用しています。コームとブラシ類は「YSpark」、ヘアセットの道具は「N.B.A.A.」を使用。ヘアブラシは温もりがあり、手に馴染む木製で揃えています。 |
人を輝かせる側へ。美容師という仕事に見出した新たな夢

――美容師になろうと思ったきっかけは?
話すのが少し恥ずかしいのですが、実は10代のころは芸能界を目指していました。いろいろと活動はしてみたものの、現実的にはなかなかうまくいかなくて。
そんなもどかしさを感じていた17歳のころ、「自分が表舞台に立つのではなく、髪型を通して表舞台に立つ人を輝かせる側に回れないか」と考えるようになったのが、美容師を目指したきっかけです。
――そのような経緯があったのですね。高校卒業後は専門学校へ行かれたのですか?
美容室で働きながら、通信課程で美容師免許を取得しました。春と夏のまとまった期間にスクーリングで学校に通い、それ以外は働きながら勉強をする生活です。
通信課程の場合、在籍するのが3年間になり、専門学校より1年長くなります。それでも専門学校を卒業してからアシスタントとして経験を積むより、早く活躍できるようになるのではないかと思ったのが、この形を選択した理由です。
――実際に美容室で働いたり、スクーリングで美容に触れたりしたときはどんなことを感じましたか?
できないことも多かったので、当然といえば当然ですが、苦労の連続でした。美容師は華やかな印象がありますが、実際は掃除やタオル洗濯、シャンプーの練習など、地道な仕事が多いんだと感じたんです。
それに当時働いていた美容室は上下関係も厳しく、先輩が白いものを黒と言ったら黒になるような空気もありました(笑)。もちろん本質的なこともたくさん教えてもらいましたが、当時は正直、過酷だと感じる場面も多かったです。
敬語の使い方に苦戦。乗り越えて身につけた「人間力」

――新人時代、とくに苦労をしたことは何でしたか?
「人間力」の部分です。あいさつや言葉遣い、お客様対応がなかなかうまくいかず、苦労することがありました。
とくに敬語については、先輩から「越川くんの敬語は、言葉の頭に『お』、語尾に『です・ます』をつけてるだけだよね」と指摘されたことも(笑)。
――そうだったのですね(笑)。それはどのようにして改善されたのでしょうか。
言葉遣いの本を買って、基礎から学び直しました。
それまで美容師というと「技術でお客様をきれいにする仕事」というイメージしかなかったのですが、先輩から指摘を受けるうちにどれだけ技術があっても、言葉遣いや気遣いができなければ、指名にはつながらないんだと気づいたんです。
今でも人間力の部分は磨き続けていきたいと思っている部分のひとつです。
――そんなに厳しい生活のなかでも、美容師へのモチベーションが崩れることはなかったですか?
挫折しかけたことはありました。でもあるところから、どんな仕事であってもある程度苦労をしながら、技術を磨いたり、社会のルールを学んだりするのは大切なことだと気づいたんです。それを乗り越えられないようであれば、社会人として生きていくこと自体が難しいと思って。そう考えるようになってからは、覚悟が決まりましたね。
正直、当時は先輩たちに対して「口うるさい」と感じることも多かったのですが、今から振り返ってみると、先輩からの指摘のほとんどは正しく、自分のためを思って言ってくれていたことなんだと感じました。
今では、自分は厳しさのなかで成長させてもらい、とても恵まれた環境にいたのだと思っています。
芸能界のお客様を担当して実感した、「人を輝かせる」仕事の価値

――その後、スタイリストデビューをされたのですね。
はい。ただ、当時働いていたのが千葉の海沿いの地域で、新規のお客様が多く来店される環境ではなくて。スタイリストとしてデビューしたものの、担当できるお客様は限られていて、それ以外の時間はアシスタントとして先輩のフォローに入ることも多かったんです。
このままではなかなか経験を積めないと思い、より多くのお客様と関われる環境を求めて、東京の美容室に転職しました。最初はアシスタントとして入り、技術試験に合格してからスタイリストとして働き始めたんです。
もともと独立したいという思いがあったので、5年ほど経験を積んで独立することを考えていたのですが、そのタイミングでコロナ禍になってしまって。状況を見ながら柔軟に動いたほうがいいと判断し、その後はフリーランスとして働く道を選びました。
――スタイリストとしてやりがいを感じたことは?
東京でスタイリストとして働き始めて数年が経ったころ、予約なしで来店された中学生の男の子を担当したことがありました。
話を聞くと、ある有名な芸能コンテストのファイナリストで、これから芸能活動を始めるタイミングだったんです。彼に似合う髪型を提案して仕上げたところ、とても喜んでくれて。
――美容師になるときに目標にしていた、「人を輝かせる側」を体験することができたのですね。
そうなんです。2ヶ月後に再来店されたとき、「編集部の人に髪型をほめてもらった」と教えてくれました。その後は事務所に所属されたので担当することはなくなりましたが、俳優として活躍している姿を見たとき、本当に誇らしい気持ちになりました。
偶然の出会いでしたが、人を輝かせることができる美容師の仕事の魅力を改めて感じた瞬間でしたね。
独立という目標に向かい、常に自分を高め続けてきた越川さん。しかしその一方で、休みを削りながら働き続けたことで、心身に負担がかかっていきます。
気づけばストレスからお酒に頼るようになり、ドクターストップがかかるほどの状態に。
後編では、そこからどのように立ち直り、今の働き方にたどり着いたのかを伺います。
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little 錦糸町
住所:東京都墨田区江東橋4-28-2下町ビル2F
TEL:03-6659-5331
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