バズを「信頼」に変える。炎上経験を糧にたどりついた、技術と人柄の届け方。縮毛矯正のスペシャリスト【kon.代表・甲斐敢さん】#1
SNS発信が潮流となりつつある美容業界。就職活動におけるSNSの影響力も年々高まっています。本連載では、就活に役立つSNS活用法を、現役美容師のリアルな経験から紐解きます。
今回は、縮毛矯正や髪質改善を専門とする『kon.』代表・甲斐敢さんにインタビュー。前編では、「縮毛矯正」に特化した経緯や、炎上経験を糧にたどり着いた「信頼されるSNS発信」、そして画面越しに安心感を伝えるための工夫について伺いました。
お話を伺ったのは…
『kon.』代表・甲斐敢さん
大村美容ファッション専門学校卒業。有名店2店舗を経て、2023年、原宿に縮毛矯正・髪質改善に特化したサロン『kon.』を設立。確かな技術力に裏打ちされたSNS発信が多くの共感を呼び、次世代を牽引する若手実力派として注目を集めている。
潜在ニーズを捉えて、カラーリストから「ブリーチ縮毛矯正」の道へ
――現在は縮毛矯正のスペシャリストですが、難易度の高い「ブリーチ縮毛矯正」に特化したきっかけは何だったのでしょうか?
専門学校卒業後、入社した『Of HAIR(オブヘア)』では、カラーリストとして働いていました。転機は美容師2年目の頃の「ケアブリーチ」ブームです。世の中にハイトーンの方が溢れる一方で、「ハイトーンと縮毛矯正を両立させたい」というニーズが急増したんです。
ちょうど転職を考えていたタイミングで「ブリーチ毛の縮毛矯正に特化した美容師がいる」と知り、移籍したのが『relian(リリアン)』でした。そこで師匠の岩間さんに出会い、2年ほど学ばせていただいた経験が今に繋がっています。
――時代のニーズを捉えたのですね。SNSは最初から順調だったのですか?
最初のサロン時代にカラーの投稿をしていた時は全くバズらず、試行錯誤の連続でした。変化があったのは2店舗目に移籍した時です。それまでは、かわいいモデルさんの「スタイル写真」が主流でしたが、トレンドがお悩みを解決する「ビフォーアフター」へと変わっていきました。
同時に動画編集アプリも普及し始め、流行り始めていたTikTokに「動画」をいち早く載せたのも大きかったですね。特に縮毛矯正は、もともとカーリーな髪質の方が多いので、動画は変化が伝わりやすく、一気にお客さまが増えました。当時はまだ動画発信自体が珍しく、先駆けだったと思います。
失敗から学んだ「バズ」の正体と、対話から生まれる信頼関係
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――動画の構成スタイルはどうやって築いていったのですか? 今に至るまでの工夫や、失敗談について教えてください。
失敗談といえば、リールで「文字入れ」が重要視された時期に、1秒目で目を引こうと「衝撃映像」というテロップを入れたら、「お客さまに対して失礼だ」と炎上してしまって……。店に電話がかかってくることもあり、過度な表現は控えなければと痛感しました。
ただ、その経験から学んだこともあります。不謹慎な炎上はダメですが、コメント欄が賑わう動画は、多くの人が気になって見てしまう心理が働いています。称賛だけでなく、あえて少し議論が生まれたり、興味を引く「気になるポイント」をフックにしたりすることで、結果としてリーチが伸び、バズに繋がる。SNSはその絶妙なバランスが大事なんだと気づけました。
――称賛の声だけでなく、いろいろな反応がSNSにはつきものですよね。動画を作るうえでカウンセリングも重要になると思いますが、大切にしていることはありますか?
カウンセリングは、いかにお悩みを「引き出せるか」だと思っています。お客さまは緊張されている方が多いので、まずは落ち着いていただけるよう、ゆっくり話すことを心がけています。
うちは都会のサロンらしいギラギラした内装ではないのですが、地方からわざわざ来てくださる方も多く、予約も取りづらい状況です。そのため、お客さまからすると「やっと来られた!」という期待感から、少し興奮状態になっていたりするんですよね。そうなると、伝えたかったはずのお悩み事がうまく言えなくなってしまう。
美容師がやりがちなのが、慣れてくるとつい自分ばかり説明してしまうこと。僕もたまにやってしまって、あとで反省するんですけど(笑)。
結局は「人対人」なので、カウンセリングを単なる「業務」にしないことが何より大切です。そのためには、日頃から人の話に耳を傾けられる人になる。普段から悩みを相談されるような存在であったり、相手の悩みや想いを引き出す練習をすることが大事なんじゃないかなと思います。
――真摯な姿勢が素敵ですね。数多の投稿がある中で、甲斐さんの動画がこれほどまでに反響を呼ぶ理由はどこにあると思いますか?
一番は「これだけ輝けるお客さまがいる」ということを、動画を通して証明できているからかなと思います。もともとカーリーな髪質の方が劇的にイメージチェンジする姿は、やはり見る人の心に深く残りますし、それが同じ悩みを持つ方の「希望」になっていれば嬉しいですね。
画面越しに「安心感」を届ける工夫
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――プロフィール欄の「必ずきれいになるまでお手伝いします」や「縮毛矯正で人生を変えます」という言葉に、心打たれる人は多いと思います。SNS上でどのように「自分らしさ」を表現していますか?
動画編集で心がけているのは、あえて「間(ま)」を切りすぎないことです。普通はテンポを良くするために「間」をカットして見やすく作りますが、僕はあえて残す部分を作っています。例えば、お客さまが核心に触れるお悩みを口にした際、僕のちょっとした相槌や表情を0.5〜0.8秒ほど残すようにしています。
効率やテンポは悪くなるのですが、その数秒があることで「この人はちゃんと考えてくれているんだな」というのが画面越しにも伝わるのかなと。あとは、あまりかっこよく作り込みすぎず、何気ない会話をあえて入れる。そういった「ありのまま」の空気感を大切にしています。
――完璧に作りすぎないことで、人間味が感じられますね。SNSでバズることと、実際に予約が入ることは必ずしもイコールではないと思いますが、予約へ繋げるために意識している工夫はありますか?
よく言われていることではありますが、ハイライトを充実させ、お店の雰囲気や駅からの道順といった「迷わせないための情報」を載せて導線を整えています。また、お客さまとお話ししている様子をストーリーズに載せて、店内の雰囲気が伝わるようにしています。男性美容師は、どこか「怖そう」「こだわりが強そう」というイメージを持たれてしまうこともあると思うんです。人柄が伝わる投稿を重ねることで「あ、私でもここなら安心して行ける」と思ってもらえるような雰囲気づくりを大切にしています。
――技術の凄さだけでなく、「ここなら安心」と思わせる丁寧な動線設計こそが、多くのファンを惹きつける理由なのですね。
成功を引き寄せるSNS活用のポイント
1.「時代のニーズ」×「自分の技術」の掛け合わせで唯一無二の武器を作る
2.画面越しに「安心感」という付加価値をデザインする
3.「バズ」を「信頼」へと変換する導線設計
▶︎▶︎後編:『かっこつけすぎず「ありのまま」が、画面越しのお客さまに安心感を届ける。「この人なら大丈夫」と思われる本質とは?』
取材・文/Maki Nagai
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「kon.」
住所:東京都渋谷区神宮前1-9-29 Fleg 2F
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