売上よりも大切にした、プラス1品を提案する「ご紹介力」 「LANCÔME」岩瀬瑞希さん
コスメブランドとして世界中で長く愛されてきた歴史を持つ、「LANCÔME」。その美容部員として活躍し、今年7年目を迎えるのが岩瀬瑞希さんです。
前編では、美容部員になった経緯、そして配属された店舗でどのように仕事を覚えたかを伺いました。
後編では、新人時代の岩瀬さんが、接客のなかで心がけてきたことをお聞きします。
美容部員の仕事は売上をあげることも大切ですが、岩瀬さんが意識していたのはお客さまが気になっている商品にプラス1品のご紹介を加えることだったそうです。そのプラス1品がなかなか購入につながらず悩んだ際、どのように乗り越えたのかも伺いました。
今回、お話を伺ったのは…
岩瀬瑞希さん
「LANCÔME 伊勢丹新宿店」BA
大学卒業後、「LANCÔME」に新卒採用で入社。新人時代から伊勢丹新宿店に配属となり、現在は入社7年目。メイク技術の高さ、お客さまへの提案力などで信頼を集め、店舗を牽引する存在として活躍している。
売上ではなく、「プラス1品」を常に意識
――BAの仕事は、売上をあげるというのも大事な要素の1つだと思いますが、新人時代から意識はされていましたか?
売上をアップさせようというより、お客さまが「これをください」と仰った商品だけでなく、何か1品プラスしてタッチアップさせていただいたり、プラス1品ご購入いただくことを意識していました。お客さまが欲しいと思ったものを売るというのはだれにでもできることで、美容部員にとって大事なのはこの力があることだと思っています。いわば「ご紹介力」というんでしょうか。
――「ご紹介力」をつけるために、具体的に取り組んでいたことはありますか?
新人時代は、たとえばファンデーションが気になって来店してくださったお客さまに、化粧下地をご紹介するという感じで、気になっている商品に関連した商品をプラスでご紹介していたのですが、よりご紹介の幅を広げるため先輩からいろいろと教えていだきました。
まずお客さまがカルテへ書いた悩みに対して、どんな商品をおすすめできるかを教えていただきました。それと入社2年目くらいに先輩から教えてもらって取り組んでいたのが、お客さまが気になっていた商品とおすすめした商品、それを実際に購入していただいたかどうかをすべてノートに残すことです。そうすることで、どういった提案だと購入につながるかの分析ができたと思います。
――入社2年目、3年目と、何か変化はありましたか?
私の勤めていた店舗に、メイクアップエキスパートという称号を持ったリーダーがいたので、その先輩からメイクの細かいテクニックを教えていただくようになりました。よりお客さまをきれいにして差し上げられるようになり、喜んでくださる方が増えたと思います。またお客さまにメイクのテクニックをお伝えできるようになり、そこからより信頼していただけるようになっていったかもしれません。
なかなか購入につながらない時期も。「関係のない話」でお客さまを知る
――新人時代にもっとも苦労をしたことはどんなことでしたか?
プラス1品のご紹介をずっと意識していたのですが、ご紹介してもなかなか購入につながらない時期があって、そのときは悩みました。
――どのようにして乗り越えましたか?
ご紹介から購入につながることが多い先輩方に、どうやってご紹介しているかをとにかく聞き、紹介方法を自分のなかに落とし込むようにしました。またそうやってお聞きしているうちに、お客さまのニーズや、ご自身にあっているという実感が得られないときに購入につながっていないと気付いたんです。そこでお客さまにあっているものを紹介できるよう、お話する時間を増やしてお客さまのことをもっと知ったり、ニーズを引き出すようにしました。
――お話する時間を増やすと、ニーズを引き出すことができるのですね。その際に心がけていることは?
楽しんでもらうことは意識しています。美容に関することを質問攻めにするより、美容とは全然関係のないことを話したり、別の角度から話を振ったりすることが結果としてお客さまを知ることにつながると思っています。
――伊勢丹新宿店で働いていたからこそ、得られたものはありますか?
とにかく忙しくお客さまが多いお店なので、そのなかでいかに対応をするかという力、接客以外の業務を早く終わらせる力がついたと思います。あとはおしゃれなお客さまがとても多いので、私も刺激を受けています。
華やかさだけではない美容部員の仕事。それでもやりがいは大きい
――新人時代を振り返ってみて、どのような学びがあったと感じますか?
改めて指導してくださった先輩方のありがたさを感じています。私の指導をしてくださった先輩がとても細かい方だったのですが、新人時代は覚えることが本当に多かったので、教えてくださる先輩の言葉に最初はいっぱいいっぱいになってしまったり、怒られることも多々ありました。お客さまにご紹介したアイテムをすべてノートに書くことも、正直最初は面倒臭いなと思っていて、私のなかに反発心があったんです。
でもほかのスタッフに話しを聞くと、「そんなに細かく教えてくれる先輩ってあんまりないよ」と言われて。時間が経つにつれ、自分がおかれていた環境への感謝がわくようになりました。細かく教えてくださったことが今の自分の力になっていますし、私のことを怒ってくださったのも、本当に私のことを気にかけてくれていたと改めて実感し、そのありがたさをとても感じますね。
――最後に、美容部員を目指している方にアドバイスをお願いします。
美容部員の仕事というと接客のイメージが強いかもしれませんが、お店の裏で行う業務も多いので、華やかなイメージだけで入ってしまうと仕事の内容にギャップを感じてしまうのかもしれません。意外と地味な作業が多いですし、在庫を運ぶなどなかには力仕事も。そういう業務もあるということを事前に把握しておくのは、意外と重要なことではないかと思っています。
とはいえ、美容部員を7年続けてみて、とてもやりがいのある仕事だと感じています。たとえばいつも同じメイクをしている方にいつもとは違うメイクを提案して新鮮さを感じていただいたり、スキンケアの方法が分かってお肌が変わったと実感していただいたり、悩んでいる方の力になれると思いますし、お客さまに喜んでいただける仕事です。大変なこともありますが、それを越える楽しさややりがいがあるので、美容好きな方にはチャレンジしていただきたいなと思います。
岩瀬さんが接客で大切にした3つのこと
1.売上より、プラス1品を紹介する意識を持った
2.さまざまな知識や技術を身につけ、「ご紹介力」の幅を広げた
3.お客さまとの話量を増やし、その方にあった提案を心がけた
岩瀬さんのお話を伺っていると美容に対するまっすぐな思いを感じました。その思いがあるからこそ、知識や技術の幅が広がり、お客さまからの信頼も厚いのだと思います。美容部員に興味のある方はぜひ参考にしてみてくださいね。