メンズサロン＝OVARLと言われるように、私が引っ張る！ 【OVARL by apish デザイナー 潤華さん】#2
新人時代をどう乗り越えてきたのかを伺うこの企画。前編に続いて、OVARL by apishのデザイナー、潤華さんのインタビューをお届けします。
前半では念願のapishに入社が決まり、コロナ禍でも順調に技術を磨いていった様子をうかがいました。後編では、技術を磨いた具体的な方法、女性のヘアアレンジに魅力を感じていたのにメンズサロンへの異動を受け入れた理由などをご紹介します。
お話しを伺ったのは…
OVARL by apish
デザイナー 潤華さん
関西美容専門学校を卒業後、2019年4月apishに入社。当時、専務だった佐藤 大氏のメインアシスタントを経て2022年10月スタイリストデビュー。翌月、男性に特化したサロン「OVARL by apish」のオープニングメンバーに選出。2023年3月デザイナーに昇格する。
1日モデル3人をノルマに練習。ついに佐藤さんも認めるレベルへ
佐藤 大さん(右)のメインアシスタントになり、ハイレベルの技を間近で学べるように。
――佐藤さんにアシスタントになりたいことを伝えてから、どうでしたか？
佐藤は感覚派の人なんです。例えば「この面はこうやってカットするから、こういう形になる」って理論的に教われば、すんなり理解できるんですが、でも佐藤は違います。「この人にはこういうカットが似合う」とか、感覚で教えるタイプ。確かに頭の形も髪質も人それぞれなので、理詰めでは教えきれないんだと思います。
――潤華さんはどうしたんですか？
人や髪質によって違うなら、自分が納得できるまで実際にモデルの髪で学ぶしかないと覚悟しました。
――関西出身だと東京でモデルを探すのは大変だったでしょう？
そうでもありません。インスタでハントしたり、予約サイトを利用してモデル価格でお願いしたり。デビュー前の1年間はほぼ毎日、モデルを2～3人カットしようと決めました。
――なぜ、自分をそんなに追い込んだんですか？
専門学校の同級生だった子が私と同じように上京していて、営業後に7人カットしているって聞いたのがきっかけです。サロンのアシスタント同士で手伝っていたそうですけど、その話を聞いて「グズグズしていられない。私もやる！」と（笑）。1日7人はとうてい無理なので、2～3人は続けようと決めました。
――自分で決めたこととはいえ、辛くありませんでしたか？
私、辛いと思ったことが一度もないんです。辞めたいと思ったこともないし。ただひたすら毎日を楽しむようにしていました。
――佐藤さんから認められるようになったのはいつ？
もともと佐藤は口数が少ないので、褒めることはないんです。あるとき、佐藤のお客さまのブローを任されたことがあって、その日の反省会でぼそっと「良かったよ」って言ってくれたんです。そのときは「やっときた！」と思いました（笑）。
佐藤のブローはすごく特殊で、その通りにやるのがすごく難しいんです。それを認めてもらえたのが、とてもうれしかったですね。
女性が男性の髪を担当する。新しいチャレンジに立ち向かう！
幼い頃からずっと可愛がっていた愛犬、銀次郎くんの名を記したチャームは潤華さんのお守り。
――2022年にスタイリストデビューして、その後メンズサロンに異動します。ずっと女性の髪をやっていて、メンズサロンに移るのに葛藤はありませんでしたか？
佐藤のお客さまには女性だけでなく男性のお客さまもいらしたので、男性の髪をやることに抵抗はまったくありませんでした。
そうは言っても女性の髪をずっとやってきたので、踏み出すのに迷いがありました。そのとき勤務していた青山店の店長に「男性スタイリストが男性の髪をやるケースがほとんと。でも女性でメンズをやるのは少ないから、ある意味チャンスなのでは？」と言われたんです。そう言われてみれば…と思って、迷いが吹っ切れました。
――それまでの潤華さんのお客さまはどうしたんですか？
OVARL by apishは私を除いてスタッフが男性というだけで、女性のお客さまでもかまいません。なので、こちらにいらっしゃる方もいます。あと私は土曜日だけ青山店に出ているので、そのときに担当する方もいらっしゃいます。
――男性ばかりで女性がいないと、やりづらい面はありますか？
バイクとか車の話をされても、よく分からないですね（笑）。その分、青山店に行くと同期や女性もいるのでドラマの話とかイケメンの話で盛り上がれます（笑）。
男性と女性とでは視点が違うので、「そんなこともあるのか」と思えるようになりました。お客さまに対しては、今はメンズの方が話しやすいですね。反応が素直だし。喜んでくれているのがストレートに伝わって、やりがいがあります。
――仕事の取り組み方がとても前向きですが、ストレスが溜まったときはどうしていますか？
私は根がポジティブなんですね。誰かと話せば、それだけですっきりするし、ひと晩眠ればリセットされます（笑）。
もともと独り言が多いんですが、今は可愛がっていた犬の名前が書かれたチャームに話しかけています。22年に17才で亡くなっちゃったんですよ。スタイリスト試験もデザイナーに昇格するときも、このチャームに「見守っていてね」ってお祈りしました。
――潤華さんが先輩になった今、後輩にはどう指導していますか？
最初のうちは怖い先輩だと思われていたみたいです（笑）。でも、教えていた子たちが成長して「潤華さんの言っていたことが、やっと分かりました」って、言ってくれるようになりました。私は先輩に教わったことをそのまま伝えているだけなんですけどね。
私が佐藤に憧れたように、憧れる先輩になりたいです。
――教え方はどうですか？
佐藤は「考えて」とか「やってみて」って言うタイプ。私も同じです。どうしてこうなったのか、質問をめっちゃします。考えられるようになれば、学びになります。答えを教えるのは簡単ですけど、すぐ忘れちゃいますから。
――OVARL by apishは2024年で丸一年経ちました。今後の抱負は？
このサロンをもっと有名にしたいです。メンズサロンと言えば「OVARL by apish」くらいにしたいですね。
私がここに配属されたとき、店長と先輩スタイリストがいて3番目のポジションでした。先輩たちに離されないようにしながら、私も一緒にみんなを引っ張っていけるようになりたいです。
潤華さん流！ 壁を突き破るための3つのポイント
1.どんなことにでも逃げずに、挑戦し続けること
2.苦手なものや困ったことにもきちんと向き合うこと
3.ストレスはこまめに発散して溜め込まないこと
その場にいるだけで周りの雰囲気を明るくしてくれる潤華さん。アシスタント時代の練習も、コロナ禍で何もできなかった時期も、「毎日ひたすら、楽しむようにしていた」から乗り越えられたのでしょう。潤華さんのポジティブなマインドを見習いたいものです。
撮影／古谷利幸（F-REXon）
