先輩と自分を比較してナーバスになったデビュー前。お客様の声があったから、前を向けた「THE DAY」林田蓮さん
学芸大学前に店舗を構える「THE DAY」は、「なんでもない1日が、少しでも素敵な1日になるように」がコンセプトの人気サロン。同店で活躍中なのが、スタイリストの林田蓮さんです。
前編では、林田さんが専門学校時代に悔しさをバネに努力を重ね、「THE DAY」に入社した際のお話を伺いました。
後編では、林田さんが新人時代にぶつかった壁について伺います。「THE DAY」はベテラン美容師が多く在籍しているため、デビュー時には経験の差が気になり、苦しんだという林田さん。しかしどんなときも言い訳をせず、ポジティブに努力を重ねることを意識したといいます。
今回、お話を伺ったのは…
「THE DAY」スタイリスト
林田蓮さん
新卒で「THE DAY」に入社し、今年で6年目。スタイリストとして2024年1月にデビューを果たす。ナチュラルなスタイルを得意とし、安定した技術でお客様からの指示を集めている。
言い訳をしなかったからこそ、多くのことが身に付いた
――新人時代、心がけたことはありますか?
技術的に未熟だからこそ、せめて「人の感情を読み取って、配慮すること」を意識していました。これはお客様に対しても、スタイリストに対しても同じです。たとえばスタイリストに対してであれば、「今、こんなフォローが必要なのではないか」ということを考えて、言われる前に積極的に行動するということを意識しました。
――他にも、意識していたことがあれば教えてください。
「言い訳をしないこと」も気を付けていました。たとえばスタイリストが同じメニューを施術しても、人それぞれ施術しやすいスタイルは異なります。スタイリストによって最適なアシストの仕方が変わるので、担当スタイリストが変わると、うまくサポートができないこともあると思うんです。
うまく振る舞えないと、つい「Aさんには、そんなやり方を教わっていません!」と言い訳したくなってしまいます。しかしそんなときこそ「あんな方法もこんな方法も自分のものになる!」「いろいろなことが学べるチャンスだ!」と思って、ポジティブに捉えるようにしました。
いろいろな先輩の施術を見せていただいたからこそ、先輩の技術のいいところどりで、自分に合う方法が見つけられたと思っています。
――そのポジティブ思考は、働くうえではとっても大切なことですね!
その気持ちがあったから、がんばれたところもあると思います。右も左も分からない1年目はとくに大変でしたが、絶対に仕事は辞めないとを決めていたので、なんとか踏ん張れました。2年目以降はスタッフとも打ち解けられて、悩みや相談を話せるようになったことで、段々と心が軽くなっていったように思います。
先輩と比較し、経験不足に悩んだデビュー前
――スタイリストデビューまでは順調でしたか?
ハイライトのモデル練習をしていたときは、壁にぶつかっていましたね。ハイライトは過去の履歴が施術に影響してしまうので、髪の状態を丁寧に見ながら練習を重ねました。とくに、お客様が記憶していないストレートパーマやブリーチなどがないかを確認し、色ムラにならないように仕上げるのが難しかったです。
先輩スタイリストの時間をもらっているというプレッシャー、履歴をしっかり読み取ってきれいに仕上げなければならないというプレッシャー、終電までにモデルさんへの施術を終えなければならないというプレッシャーが重なり、精神的にも肉体的にも辛かったです。
――どうやってその壁を乗り越えましたか?
先輩が毎回、メモに気付いたことをびっちりと書いてくださったので、その指摘をひとつずつ潰していきました。当時はたくさんの指摘に「こんなにできていないのか!」とショックを受けたこともあります(笑)。
しかし今となっては「丁寧に見て、わざわざ書いてくださっていたんだ」とありがたく感じています。壁を乗り越えられたのは、先輩方のおかげによるところが大きいです。
――いよいよデビューというとき、どんな心持ちでしたか?
実はデビュー直前の気持ちの揺れ動きが大きく、精神的に大変でした。「THE DAY」は、私以上の暦を持つスタッフは、みんな一回り以上年齢が上なんです。当然、美容師歴も12年以上先輩ですし、技術も接客も一流。たくさんの引き出しを持っている先輩方と同じ「スタイリスト」という土俵に乗って、正規料金をいただいて施術をすることを、とても怖く感じていました。
そうした心持ちが影響していたのか、どれだけ練習を重ねても全然成長が感じられない時期もありましたね。
――確かに、自分と先輩を比べてしまいそうですね。
はい。さらに私がデビューをするタイミングで、産休に入る先輩方のお客様を引き継がせていただくことも決まっていました。とても尊敬する先輩の引き継ぎということもあり、「お客様や先輩方の期待を裏切ってしまわないか」「私にできるのだろうか」とナーバスになりました。
これまで、アシスタントとして働く私の姿を見ていたお客様からしたら、「私に施術されることを不安に思うのではないか」というネガティブな気持ちもあったように思います。正直なところ、「ずっとアシスタントのままでもいいんじゃないか」と思ってしまったこともありましたね。
――そのときは何をモチベーションにしていたのですか?
やはり、お客様の声がモチベーションになりましたね。私がアシスタントとして働く姿を見ていたお客様から、「おめでとう!」と言っていただいたこともありましたし、「林田さんのシャンプーや、会話が好きだからこれから担当してほしい」と言ってくださる方がいたことで、努力し続けられました。
今でもまだ、自信がない部分もありますし、落ち込んでしまうこともよくありますが、施術が終わった後にお客様が満足してくださる姿を見ることで、踏ん張れています。お客様から声をいただけることが、今の私のやりがいです。
新人時代に大切なのは、「失敗を受け止める力」
――新人時代の体験は、林田さんにとってどんな学びになりましたか?
技術的なところもたくさん学びがありましたが、とくに私が不得意だったコミュニケーションに関する学びが多い新人時代だったように思います。お客様のことをよく見て、その方の求める接客や技術を提供することの重要性を感じることが多かったですね。
――最後に、今後美容師を目指す人にアドバイスをお願いします。
新人時代を乗り越えるために必要なのは「失敗を受け止める力」だと思います。どんな美容師だって、長く続けていたら絶対に失敗を経験しているはず。反省することは大切ですが、重く受け止めて落ち込み過ぎないよう、気持ちを切り替える方法を身に付けておくといいと思います。たとえば私の場合、心がざわざわするときは、休日にひとりで静かに練習をするようにしています。
美容師は、お客様から指名をしてもらえたり、直接、お礼やお褒めの言葉をいただけたりする唯一無二のお仕事だと思います。新人時代は、乗り越えなければならない壁もたくさんありますし、不甲斐ない思いや、悔しい思いをすることもたくさんあります。でもそこを乗り越えれば、ご褒美のように楽しい美容師人生が待っていますよ!
林田さんの新人時代が充実した3つのポイント
1.どんな状況でも言い訳をしなかった
2.ナーバスになったときも、お客様の声を活力に努力を続けた
3.失敗を受け止めることを意識し、対処方法を身に付けた
どんな状況でも言い訳をせず、まっすぐに自分の実力と向き合った林田さん。辛いことからも逃げ出さずに努力を重ねたからこそ、今の活躍があるのだと感じた取材でした。これから美容師として活躍を目指す方は、参考にしてみてください。