ありきたりなフォーマット文はNG! 自分ならではのアピールポイントを見つけて打ち出してほしい【Violet 本部長 藤橋孝さん】#2
美容師を目指す学生、新天地を目指すスタイリストさんにとって、避けては通れない就職活動。晴れて採用を勝ち取るためには、どんな準備が必要? 心がまえは? そんな疑問を、実際のサロン採用担当者にインタビュー!
ヘアだけでなく、常にトレンドを追い求めていることで話題のサロン「Violet(バイオレット)」。前回に引き続き、Violetにて本部長を務める藤橋孝さんにお話をお聞きします。
第2回目の今回は、履歴書作成について。書類選考を行っていないVioletが好印象を抱く履歴書とは? 面接時に有利になる作成のポイントをお聞きします。
お話を伺ったのは…
Violet 本部長 藤橋孝さん
2015年にVioletに入社し、約15年間美容師として活躍したのち、4年前に本部長に任命され、スタイリストから完全に経営・運営のサポートにシフト。現在は、Violetで行う事業を円滑に進めるために、美容師をサポートする業務に取り組んでいる。
作文に成績表…履歴書を読み解くうえで重要な資料になる
――まずは、必須の提出物をお聞かせください。
Violetは書類選考はありませんが、履歴書と目指す美容師像について記すアンケート、成績表、テーマ作文の提出をお願いしています。
――作文について詳しくお聞かせください。
どんなテーマを?
Violetでは「利他の心」を大切にしています。お客様やスタッフに思いやりを持てる素敵な人を目指してもらいたいので、「利他」をテーマにしました。
文量はだいたい、原稿用紙2枚分程度を想定しています。
――なぜ作文にしたのでしょう?
その人の言葉の捉え方やクセを見るためです。
言葉の解釈の仕方って人それぞれだと思っていて。Violetが大事にしている利他という言葉を用いて、どういった感じ方をするのか、それぞれの思いを聞くことで見えてくることも多いです。
そこに正解・不正解はなくて、ただ一人一人のクセからその人の性格の傾向を少し覗けるポイントだと思い、テーマにしています。
――成績表ではどんな点をチェックしている?
欠席と遅刻日数は確認していて、あまりにも多い場合は、理由を伺うことがあります。学校ごとに規則が違うので、しっかりヒアリングすることが必要ですから。
欠席や遅刻が多いからと言って評価にそのまま影響はしませんが、大事なのはそのあと。そうなってしまった理由に対して、どのように解決・改善したのかが答えられることが望ましいですね。気合いだけで「気をつけます!」という姿勢よりも、起きた問題とその解決方法が聞けると嬉しいです。
――提出物の中での重要度は?
この中で最も重要と捉えているものは当たり前ですが、履歴書。面接時に質問をするための資料としてしっかりと目を通しています。
デジタルの履歴書は好印象! 気持ちが伝わる体裁であればどちらでもOK
――では、履歴書について伺います。
書類選考を行わない理由は?
Violetで働きたいと思った学生と直接話がしたい気持ちが大きいからです。
――書類選考がないとのことですが、周りと差をつける履歴書作成のコツは?
基本的には、こちらが用意しているフォーマットをダウンロードしていただき、記入してもらえれば問題ありませんが…PCで打ち込みしたものは一目置かれるかもしれません。
――手書きじゃなくても良いのですね。一目置かれる理由は?
以前は「手書きが絶対!」「手書きこそ気持ちが伝わる」とか、「手書きこそ正義」のような風潮がありました。ところが、今は集客やサロン情報はSNSで発信するなど、ネットが主流の時代です。時代的にもPCに強かったり、得意だったり、そういった人がサロンに一人いるだけで頼もしいと感じます。
そもそもViolet自体、リアルとデジタルを融合したスマートサロン化を目指しているため、以前のように美容師だけできていれば良いという考えではなく、美容師としての技術に加えてウェブ知識や才能を求めている傾向があります。今までの方法だと、努力と時間をかければある程度みんな同じくらいのレベルを身につけられましたが、ウェブはそうもいかない部分もあると考えているので、打ち込みで提出いただいた場合は、ウェブリテラシーに富んでいると判断できて、悪い印象を持つことはないですね。むしろ周りと少しの差をつけられるポイントだと考えています。
――履歴書で特に重要視している項目は?
やはり、志望動機でしょうか。次に自己PR、目指したい美容師像を見ています。
――どのような志望動機が望ましいでしょうか?
フォーマット過ぎない内容が良いですね。
例えば、理念に共感したことが志望したきっかけならば、プラスαがあると良いです。「理念に共感しました」のあとに続く内容次第で、熱意がだいたい分かってしまうんです。どこかのテンプレートを引用していたり、ただ理念を褒めたりするだけだと、期待度は当然低いと思ってもらって間違いないです。
志望動機で悩んだ場合は、その下に続く項目の「理想の美容師像」の欄を読んで補完しています。理想の美容師像があってサロン選びをすると思うので、入社したい理由に直結すると捉えています。
――そのほか、気にして見ている項目は?
履歴書1枚目の「免許・資格…」の欄です。付随して、アルバイトの経験の有無もチェックしています。
重要視しているのは、資格を習得することになった経緯。自分が好きで興味のある分野だから習得していても好印象ですが、学校が推奨していたり、美容業界で必要だったり…自分の意志とは別に資格習得の経験がある人は、より印象が良いですね。これは、アルバイトについても同じ。経験をしている場合は、どんな目的でどういうアルバイトをしたのかを面接で必ず聞いています。
資格を持っていないから・アルバイト経験がないから不合格、ということはありませんが…一つでも書かれていると確実に注目度は上がりますね。
ほかには「自分ならでは」の武器を知っておくのも手。小さなことでも注目して磨き上げる努力をしていれば、アピールになり、評価が得やすくなると思います。
思っていることしか書かないことが面接への期待度につながる
――反対に、履歴書で期待できないと感じる人は?
簡単に言うと、今まで話した好印象の真逆ですね(笑)。
フォーマット過ぎたり、心が感じられなかったり、先生のアドバイスだと分かる志望動機…とにかく普段から思っていないことは書かないのが無難かなと。自分の気持ちとリンクしていない人は、その違いが伝わってきてしまうんです。
しっかり明確にVioletが良い理由が記されている履歴書が好ましいです。
――自分の意志がしっかり込められている内容が評価されるのですね。
重ねてになりますが、どの項目もプラスαされたものを求めています。
Violetがよく掲載いただいている雑誌があり、そこに自分も掲載されることが目標と書いている人がいたのですが、ただ載りたいというのは誰でも言えますよね。大事なのは、掲載されたい理由とそう思った背景。過去にVioletが掲載されたものを例に挙げている人はしっかり見ているんだと分かって、印象が良いです。
好感が持てる履歴書作成のポイント
1.時代やサロンの意向に沿った提出方法を見つける
2.今までの経験は全て自分をアピールするポイントとして全面に打ち出す
3.フォーマットに頼らず、プラスαに深みを持たせる
取材・文/東 菜々