自由を追い求めるのではなく、自由を選択できる「自立」した人材を育てていきたい【PARK代表 窪谷初美さん】#2
原宿で10年以上キャリアを積み、2020年11月にPARKをオープンさせた窪谷初美さん。元同期でレセプションの水戸怜子さんとタッグを組み、異例の女性コンビでサロンを立ち上げたことも話題に。
後編では、そんなPARKの魅力やチャレンジをさらに詳しく。窪谷さんが考える美容師のこれから、働き方や教育についてもお聞きしました。
お話を伺ったのは…
PARK代表 窪谷初美さん
北海道の美容専門学校を卒業後、上京して都内サロンに勤務。10年後に独立し、マンツーマンのサロンを立ち上げる。2020年8月、元同僚の水戸怜子さんとともに株式会社LANDを設立。同年11月、原宿にPARKをオープン。
カウンセリング重視で一人ひとりにベストなヘアを提案。ナチュラルな中にもひと味プラスした抜け感のあるスタイルに定評があり、女性客のみならずメンズカットのリピーターも多い。
新しいことへのチャレンジ、社会貢献はずっと続けていきたい
――PARKのコンセプトを教えてください。
「大人のプライベート空間」です。
まず技術があるのは当たり前のこと。来ていただくお客様は、自分磨きしたい人もいれば、気分転換を求めている人、ヘアスタイルで変わりたい人など、目的はいろいろだと思います。
せっかく原宿まで足を運んでもらうのだから、価値あるサービスを提供したいし、ほっとくつろげる時間であってほしいです。
20代、30代のお客様が多いですね。男女比率は同じくらいか、女性がちょっと多いくらいかも? 前サロンで男性のお客様も多く担当していたので、今尚たくさん来ていただいています。
――2020年のオープン時はコロナ真っ只中……。次第に緩和されていく中で、集客や打ち出しには変化はありましたか?
うちはスタッフが全員女性なんです(たまたまですが)。女性スタッフがいいと言ってくださる方もいますし、そんな中で男性のカットも得意というのが意外と珍しいのかも。そこは一つの強みかもしれません。
――いろんな挑戦もされてきたそうですね。
起業したからには、新しいことをやりたいと常に思っています。会社である以上、社会貢献もしてきたいです。
コロナの時は、渋谷区のボランティア団体に登録しました。実際の活動には結びつかなかったものの、そういった場面で美容師として、サロンとして社会貢献できたらうれしいです。
――メニューとしては何かありますか?
ヘアドネーションはメニューに取り入れており、売り上げの一部を寄付しています。
興味がある人は結構いると思うのですが、髪の長さや状態に規定がいろいろあったりするので、それを分かりやすくしてメニューの一つに。
最後にアンケートを書いてもらい(任意です)、レターパック付きで送るところまでフォローできるようにしています。
――「パーソナルカラー診断付き」のメニューも気になります。
パーソナルカラー診断士の資格を取って、メニューに導入しています。実際にカラーのドレープをあてながら、髪や肌、目の色素と調和する色合いを診断。
ヘアカラーはもちろん、パーソナルカラーを踏まえてヘア、メイク、ファッションのバランスをトータルでプロデュースすることが目的です。
――スタイルとしてはどんなものが人気ですか?
「ナチュラルだけど、さりげなくお洒落感のある」スタイルが受けているようです。基本ベーシックなスタイルだけど、若干カジュアルダウンさせる仕上がりがポイント。
PARKに来ればどこか少し変われるんじゃないか、というお客様の思いに応えるスタイル提案を心掛けています。
その辺のさじ加減は、やっぱりカウンセリングがものを言うのではと思うので、カウンセリングの時間はとても大切にしています。
多様性の時代だからこそ「自立」した人材が必要とされる
――スタッフの教育面について。どんな人材を育てていきたいですか?
まず休みがちゃんと取れる、就業時間内で終わる、残業代、有給……働く環境の基本的なところは備わっていて当然なんですよね。
働く環境にそういった心配がなく、「自立できる」人材を育てていきたいと考えます。
多様性が尊重される時代、自由を求めて潰れていく人も多いなと感じています。技術的にそこまで成長できていない状態で、社会についても理解できていない、そういう段階でフリーランスに転向してうまくやっていけなくなる。
行き詰まって、元の会社に戻るような話もよく聞きます。「フリーランスからの受け入れ体制はありますか?」と、サロンに問い合わせてくる人も。
――いわゆる出戻り状態!?
そんな人が増えているのは悲しいです。社会の仕組みや土台をもっと勉強して固めた上で、そこから自由を選べる人になってほしいですね。
それが本当の意味での「自立」なのではないかと。お店に所属するのでも、フリーランスになるとしても、自立した人間であってほしい。
私はこれから技術だけでなくそういう部分も教えていく、育てていく立場なのかなと思います。
頑張ってきたスタッフが年を重ねても働き続けられる環境作り
――サロンの働く環境について、目指すところは?
今まで頑張ってきてくれたスタッフたちが、年を重ねてもずっと仕事を続けていける環境作りをしていきたいです。
妊娠・出産を始め、副業との兼業、もう少しゆっくりしたペースで続けていきたい……長く美容師をやっていると、いろんなことがあると思うんです。
そういった中で、環境を大きく変えるというのは本当に大変だから、環境を変えず働き方をコントロールすることで辞めずにうまく続けていけるようなシステムを作りたいです。
――女性だと出産を機に休職して、なかなか戻りずらいという声はよく聞きます。
それでフリーやシェアサロンを選ぶ人もいますが、自分が働いてきたサロンで、一緒にやっってきたメンバーと働き続けられたら、というのが本来は理想ではないでしょうか。
実績を残してきたスタイリストであれば顧客はいるので集客の必要はあまりなくて、同じ社内だったらスタッフ同士のやりとりや調整もぎくしゃくしにくいはず。
社内でそういう環境を整えていくことは、スタッフにとっても会社にとってもいいわけです。もちろん、お客様にとっても。
結果を残してくれたスタッフ、頑張ってくれたスタッフには、働き続けられる場所をしっかり提供したいという思いがすごく強いです。それが会社としての役割だとも思っています。
窪谷さんがオーナーとして大事にしている3つのこと
1. 新しいことを取り入れていく姿勢
2. 「自立」したスタッフを育てる人材教育
3. 年を重ねても働き続けていける環境作り
取材・文/青木麻理(tokiwa)
撮影/高嶋佳代