理学療法士、ウェルエイジング……ヨガを軸に「よりよく生きる」を伝えていきたい【ヨガインストラクター・理学療法士 堀川ゆきさん】#2
ヨガインストラクターになったものの自分に自信の持てなかった堀川さんは、理学療法士の資格を取ることで、自分らしいヨガの教え方を確立しました。さらに大学の研究室に入りアンチエイジング研究の第一人者の先生に師事したりと、常に学ぶことを続けていきます。後編では、堀川さんに現在から今後の展望までを伺っていきます。
お話を伺ったのは…
ヨガインストラクター・理学療法士 堀川ゆきさん
舞台役者を目指し上京後、ヨガに出会う。心と体が救われたことをきっかけにヨガインストラクターになることを決意。講師をしながら身体の構造をさらに深く学ぶため理学療法士の資格を取得。さらに、アンチエイジング研究の権威でもある坪田一男氏の元で指導を仰ぐなど、ヨガによるウェルエイジング(心身ともに魅力的に年齢を重ねていくという生き方)を追求し続けている。
専門学校に入学してから考えの甘さに気付かされた
――ヨガを深めることを目的として理学療法士の学校に入った堀川さんですが、実際はとても大変だったそうですね。
今思えば当たり前ですが、理学療法士の学校に通う人はみんな理学療法士になることを目指しています。一方私はというと、「ヨガインストラクターとしての知識の一部になればいいな」という軽い気持ちで入学。同級生たちとはモチベーションがまったく異なっていました。
理学療法士は医療現場の人材で、人の命に携わる仕事。資格を取るためには4年かかり、学問はもちろんハードな実習もあります。最初は「こんなはずじゃなかった」と思うほど大変でした。
――堀川さんは夜間学校に通われていたんですよね。
はい。昼間はヨガインストラクターの仕事をして、夜から専門学校に通っていました。この生活をしていた4年間はお友達とディナーに行くこともできませんし、デートや恋愛をする時間すらありませんでした(笑)
医療、フィットネス、美容は地続きだということを知る
――専門学校で学んだ4年間で、意識が変わったことはありますか?
理学療法士は医療分野、ヨガはフィットネスや美容の分野と別の世界のものととらえている人が多いと思います。実際私もそうでした。
でも健康と美容は地続き。リハビリの動きの中にもヨガに似たものはたくさんあるし、ヨガも単なるフィットネスではなく、病気にならない体を作るためや、病後の体をサポートするものとして活用されています。
共通する部分がたくさんあるんですよね。
――理学療法士の資格を取得したあとはどうされていましたか?
資格を取っただけでは不十分で、経験を積む必要があると思い、病院で理学療法士として3年間働きました。
その3年間は、本職がヨガインストラクターということは忘れて、理学療法士として患者さんと向き合い真剣に仕事に取り組みました。ヨガに逃げないようにしていましたね。
アンチエイジングの権威・坪田一男氏に師事
――堀川さんは、理学療法士の専門学校在学中に、慶應大学にある坪田一男慶應大学名誉教授の研究室でアンチエイジングに関する研究もされていたそうですね。
はい。専門学校を卒業してから入ればいいのに、と周囲からも言われましたが、どうしてもすぐに学びたくて(笑)
坪田一男先生は、眼科医でもある一方で、抗加齢専門医(アンチエイジング専門医)でもある方です。先生のアンチエイジングに関する本を読んで興味を持った私は、勉強をして先生の研究室に入りました。
――坪田先生の研究とヨガになにか共通するものを感じたのですか?
そうですね。その頃の私はヨガとアンチエイジングの関係についても興味がありました。研究室で学んでいる間に、抗加齢指導士の資格も取得しました。
アンチエイジングというと「年齢に抗う」という意味合いになりますが、私が目指したいのは「ウェルエイジング=上手に年を取っていく」ということ。
若いだけが美しさの基準ではありません。加齢を受け入れながら心身ともに美しくいられる方法を、ヨガを通じてお伝えしていけたらと思っています。
子育てをしながら念願だった本を出版
――現在は二人のお子さんの育児をメインに生活をしながら、念願だった書籍も出版されたそうですね。
コロナ禍に生まれた二人の年子育児に追われる毎日です。出産がコロナ禍だったこともあり、産後も本格的にヨガのレッスンを再開できず、今は育児のかたわら週に1回理学療法士として働き、ヨガやピラティスの講師としての仕事をしています。
そして昨年、念願だった本を出すことができました! ヨガの専門サイトで5年ほどコラムを書いていたのですが、それを見た出版社の方からお話をいただき実現しました。
内容は、姿勢の大切さから始まって、体を動かすことの大切さ、運動不足や運動嫌いの人でもできる簡単なエクササイズが載っているものとなっています。
――最後に、今後の目標を教えてください。
現代の子どもたちはスマホやゲームをする時間が増え、姿勢が悪い子どもが増えています。夢は、全国の小学校や中学校に出向いて「正しい姿勢と歩き方」について教えること。歩くことは人間の動作の基本ですし、キレイな姿勢は見た目の美しさにもつながります。
あとはウェルエイジングを普及するためのサロンを作れたらいいな、と思っています。ヨガはもちろん、体の構造やアンチエイジングの知識など私が伝えられることを、ひとりひとりの悩みと向き合いながら丁寧に伝えていける場所を作りたいですね。
堀川ゆきさんの成功の秘訣
1.尊敬する人を3人見つける
2.自分だけの強みを見つけて手に入れる
3.勉強することを楽しむ
取材・文/皆川知子(tokiwa)
撮影/ワタナベミカ