『従業員が長続きしない・・・』業界を引っ張るリーダーの言葉は重くて鋭い!
おシゴトをしていると避けられないさまざまな試練。新人には新人の、トップにはトップの困難があるはず。そこで「迷える美容業界相談室」と題して、いろんな人たちの悩みに「フルーツルーツ」の榎戸さんがお答えします。
業界を引っ張るリーダーの言葉は重くて鋭い! 今回はどんな経営者でも必ず直面する『従業員が長続きしない』ことについて話してもらいました。
お悩み
うちのヘアサロンはスタッフが長続きしません。辞めてしまう子が多いです。親切、丁寧に教えているつもりなんですが……。どうしたら辞めないようになるのでしょうか?(16年目・ヘアサロンオーナー)
「このお悩みはビューティに限らず、いろんな職種に関係することだと思います。僕はもともと経営コンサルタントの仕事をしていたので、いろんなサロンを見てきました。サロン側に問題がある場合もあれば、入ってくる従業員に原因があるケースもあります。もちろん両方の場合もあるので、一概にこれだと言い切れないのが正直なところです。
今は、エステティックサロンの経営者なので、その目線から答えさせていただくと、年々、新しく入ってくるスタッフのメンタルが変わってきていると思っています。昔みたいにガンバリズムや精神論など、そういうものが通用しなくなっていますよね。今の経営者は昔のやり方で育てられた人たちだから、今のスタッフもそのように育てようとするんですね。それをやってしまうと、『ブラック』だなんて言われるわけです。経営者にとっては大変な時代だと思いますね。まずは、しっかり働きやすい環境を整えるということが必要だと思います」
――働きやすい環境とは具体的にどういうことでしょうか?
「コミュニケーションだと思います。労働条件や就業規則などの良し悪しではなく、その部分がきちんと明確になっているかどうか、そこに納得性があるかどうかが大事だと思います。結局、ここをあやふやにしてスタートしてしまうと、あとでギャップが生まれて、『聞いていないです』とスタッフに不信感が生まれて、辞めてしまうんですね。美容業界は、そういうところを曖昧にしているサロンがまだまだ多いのかもしれません。あとは理念とビジョンだと思います」
――ちなみにひとり従業員を雇うとしたら、どのぐらいのお金がかかるんですか?
「例えば、額面のお給料が20万円だとして、健康保険、年金、雇用保険、労働保険、交通費、その他諸々が加わってくるので、さらに約10万円程度かかります。従って、トータルでひとり当たり、月30万円ぐらいでしょうか。新人の場合だと、最初から売り上げを作ってくれるわけではなく、ヘアサロンならアシスタント期間も長いので、お客さまにつけるようになるまでは投資的な意味合いですよね」
――実際に講演に行かれて、『従業員が続かないんです』と、相談されることも多いのではないですか?
「そうですね。経営者は自分と同じレベルをスタッフに求めてしまいがちなんです。つまり、コピーを作ろうとするんですね。バリバリ仕事ができるから経営者になっているのであって、そこまでのレベルを求めてしまうのは無謀なことです。そうなると結局、経営者側はストレスが溜まり、従業員側はプレッシャーを感じて辞めてしまいますよね」
――『コピーを求めない』。分かりやすいです。
「スタッフと自分は違う。それぞれに長所があり、役割がある、という気持ちを持つことが大切だと思います。思い通りに動いてくれない、思うようなスピードで成長していない、何回言っても覚えない、そういうところでのイライラをグッとこらえる。今の経営者に求められるのは、ガマンということではないでしょうか」
――スタッフをうまく成長させるコツみたいなのってあるんでしょうか?
「僕もこの部分で何度も失敗してきて、ここ2、3年で考え方を変えました。最初はそのスタッフのレベルより少し上の目標設定をさせて、頑張ってもらうという方法を取ってきました。
成長意欲の高い子には効果的で、それが僕のなかでの成功体験だったんですね。しかし、ここ2、3年の新卒生ぐらいから、うまくいかなくなってしまいまして。最近はスタッフ一人ひとりの個性に寄り添っていくようにしています。そういうやり方じゃないと、うまくいかないと感じています。こちら側が変わっていく姿勢が大事ですね」
――寄り添うと甘やかすは、その区別が難しそうな気がします。
「難しいですね。言うべきことは絶対に言ったほうがいいんですが、そのときにその子を否定しないということだと思うんです。たとえ理解を超えた答えが返ってきたとしても、感情的になって『何、言っているんだ』とか、怒って『違うよ』と言うのではなく、『そういう考えもあるんだ』と1回飲み込んでみる。すごく時間がかかってしまうことなんですが、そうやっていくしかないんだなと思います。スタッフ教育って本当に時間がかかるものです」
――経営者の意識改革が必要ということでしょうか?
「そういうことだと思います。失敗して試行錯誤しながら模索し、また失敗して学んでいくというところではないでしょうか。経営にはマーケティングとマネージメントがあって、僕はコンサルタント会社時代、マーケティングは時代によって変わってくるものであって、マネージメントは変わらないものだと思っていました。今はこれすら変えていかなくてはならないということを、ここ最近、感じます。だからこそ、経営はおもしろいと思うんですけどね」
Profile
榎戸淳一さん
(株)ES-ROOTS代表取締役社長
船井総合研究所時代に社内にエステ業界のコンサルティングを立ち上げ、実績を残す。退社後、(株)ES-ROOTSを設立し、オーガニックコスメエステティックサロン「フルーツルーツ」をオープン。2年後に第2回エステティックグランンプリ、モデルサロン部門、フェイシャル技術部門で全国1位受賞。著書に「サロンはスタッフ育成で99%決まる」「愛されるエステティシャンの秘密!」などがあり、業界を牽引する役割を果たしている。
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