今やSNSの活用は集客に切っても切り離せない関係になったいる!
おシゴトをしていると避けられないさまざまな試練。新人には新人の、トップにはトップの困難があるはず。そこで「迷える美容業界相談室」と題して、いろんな人たちの悩みに「フルーツルーツ」の榎戸さんがお答えします。
業界を引っ張るリーダーの言葉は重くて鋭い! 今回はどんな経営者でも必ず直面する『従業員が長続きしない』ことについて話してもらいました。
お悩み
個人でエステ店をやっている者です。2年経営しているのですが、売り上げがなかなか上がりません。広告も出したことがあるのですが、集客にはさほど繋がりませんでした。他にやるべきことがあれば教えてください。(2年目・エステサロン経営)
「昔と変わってきているのが、広告を出しても新規のお客様がたくさん来る時代ではなくなってきているという点です。この流れはもう止められないですよね。大切なのは、今来ているリピートのお客さまにどれだけ長く通ってもらえるかということ。もっというと、そこにどれだけ時間とお金をかけられるか、ということだと思っています。ずっと来てもらえるような仕組み作りをしたほうが、お店は安定しますし、実は利益も出るんです」
――急がば回れ的なイメージでしょうか?
「そうです。時間はかかりますが。そうすれば新規集客ための予算を減らせますから、お金もかからなくなります。お客さまが長く通ってくれると従業員もうれしいので、みんなのやる気もあがって、辞める人も減り、結果的にお店がいい方向へと向かっていくんですよね」
――リピーターを離さない仕組みとは、具体的にどのようなものがあるのでしょうか?
「そのお客さまに一生懸命向き合うということはもちろん、例えば、来店するとポイントが貯まるようなシステムを作るとか。うちの店ですと会員制になっていて、何度も来てくださったらポイントが貯まって、ゴールド会員にステップアップして特典がもらえるというのをやっています。こういう仕組みがあるとお客さまは通ってくれますし、たくさん通ってランクが上がったら、もったいないから他に行かなくなるんですよね。あと、うちでは過去1年間に1回でもおいでいただいたお客さまに、サロン新聞のようなものを毎月配布しています」
――そのサロン新聞とはどのような内容なんですか?
「美容コラムやキャンペーンなどを載せている、オリジナルの紙媒体です。意外とそこからも集客できるので、大きく広告を出すよりも、こちらにお金をかけたほうが負担も少ないので、効率がいいんです」
――リピーターのお客さまが、新規の人を呼んでくるということもあるんですか?
「紹介はよくありますよ。紹介で来てくださった方は定着しやすいですね。感覚的になってしまいますが、定着率は広告を見て来店した方だと2割、紹介となると8割~9割ぐらいではないでしょうか。HPで5割ぐらいです。圧倒的に口コミは定着しやすいですね。自分の信頼できる人からの推薦だと絶対的な前提があるので、そこはやはり大きいですよね」
――先ほどのポイントの話ですが、家電量販店と似ていますね。
「そのとおりです。僕は航空会社からヒントを得ました。僕はJAL派で、JALのマイレージを貯めているんですが、貯まるとランクが上がるんですよ。そうすると事前搭乗できたり、ラウンジが使えたり、特典がついてくるんです。スカイマークやピーチのような格安航空機が出てきても、やっぱりJALを使ってしまうんですよね。せっかく苦労してポイントを貯めたのだから、手放したくないという心理が働くんです。特にエステ店は、次から次へと新しいお店が出てくるので、競争が激しい。しかも女性は、いろんなところへ行ってみたいという気持ちが強いのでなおさらです。それでも来店し続けてもらうためには、何かお得だと思われるようなことをしないといけないと思います」
――売り上げをあげるとなると、他店との差別化は大切になりますね。
「本当にそうだと思います。しかし差が見えにくいんですよね。どこのサロンも同じに見えてしまうというか。最初はどこも明確なコンセプトで始めるんです。でも、なかなか売り上げがあがらないと、売れている機械や商品を扱い始めるんです。すると、気づけばどのサロンも同じことをやっているという。あとは、ニーズに応えようとするあまり、いろんなことを勉強して、どんどんメニューが増えていくみたいこともあります。その結果、特徴のないサロンになっていく。うちはこれだというものを打ち立てないと、お客さまが来る理由がないというのは確かなんです」
――本来はラーメン店なのに、どんどんメニューが増えていって、何屋さんなのか分からなくなるような。
「そんな感じです。よく選択と集中といいますけど、逆に何を捨てるかですよね。僕もなんでもかんでもやりたがる性格なんですが、そうすると特徴がなくなって、力も時間もお金も分散して、結局、中途半端になってしまうんですよね。ガマンです、そこは」
――捨てるときは恐怖が伴いそうですね。
「最初は不安だと思いますが、それでそんなに売り上げが下がらないんだなって分かると、自信がついて前向きになれる。不思議なもので、捨てても、実はそれほど変わらないんですよ。とにかく、そのお店の強みを作ることが大切です。それを求めてお客さまは来店しますので。何を捨てるか分からない場合は、お客さまからアンケートに取ることをおすすめします。それが裏付けになりますから、必要なもの以外は捨てやすいと思います。うちは毎回アンケートを取っていますが、取らないと、打つべきときに手を打たなかったり、手の打ち方を間違えたり、そういうことが起こり得ると思います。相談者の方には、ぜひ頑張ってほしいと思います」
Profile
榎戸淳一さん
(株)ES-ROOTS代表取締役社長
船井総合研究所時代に社内にエステ業界のコンサルティングを立ち上げ、実績を残す。退社後、(株)ES-ROOTSを設立し、オーガニックコスメ&エステティックサロン「フルーツルーツ」をオープン。2年後に第2回エステティックグランンプリ、モデルサロン部門、フェイシャル技術部門で全国1位受賞。著書に「サロンはスタッフ育成で99%決まる」「愛されるエステティシャンの秘密!」などがあり、業界を牽引する役割を果たしている。