壁にぶつかり、消せなかった「辞めたい」気持ち。お客様と先輩の声に励まされ、美容師を楽しめるまでに「ico」竹谷美乃里さん

LA発祥のケラチントリートメントを導入しており、「自分史上一番の髪質を叶える」サロンとして話題を集める美容室「ico」。さらにハイトーンやインナーカラー、ブリーチなしのグレージュカラーなど、デザインカラーの幅広さも強みのサロンです。

今回お話しを伺うのは、美容師歴12年、「ico」に入社して4年目となるスタイリストの竹谷美乃里さん。小学生のころから美容師に憧れ続け、その夢を叶えたものの、入社から1年間は毎日「辞めたい」と思っていたといいます。

そんな竹谷さんがここまで長く美容師を続けてこられたのは、先輩からの励ましとお客様の存在が大きかったそうです。

お話を伺ったのは…

竹谷美乃里さん

「ico」スタイリスト

東京都出身。国際文化理美容専門学校を経て美容師免許を取得。原宿のサロンで経験を積み、2021年に「ico」に入社。外国人のような地毛風くすみベージュで人気を集める。現在は5歳の子どもを育てながら、時短勤務で活躍している。

インスタグラム

ほこりひとつ残さない掃除。社会人としての基礎を叩き込まれた専門学校時代

厳しい校風のなかで社会人としての基礎を学んだという竹谷さん

――美容師になろうと思ったきっかけから教えてください。

とても単純なのですが、美容師さんの存在に憧れたというのが一番大きな理由でした。私はわりと幼いころから美容室で髪を切ってもらっていて、美容師さんが髪を切る姿を見るのが好きでしたし、腰元にシザーケースをつけている姿がすごくかっこよく見えて。気づけば小学生のころから「美容師になる」と心に決めていて、小学校の卒業文集にも「夢は美容師になること」と書いていましたね。

もうひとつ、大ファンだった浜崎あゆみさんのヘアメイクをいつか担当したいという夢も、美容業界へ進むことを後押ししてくれました。

――美容専門学校時代はどんな経験を?

私は国際文化理美容専門学校という、とても厳しい学校に通っていました。先生にきちんとした敬語を使う、遅刻をしたら授業を受けさせてもらえない、掃除の後には先生が指でほこりを確認し少しでも残っていればやり直し。今思えば基礎的なことですが、その徹底した指導のおかげで鍛えられました。

そこで学んだことは、社会人として生きるための基礎。大変でしたが、今では大きな財産になっています。

――専門学校時代に力を入れていたことは?

技術練習です。ウィッグ代がいくらかかったのかわからないほど、毎日練習していました。負けず嫌いな性格なので、「絶対に上手くなる」という気持ちを胸に取り組んでいましたね。

シャンプー技術の壁。自信を失いかけた新人時代

最初のサロンに入社した当初、チェック項目の多いシャンプー技術につまずいたという竹谷さん

――1社目のサロンはどのような基準で選びましたか?

先ほどもお話ししたようにヘアメイクになるという夢もあったので、当初は都内にあるヘアメイク事務所に内定をもらっていました。ただ昼夜関係なく呼びだしがあれば仕事に行くというような労働体系だったり、拘束時間が長いと聞いたりして、私には無理なのではないかと不安が募ってしまって。

またヘアメイクとして活躍するためには美容師の経験も積んでいた方がいいのではないかとも思い、内定を断って美容室へ就職することに決めたんです。就活を始めたのがギリギリだったため、サロンに内定をもらったのは卒業後のことでした。

1社目に就職したサロンは、当時スタッフが5名ほどと、とにかくアットホームでした。そんな雰囲気に惹かれ、お客様との関係性もしっかり築けるのではないかと思い、就職を決めたんです。

――入社後はどんなことを感じましたか?

入社から1年ほどはずっと辞めたいと思っていましたね。最初の壁は、シャンプー練習。当時所属していたサロンでは、メンズ、ショート、ミディアム、ロング、カラー流し、パーマ流しとシャンプーの技術が細かく分類され、それぞれにテストがあったんです。しかも教育担当の先輩とオーナーの2段階のチェックをクリアしなければ先に進めない。すべて習得するのに約3ヶ月かかり、私は美容師に向いていないのではないかと自信を失ってしまいました。

――そうだったのですね。

さらに当時の営業時間が夜遅くまで及んでいたため、疲れ果てていて、友達に遊びに誘われても遊びに行くこともできないほど。当然といえば当然ですが学生時代とは違い、お客様に接することの責任感も感じていましたし、環境の変化も苦手でいつも緊張していました。ストレスから食欲がなくなり、ご飯を食べるのもやっとという毎日でした。

――その時期をどのようにして乗り越えたのですか?

先輩とお客様の存在が支えになっていました。私より10年ほど先輩の女性スタイリストがいて、いつもフォローをしてくれたんです。さらに当時はアシスタントでしたが、お客様が私のことを覚えてくださったり、シャンプーを褒めていただけたりするとうれしくて。辛いことがあっても、予約表に好きなお客様の名前を見つけると、「今週会えるんだ、じゃあもう少しがんばってみよう」と思えたんです。

スタイリストになる恐怖を乗り越えて、デビューへ

デビューへの後押しをしてくれたのは、前社の先輩であり、現在は「ico」のオーナーを務める畑中さんの存在だったという

――その後、スタイリストデビューはスムーズでしたか?

いいえ、スムーズではありませんでしたね。当時所属していたサロンは、技術のカリキュラムを終えたら「集中カリキュラム」というものを受けるとデビューできる仕組みだったんです。集中カリキュラムというのは半年間、朝と夜にモデルさんを使って施術の練習をするというものでした。

とにかくスタイリストになると責任が大きくなるのが怖いと思っていて、一度はその集中カリキュラムを受けることを拒否してしまったくらいです。

――そこからどのように集中カリキュラムを受けることを決意したのですか?

一番大きかったのは、当時一緒に働いていた「ico」のオーナー畑中の存在です。畑中とは同じ会社の別店舗で働いていたのですが、私が当時所属していた店舗で人間関係がうまくいっていないことやスタイリストになる不安があることを相談したところ、いろいろと話をまとめてくれて。畑中が所属している店舗に異動させてくれたんです。そして「僕が面倒を見る」と言ってくれました。そこまでしてくれたのだから、自分もがんばらなくてはいけないと思ったんです。

集中カリキュラムはハードでしたが、無事にやり抜き、スタイリストデビューを果たすことができました。

――スタイリストデビューをしてからどんなことを感じましたか?

最初は責任の重さにプレッシャーを感じましたが、やがて仕事の楽しさややりがいを実感できるようになりました。デビューから1年ほどで妊娠し産休に入りましたが、その直前はようやく美容師の喜びを感じられるようになっていました。


後編では、「ico」へ転職してさらに充実した日々を送る竹谷さんに、仕事のやりがいについてお聞きします。また新人時代に大きな壁を経験した竹谷さんだからこそ語れる、「諦めない」ことの大切さについても伺いました。


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ico
住所:東京都渋谷区神宮前6-10-4COMS神宮前2F

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