最後まで自宅で過ごせるように。ある老夫婦と歩んだ8年間と、たどり着いた信念【治療・リラクゼーション・歯科業界のお仕事 笠井将也さん】#2
治療、リラクゼーション、歯科業界など、人々の痛みや不調に寄り添う仕事の魅力を紹介する本企画。今回お話を伺ったのは、「整体oasis」の院長で理学療法士の笠井将也さんです。
前編では、理学療法士を目指したきっかけや国家試験取得までの道のり、最初に勤務した整形外科での経験について伺いました。
後編では、訪問リハビリの現場でぶつかった壁や、独立したあとの試行錯誤について伺います。
「整体oasis」では、生活習慣や栄養まで含めて体を見ることで、トータル的に原因を探ることを大切にしています。その考えに至るまでは、手探りで進む時期もあったそうです。
さらに、8年間に渡って担当したある老夫婦との出会いが、笠井さんの仕事観に大きな影響を与えました。
今回、お話を伺ったのは…
笠井将也さん
整体oasis院長/理学療法士
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大学で理学療法士の資格を取得後、整形外科や訪問リハビリの現場で幅広い症例を経験。2019年に「整体oasis荒川院」を開業し、2025年には文京院を開院。「理学療法士は人の幸せを守る仕事」という信念のもと、筋肉、骨・関節、自律神経、内臓、栄養、生活習慣の6つの側面から不調の原因を探るトータルアプローチを実践し、お客様から信頼を集めている。
訪問リハで直面した「温度差」という壁。施術より先に関係性づくり
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――その後は、訪問看護の現場に転職されたそうですが、きっかけは?
病院で理学療法士として働いていると、待遇面が必ずしもいいとは言えない現実があって。将来設計を考えたとき、このままでよいのかという思いがあったことがひとつの理由です。
もうひとつは、病院に自力では来られないような重症の患者様にも対応できる力を身につけたいと考えたからでした。
――病院の現場とはどのような違いがありましたか?
大きな違いは、患者様が必ずしもリハビリに前向きではないケースがあるということでした。
要介護認定を受けている方のなかには、ご家族やケアマネージャーの勧めで始める方も多く、「本当はあまり、リハビリをやりたくない」という状態からスタートすることもあったんです。
さらに、ご自宅は患者様の生活の場。病院では施術着を着て、先生という立場で見られますが、ご自宅に伺うとこちらはゲストになります。「どこぞのお兄ちゃんがきたぞ」という感じで、不安そうな方も多々いらっしゃいました。
そのなかでも信頼関係を築き、体をいい方向に導くことの難しさを感じました。
――その壁はどのように超えたのですか?
まずはコミュニケーションを重視しました。すぐに施術に入るのではなく、名前を名乗り、あいさつをし、困っていることを聞く。リハビリはあくまで無理のない範囲からスタートすることを大切にしていました。
根気強く関わりを続けていくうちに、寝たきりの方が外を歩けるようになるまで回復したこともあります。リハビリに前向きではなかった方が笑顔を取り戻していく姿を見られたことは、私の大きな財産になっています。
改善しない症例が教えてくれた、新たな視点

――その後、独立されたわけですね。独立は当初から目指していたのですか?
理学療法士になった当初は考えていませんでした。ただ、将来について現実的に考えるようになると、頭の片隅に独立という選択肢が浮かぶようになり、臨床経験が10年を超えたころに独立を決めたんです。
勢いで独立したものの、最初は本当に手探りで。お客様に知ってもらうために特定の技術に特化した方がいいと思い、ひざや肩の専門性を打ち出していた時期もありました。
ただ途中で、僕の強みは不得意分野がないことだと気づいたんです。現在は専門性を絞らず、筋肉や骨・関節、自律神経に加え、内臓や栄養、生活習慣まで含めた6つの側面から体をみるトータルアプローチを行っています。
――栄養や生活習慣の改善もアドバイスするのですね。理学療法士として働いているとそのような知識を得られるものなのですか。
いえ。人によると思いますが、そこまでの知識がない方がほとんどではないでしょうか。僕は臨床経験のなかで、筋肉、骨・関節、神経だけを診ていても改善しないケースに何度も出合い、どうすればよくなるのかを考え、学んでいくうちに身につけていきました。
たとえば、腰痛がなかなか改善しない方の生活習慣を伺うと、飲酒量が多いケースもあるんです。アルコールは肝臓で分解されるため、体への負担が蓄積しやすいと考えられています。
独立後にそうした知識も学び、施術とあわせて生活習慣の見直しを提案することで、改善につながったケースもありました。
忘れられない8年間。理学療法士と患者の枠を超えて
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――忘れられない患者様はいらっしゃいますか。
訪問リハ時代に出会った、80歳を超えた老夫婦のことは生涯忘れません。独立後も訪問を続け、約8年間関わらせていただきました。その関係性のなかで「健康は幸せの土台」という理念に至るきっかけをくれたんです。
――どんな関わりをされたのですか?
奥さんは膝や腰が悪く、ご主人がパーキンソン病という状態で、本来ならふたりで自宅暮らしを続けるのは難しい状況でした。ただ私たちのリハビリを通じて、最期の方まで自宅で動ける状態をキープすることができたんです。
その方たちは、ご家族が頻繁に訪れて面倒を見てくれるような感じではなかったので、僕らが来ることを本当に楽しみにしてくれていて。理学療法士と患者様という関係を超え、孫のように思ってくれていましたし、仕事帰りにみんなで一緒に食事へ行くこともありました。
そんな関係性を築くうちに、健康を害すると生活や人間関係まで揺らいでしまうことがあるという現実を目の当たりにして。健康は幸せの土台になる、そのもっと前の段階で幸せの土台を守るのが自分の仕事だという信念が形づくられたんです。
――最後に、理学療法士を目指す方へアドバイスをお願いします。
理学療法士は本当にやりがいのある、素晴らしい仕事だと思っています。
でも、国家資格を取ることはゴールではなく、あくまでスタートです。学校や先輩が教えてくれるのを待つのではなく、「目の前の患者さんを救いたい」という強い主体性を持って、自ら学び、技術を磨き続けてください。
学びを止めない姿勢こそが、素晴らしい理学療法士への唯一の道だと思っています。
最初に働き出した整形外科で感じた、先輩との技術と安心感の差。訪問リハで直面したモチベーションの壁。独立後の試行錯誤。笠井さんは困難にぶつかる度に、自分に足りないものを見つめ直し、学びを重ねてきました。
その積み重ねが「健康という幸せの土台を守る」という今の信念につながっています。そして今日もその土台を守るため、1人ひとりの体と、そして人生と向き合い続けています。
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整体oasis文京院
住所:東京都文京区本郷4-25-8 レッチフィールド本郷4丁目6F


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