お客様ファーストを徹底し、複数の働き方を経験。夢を叶えるための柔軟性と行動力【美容師・阿部タクヤさん】#1

東京・世田谷の地域密着サロンで12年経験を積んだ後、業務委託、フリーランスとさまざまな働き方を経験し、2023年に自身のサロン「LUMINOUS HAIR」を東京・新宿にオープンした美容師・阿部タクヤさん。

前編ではフリーランスになるまでに学んだ「お客様に寄り添った施術」や、東京・新宿にサロンを構えた経緯をお聞きしました。15年以上経ったいまでも新人時代に学んだことが活きているとのこと。技術だけでなく美容師としての心構えもお話ししてくれました。

今回、お話を伺ったのは…

美容師・「LUMINOUS HAIR」オーナー　阿部タクヤさん

東京都出身。山野美容専門学校卒業後、世田谷のサロンに12年間勤務。その後、五反田のサロンでの業務委託を経てフリーランスに転身。新宿や中野、五反田など、複数の拠点で施術を行う。2023年に自身のサロン「LUMINOUS HAIR」を新宿にオープン。面貸しも行いながら経営者兼スタイリストとして活躍している。

TAKUYA’s PROFILE

インスタグラム

美容師中心の考えを改め、お客様に寄り添えるようになった新人時代

――美容師になろうと思ったきっかけを教えてください。

実家が美容室で、両親ともに美容師でした。小さい頃からその姿を見て「自分も将来は美容師になるんだろうな」と漠然と思いながら過ごしていたのを覚えています。本格的に美容師を目指したのは、高校を中退したタイミング。「高卒資格がなくても入れる専門学校がある」と知り、山野美容専門学校の夜間コースに入学して、資格を取得しました。

――専門学校卒業後の就職先はどのようにして決めましたか？

最初のサロンは、専門学校の担任の先生に勧められたのがきっかけです。教育に力をいれていると評判の会社で、美容師としての経験が積めると思い、入社を決めました。

まずは西東京の店舗に配属され9年間勤務。その後、世田谷の本店に移って3年間勤めました。地域密着型のサロンで、多くの経験を積むことができたと思います。

――当時学んだことで今でも活きていることはありますか？

今となっては恥ずかしいのですが、美容師になる前は「美容室は髪の仕上がりを提供する場所で、美容師のセンスや提案が優先される」と思っていたんです。しかし実際に働いてみて、最も大切なのは「お客様の声をしっかり聞くこと」だと学びました。

独りよがりの技術や接客では認めてもらえず、常に相手の希望に寄り添う姿勢を徹底的に教えてもらえてよかったと思います。

また、基本的な技術だけでなく、カットやカラーに高い専門性を持つ先輩方から直接指導を受けられたことも大きな財産です。今でもその学びは日々の技術に活かされています。

お客様のアクセスを考えて複数の拠点を持てるフリーランスへ

――そこまで長く勤めた会社を辞めた理由は？

18歳で美容師を始めて、30歳を迎える節目のタイミングで「一人でやってみたい」という気持ちが強く芽生えたためです。自分のスタイルや掲げる理想と、組織のなかでできることとの間に少しずつギャップを感じるようになったのも理由のひとつ。退職後は業務委託サロンでの経験を経て、フリーランスとして独立しました。

結果的に退職という道を選びましたが、最初に勤めた美容室は教育体制が整っており、そのなかで大きく成長できたと思います。今振り返っても非常にいい経験でした。

――阿部さんが独立してやりたかったこととは？

当時の自分は若さもあって「新しいことに挑戦したい」という思いが強かったです。メーカーの取材や外部での撮影などに参加させてもらうたびに「もっと外の世界に出たい」という気持ちが強くなって。当時勤めていたサロンは地域に根ざした、長年通ってくださるお客様を大切にできる場所でしたが、一方で新しいことに挑戦する機会は多くはありませんでした。

ちょうど悩んでいたタイミングで業務委託のお話をいただき、勢いもあって思い切って独立という道を選んだんです。

――独立してどのようなことを感じましたか？

自由度が高く、自分の裁量で動けるのは魅力的でしたが、その分すべてが自己責任。「組織に守られていた部分が大きかったんだ」と気づかされることも多かったです。独立して初めて、これまで先輩や仲間に甘えていたことや、組織のなかで受けていたサポートのありがたさを実感しましたね。

当時は歩合制の業務委託サロンで働いていましたが、相手方の都合で突然契約が終了するなど、不安定さを感じる場面も多々ありました。そのため、自分一人で問題を解決する力やフリーランスとしての感覚は、確実に身についたと思います。

契約終了とコロナ禍が重なり、収入が大きく減った時期でもあったのですが「自分から動けばお客様は来てくれるはず」と思い、フリーランスに転身しました。

環境が変わってもついてきてくださるお客様に感謝

――フリーランスではどのような働き方をされていたのですか？

五反田・新宿・中野など複数の場所を移動しながらシェアサロンや知り合いのサロンを借りる形で仕事をしていました。

複数の拠点を作った理由は、世田谷時代からの既存のお客様と、業務委託時代の五反田で出会ったお客様、どちらも気軽に足を運んでいただける場所にいたかったから。お客様のために自分が移動しながら働けるのはフリーランスならではの経験で、おもしろかったですね。

――新宿にサロンを構えようと思った理由は？

当時は複数のサロンを転々としていたため、効率が悪く、予約が増えるにつれて限界を感じるようになったんです。ひとつの拠点を持つことで、お客様に対して安定した対応ができると考えサロンを構える決意をしました。新宿を選んだのはターミナル駅としてアクセスがしやすく、以前から通ってくださっていたお客様にとっても来やすい場所だったことが大きな理由です。

――サロンを構えてからの集客はどのように行っているのでしょうか。

サロンを構えたことで、Google検索やポータルサイトを通じて新規のお客様が来店してくださるようになりました。SNSでの集客も考えましたが、当時すでに多くの美容師が活用しており、情報があふれている印象があったんです。そのなかで埋もれてしまうよりは、検索やサイト経由で確実に探してもらえる方法を優先しました。

世田谷や五反田にいた頃のお客様のほとんどが変わらず足を運んでくださっているため、新規集客に注力せずとも売上が成り立っています。環境が変わっても長くつき合っていただき、感謝の気持ちでいっぱいです。

後編では予約の95%が常連客で埋まるという「LUMINOUS HAIR」の人気の秘訣を伺います。