通過点ではない、「支える」という選択。「プロアシスタント」に感じた大きな可能性「tolce by gite」髙橋弘修さん
東京・原宿にあるサロン「tolce by gite」に所属し、プロアシスタントという新しい働き方をしている髙橋弘修さん。前編では「tolce by gite」に入社するまでの道のりを伺いました。
後編では、最初のサロンを退職したあとの髙橋さんについて伺います。スタイリストになる前にサロンを辞めた髙橋さんは、その後なかなか自分が納得できる環境を見つけられず、再びフリーター生活を送ることに。
そんななか、「gite」でシャンプーのアルバイトを始めたことで、「やっぱり美容師をやりたい」という気持ちが再び強くなっていったといいます。
そこで提案されたのが、「プロアシスタント」という、これまで考えたこともなかった新しい働き方でした。
今回、お話を伺ったのは…
髙橋弘修さん
「tolce by gite」プロアシスタント

東京都出身。専門学校卒業後、フリーター期間を経て、東京のサロンに就職。3年間勤務したのち、一度は美容業界を離れる。その後、「gite」にアルバイト入社し、専属でスタイリストを支えるプロアシスタントという働き方を選択。現在は月間売上1,000万円を超える美容師の右腕として、サロンワークだけでなく、YouTubeの企画・撮影、自社製品の流通・販売管理など幅広い業務を担当している。
「美容師に戻りたい」。フリーター生活を経て出会った「新しい道」

――それからどうやって今のサロンに?
最初のサロンを退職したあと、次の就職先がなかなか決められなかったんです。
というのも、「ここだ」と思える決定打がないというより、逆に「いいな」と思えるサロンがたくさんあり過ぎてしまって。以前のサロンを経験したことで、本当に失礼な言い方になってしまいますが、どのサロンでも「前のサロンよりは確実に自分に合っている」と思える環境ばかりに見えてしまい、逆に選べなくなってしまったんです。
それで就職活動に疲れてしまって、一度美容業界を離れ、再びフリーター生活に戻りました。
――かなり思い切った決断ですね。
そうですね。でも、当時はそれがすごく楽しかったんです。
以前は美容室でかなりがっつり働いていたので、飲食店で働くのも新鮮でしたし、好きなタイミングで休める自由さもありました。その生活が2年ほど続きましたね。
――そんななかで「gite」に出会ったと。
はい。専門学校時代の同級生である菊というスタイリストが「gite」で働いていて、シャンプーだけのアルバイトを募集しているのを見つけたんです。フリーター生活を楽しみながらも、やっぱり美容師に戻りたい気持ちはあったので、まずは一度働いてみることにしました。
アルバイトとして働いているうちに、美容師を目指したい気持ちが強くなっていったので、ほかのバイトは辞めて働かせてもらうことになりました。
――最初から、プロアシスタントを目指していたわけではなかったんですね。
まったく考えていませんでした。そもそも、そんな働き方があるなんて思いもしませんでしたし。
当初はスタイリストを目指してカリキュラムを進めていて、実際にスタイリストデビュー目前まできていました。そんなときに一緒に働いていた、スタイリストの田村さんからプロアシスタントという選択肢を提案されたんです。
――悩みませんでしたか?
かなり悩みましたね。スタイリストへの憧れはずっとありましたから、数ヶ月は本気で迷ったと思います。
でも当時、僕はすでに20代後半に差しかかっていて。同級生たちは店長になったり、スタイリストとしてキャリアを築いていたんです。
その状況を冷静に考えたとき、「今からみんなと同じ土俵で勝負するより、まだ誰もやっていない新しい道に挑戦した方が、自分らしく輝けるかもしれない」と思いました。
そこで選んだのが、「gite」に所属しながら、田村さん専属のプロアシスタントとして働く道だったんです。
アシスタントからビジネスパートナーへ。変化した仕事への意識

――プロアシスタントとなってから、ご自身の変化は?
もっとも大きな変化は、「ただのアシスタント」ではなく、「ビジネスパートナー」へと意識が変わったことです。
以前は自分の取り組んでいる仕事がどんな成果につながっているか漠然としか考えていませんでしたが、今はお店の予約管理や売り上げを強く意識するようになりました。自分が動くことでどれだけ数字に貢献できるか、責任感を持って取り組めるようになったのは大きな変化です。
また田村さんから、YouTubeの企画や撮影、自社製品の流通・販売管理など、美容師の枠を超えた仕事も依頼され、携わるようになりました。
僕がサロンワーク以外の業務を担うことで、田村さんが施術や新しい挑戦に集中できる時間を作ることができる。それが結果として、お店全体のパフォーマンス向上につながっていると感じています。
以前は「今が楽しければいい」という考えでしたが、プロアシスタントという新しい職業を選んだことで、自分の人生や将来について責任を持って深く考え、人に語れるようになったのも変化のひとつだと思います。
――プロアシスタントとしてのやりがいは、どんなところにありますか?
お客様に喜んでいただけたときや、売上の目標を達成したときです。
僕たちはスタイリストと二人三脚で動いているので、その達成感や喜びを共有できる感覚が、一般的なアシスタントよりもずっと強いんです。
また一般的なサロンではアシスタントが入れ替わることも多いですが、僕は「専属」としてずっと田村さんのお客様の側にいます。お客様から「髙橋さんがいつもいてくれるから安心する」と言っていただけることもあって、それは本当にうれしいですね。
――一般的なアシスタント像とは、かなり違いますね。
そうですね。
美容業界では、アシスタントは「スタイリストになるまでの存在」と思われがちです。でも僕は、アシスタントにも主役になれる働き方があると思っています。
スタイリストには、ある程度決まったキャリアの流れがあります。でも、プロアシスタントにはまだ正解がありません。
だからこそ、「もっとこうできるんじゃないか」という可能性を感じていますし、その未知な感じにワクワクするんです。
美容が好きなのに辞める人を減らし、多様な働き方を後押ししたい

――今後の目標は?
一番大きな目標はプロアシスタントという新しい働き方を、日本の美容業界に広めていくことです。
そして田村さんのビジネスパートナーとして、もっと成長していきたいと思っています。
――なぜそこまで、プロアシスタントを広げたいのでしょうか。
日本では、美容師になったら誰もがスタイリストを目指すのが当たり前になっています。でも、本当に全員がその働き方に向いているわけではないと思うんです。
スタイリストになることだけが正解ではなく、支える側として力を発揮できる人もいる。その人たちが、自分らしく働ける道があってもいいと思っています。
――実際、美容業界を離れてしまう方も多いですよね。
そうですね。美容は好きなのに、「今の働き方が合わない」という理由だけで辞めてしまう人は、すごく多いしもったいない。美容業界全体の損失だと思います。
もしプロアシスタントという選択肢が広がれば、美容業界を離れなくても済む人も増えるし、働き方ももっと自由で多様になるはずです。
たとえばスタイリストとプロアシスタントを両立する働き方があってもいいと思いますし、「gite」に所属している別のプロアシスタントはライブ配信者としての活動も並行して行っています。
――そんな働き方もできるのですね。おもしろいですね。
ええ。あとはこの働き方を広めることで、アシスタント業の価値や報酬をもっと高めていきたいと思っています。
アシスタントは、どうしてもスタイリストになるまでの通過点とみなされがちで、スタイリストとして売上を上げて初めて一人前とされることが多く、アシスタント時代には給料にも限界があると思います。
でも売上管理やYouTube運営、自社製品の流通など、サロン全体に関わる業務を主体的に担うことで、スタイリストと同じくらい価値のある存在になれると思っています。
さらに、海外のような分業制が浸透すれば、スタイリストは施術に100%集中できるようになりますし、時間的な余裕も生まれます。
その余白が、新しい商品開発や技術力の向上など、さらにいい循環を生み出していくはずです。
プロアシスタントという働き方は、美容師個人だけでなく、美容業界全体をもっと活性化できる可能性があると、僕は信じています。
髙橋さんが充実した新人時代を送れた3つの理由
1.理想の環境でなくても、吸収する姿勢に切り替えた
2.不満を抱えるだけでなく、自ら環境を変えるようになった
3.遠回りを経験したからこそ、自分らしい道を見つけた
新卒採用での挫折、最初のサロンでの葛藤、美容の道を離れた過去などさまざまな経験をしてきた髙橋さん。それでも美容の仕事から離れなかったのは、「美容が好き」という気持ちがずっと心のなかにあったからなのだと感じられました。
そして、一見遠回りにも見える経験の数々が、「プロアシスタント」という新しい働き方に挑戦する勇気につながっていました。まだ正解が確立されていない働き方だからこそ、そこには大きな可能性があります。
髙橋さんが切り拓くプロアシスタントという道が、これから美容業界にどのような変化をもたらしていくのか、今後が楽しみです。
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tolce by gite
住所:東京都渋谷区神宮前1-8-24 OZ原宿ビル2F
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