江戸女性の粋な化粧風俗、紅の美しさを知る。「紅ミュー ジアム」#2
美容業界にいるのなら、日本の美に関する伝統は自分の知識を広げるためにもいろいろと知っておきたいもの。
創業文政8年(1825年)。紅花から作られる日本の伝統的な「紅」の製法を現在も守り続ける、伊勢半本店。江戸時代から続く最後の紅屋としての誇りを持ち、口伝でのみ受け継がれてきた秘伝の製法をもとに、職人がひとつひとつ丁寧に仕上げていく口紅は、美しい玉虫色が特徴の「小町紅」。昔ながらの紅が放つ上品な艶と発色は、日本女性の肌を美しく引き立たせます。
南青山にある「伊勢半本店 紅ミュージアム」では、紅の歴史や文化を知る貴重な資料の展示のほか、小町紅のお試しなど五感で紅の魅力を堪能し、購入もできるサロンスペースを常設。日本人が忘れてはならない「紅」の価値を改めて知ることができます。ぜひ、一度、訪れてみてはいかがでしょうか。
南青山に位置する「伊勢半本店 紅ミュージアム」。ここでは、他に類を見ない紅の歴史と文化に加え、伊勢半本店が創業時から守り続ける匠の技を伝えるための常設展示、企画展示を開催。サロンには、紅花のお茶や紅染めの逸品も。紅花から作られる貴重な「紅」が持つ色の美しさ、小町紅の多彩さ、江戸女性たちの化粧風俗など、紅にまつわるさまざまが楽しめます。
江戸女性の粋な化粧風俗を見る
「紅ミュージアム」の常設展では、紅花の起源や伝来、そして江戸時代の最大生産地(山形県の最上地方)における紅花生産状況や、紅屋の製造風景・マーケティングなどを解説、展示。また、関連資料として、江戸中期の紅花輸送に関わる文書や、紅作りの道具なども見ることができます。
そして、江戸の化粧文化や紅にまつわる風俗も紹介。当時の化粧や髪型は、単に身だしなみとしてだけでなく、その女性の年齢、身分、職業など対外的なメッセージを多分に含むものでした。その一方で、文化10年(1813年)刊行の美容本『都風俗化粧伝』によれば、年齢に応じた肌のケアやコンプレックスを解消するメイク法といった内容が出てくるそうで、現代にも通じるような美容話には興味をそそられます。そして、江戸末期から明治・大正期に使用された化粧道具なども展示してあり、当時の女性たちのライフスタイルをうかがい知ることもできます。
その他「紅ミュージアム」では、さまざまな企画展や「江戸の化粧再現」などの講座・ワークショップも多数開かれ、日本で育まれた文化や美意識、伝統の技を現代にも引き継いでいます。
紅を五感で堪能できるサロン
「紅ミュージアム」のサロンスペースでは、伊勢半本店が今も作り続ける「小町紅」を体験することができます。初めて「小町紅」を手に取る方でも、どう使うのか、どうすれば紅を美しくつけることができるのか。丁寧に教えてもらうことができます。
また、江戸時代では紅花が料理にも盛んに使われていたそうで、古来「ぬくもりの薬」として愛されてきたと言われる、紅花100%使用の「べにばな茶」も楽しめます。
そして、紅は染料としても使われるため、サロンでは濃淡さまざまな紅染めも紹介。「紅」が厄除けや血行改善といった薬効を持つといわれていたため、昔は紅染めの衣類は重宝されていたようです。紅花から抽出した、希少な紅で染めた自然の美しさを間近で堪能してみては?
今も息づく伊勢半本店の「小町紅」
紅花の花びらに含まれるわずか1%ほどの赤色色素を抽出して、匠の技で精製を重ねて作り出される紅。玉虫色の輝きを放つ、伝統の口紅「小町紅」は天然の奥ゆかしい赤色。
伊勢半本店の「小町紅」は、器の種類も豊富です。例えば「小町紅 季ゐろ」は、有田焼のお猪口に紅を刷き、絵付にはさくらやしゃくなげといった季節を彩る花をデザイン。
また、ひな祭りや七五三などに女の子が初めて点(さ)す紅のためには「小町紅『手毬』」を。手毬をモチーフにした有田焼の器に、伝統の紅を刷いてあります。季節の限定アイテムがあるので、記念にもなりそう。「小町紅『板紅』宿り木」は、鏡のついた携帯タイプ。江戸時代の女性も板紅を携えて外出したそうです。
他にも若手作家とコラボレーションした器や絵付けの異なるものが揃い、水を含ませて小町紅を溶くオリジナルの紅筆やプレゼントに最適なギフトセットもあります。この機会に、小町紅の点(さ)し方を教わりつつ、お気に入りの一品を見つけたいですね。
Shop Data
伊勢半本店 紅ミュージアム
所在地 :〒107-0062 東京都港区南青山6-6-20 K’s南青山ビル1F
TEL :03-5467-3735
開館時間 :10:00~18:00(入館は17:30まで)
※ただし、企画展開催中は開館時間に変更が生じる場合がございます。
休館日 :毎週月曜日(月曜日が祝日または振替休日の場合は、翌日休館)と年末年始
http://www.isehanhonten.co.jp/
江戸時代から続く紅屋。一度訪れたい「伊勢半本店 紅ミュー ジアム」#1>>