増える理美容W免許取得者。その背景に何がある? 星川佳輝さん #1

理容師と美容師の2つの免許を持つ人が増えているといいます。そのほとんどが、理容師が美容師の免許を取るという形のようです。今回取材した『Logic』の星川佳輝さんもその一人。なぜ、美容師の免許を取得するに至ったのか。人生設計をする上でなくてはならないものだったといいます。が、他の想いもあったようです。それは果たして……。

東京へ出るために親が願う理容師の道へ

――星川さんは美容、理容両方のライセンスをお持ちということで、なぜ2つを取ろうと思ったんですか?
「僕はもともと理容師が最初なんです。実家が床屋で、父は別の仕事をしていたんですが、母が経営をしていました。子どもの頃から髪を切るという光景を見て育ちましたので、こういう仕事もアリかなと思うようになっていましたね」

――ゆくゆくは実家を継ぐと。
「いえ、そうではないんです。ちょうど僕らの世代は、美容師ブームのときだったんです。本当は美容師になりたくて、美容専門学校に行きたいと相談したら、どうせブームは去ると……。だから長いこと続けられる理容師の免許を取ったらどうだということで、意見の相違はあったんですけど、理容の免許を取ることにしたんです。それと僕、東京に出たかったんです。実家が山形なんですけど、東京に出る条件として親が提示したのが理容の学校だったので。ただただ東京に出たいっていうので理容師になったのが正直なところですね(笑)」

――美容師の免許を取ったのはいつ頃だったんですか?
「理容専門学校卒業後に都内のバーバーに就職してから、25歳のときに通信制に通い始めました。取得したのはフリーランスになってからなので28歳です」

星川さん

――なぜ美容師の免許を取ろうと思ったのでしょうか?
「僕が働いていたバーバーはすごい人気店で、メンズに対するデザインに真っ正面から向き合うことができたという面では、自分にとって大きなターニングポイントになりました。ただ僕はもともとお店を出したいという願望があって、スタッフを確保するのに、理容師の人数に対していい人材というのは正直少ないなって感じていました。しかも、家を継ぐために理容師になったという人が僕のまわりには多くて、だとしたら人材確保でいったら美容師のほうがいいだろうと思い、美容の免許を取りにいったんです。でも、まあ、一番大きかったのは美容師に対する劣等感ですね(笑)」

理容師が自分たちの価値を分かっていなかった

――劣等感とはどういうことでしょうか?
「理容=床屋さんというイメージがすごくイヤで……。実際、理容専門学校に通っているときも美容学生ですと名乗ってしまうみたいな。今、バーバーブームがあったり、メンズに特化したヘアサロンが登場したりして、理容師の価値って徐々に変わってきているじゃないですか。スキンフェードはもともと理容の技術ですし。それを美容師さんがやり始めたというのは、理容師にとってすごく価値があることだなと思っています。逆にいうと、今まで理容師が自分たちで理容の価値を下げていたんだなと」

右のハチ付近までしっかりと刈り上げたアメリカンフェードスタイル
右のハチ付近までしっかりと刈り上げたアメリカンフェードスタイル。 担当/星川佳輝
大人っぽさと気品が漂うセミディスタイル
大人っぽさと気品が漂うセミディスタイル。担当/星川佳輝

――ダブルライセンスだと両方の立場から見ることができますね。
「美容師から見たら理容師のこんなすごい部分があるのに、なんでそれを活かさないんだというところですよね。結局、床屋という枠でしか見ていなかったなって思います。そう考えると、美容師はストイックだし、頭がいいなって感じます」

――実際に美容師は理容師を下に見ているのでしょうか?
「以前、美容師の方と対談させてもらったときに思ったのは、理容師を対等に見てくれていたということでした。その人は、理容師も美容師も同じ人間であって、同じ髪の毛を扱うことに対してのゴールはいっしょだという考え方でした。そういう風に考えていたことに驚きましたね」

――じゃあ、星川さんの中では劣等感はなくなったわけですね。
「いまだにありますね(笑)。ただそれは、美容師ブーム世代の僕らのひとり相撲なので、今の20代の子にはないんじゃないでしょうか。あの当時の美容師はキラキラしていましたからね」

――美容師の免許もあるし、ダブルライセンスなので、逆に有利じゃないですか?
「ただ2つ持っていますというだけで、それが今の仕事に活かされるかといったら、何もないですからね。今、自分がやっている『Logic』というお店は美容室登録なんですよ。美容室では理容業はできないので……」

続きは#2でお届けします。

取材・文/滝沢ヤス英

profile

星川佳輝さん

星川佳輝さん ヘアサロンLogic代表

中央理容専門学校卒業後、都内の理容室へ入社。理容室に在籍中に美容師の免許を取るために通信で美容専門学校へ通う。退社後、フリーランスで活動しているときに美容師免許を取得。2014年に美容室であるLogicを中目黒にオープンさせる。日本人の約7割がクセ毛で悩んでいるというところに目を向け、縮毛矯正のあり方を勉強・研究。現在はカットが一番大事というモットーを持ちつつ、縮毛矯正が得意なヘアサロンとして有名。

Salon deta

Logic

住所:東京都目黒区中目黒1-4-6
電話:03-5794-5300
営業:11:00~22:00
休:火曜日
公式HP:https://www.logicnakameguro.com/

理美容W免許を取得しても活かせないのが現状だ。星川佳輝さん #2>>

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