すべてにクオリティを求められた経験が現在の礎に【RiOen主宰 小室里奈さん】#1
ベストな選択をしても時が経てば環境が変わり、違和感を覚えることもあるでしょう。
今回お話いただいたRiOenを主宰する小室里奈さんもそのお一人。2つの人気サロンで腕を奮い、2025年8月に独立しました。
前編では、美容師の誰もが憧れる人気サロンに入社して、技術はもちろん立ち居振る舞いや仕事の厳しさを学んだこと、中間管理職的な立場となってお客さまに向き合えないことに心を痛めて転職を決意したなどを伺います。
KOMURO'S PROFILE
お名前 |
小室里奈 |
|---|---|
出身地 |
茨城県 |
出身学校 |
国際文化理容美容専門学校 国分寺校 |
憧れの人 |
芦田愛菜 藤井聡太 |
プライベートの過ごし方 |
寝る 読書 銭湯巡り |
趣味・ハマっていること |
ドライブ 将棋 カフェ巡り |
仕事道具へのこだわり |
ハサミと研ぎ師さん |
専門1年目から憧れのサロンに通って入社希望をアピール

――小室さんが美容師を目指したのはどうしてですか?
早いうちから美容という分野に興味がありました。
小学生の頃からバスケットボールをやっていて、練習が終わると先輩たちと遊ぶことが多かったんです。先輩たちのファッションや髪型を自分も真似るようになりました。
中学・高校になると毎朝シャンプーをしてツヤを出したり、ストレートに伸ばしたり。当時は雑誌の美容特集を読み込んでは参考にしていました。
――専門学校に進んでからは?
都内のサロンからスタイリストが講師として招かれて、授業をしてくださる機会があったんです。その姿が眩しいくらいキラキラしていて、「私もこんな風になりたい!」と思うようになりました。
――学生の立場からすれば、スタイリストは憧れですよね。
とても大きな勘違いなんですが、自分も「そのサロンに入ったら輝ける!」って思っちゃったんですね(笑)。
――ということは、その時点で入社したいサロンが決まったということ?
テレビや雑誌などに紹介されている人気のサロンで、1年生のうちから定期的に通って「ここで働きたい!」という気持ちをアピールしていました(笑)。
――積極的ですね。
とても人気のある方たちなのでそう簡単に予約は取れないし、お金に余裕のない学生でしたから、アルバイトでお金を貯めて4か月ごとのペースで通っていました。
――入社試験はいかがでしたか?
ただひたすら「ここに入りたい」気持ちをアピールしました。
就活にあたって普通は技術力を磨くものですよね。当時の私は「体力が勝負だ」って思っていたんですよね(笑)。先生にも「違う違う!」って注意されていました。
――でも、無事に望みを叶えた。
「面白いヤツだ」と思ってもらえたのでしょう(笑)。体力があるのを見込まれて、3店舗の中でいちばんハードな店舗に配属されました。
服装から立ち居振る舞いまで注意される厳しい指導

――実際に入社していかがでしたか?
入社しただけでは、キラキラ輝く人にはなれないことが分かりました(笑)。
今はスニーカーで仕事をしていますが、当時はアシスタントでもヒールのある靴以外は許されなくて、清潔感のある服装が求められました。胸元が開いたデザインや服にシワがあると、「着替えてきなさい」って帰されることもありました。
――厳しいですね。
お見えになるお客さまは一流の方ばかりなので、アシスタントもその方たちにふさわしくなければいけません。学校で感じた「ものすごくおしゃれで、眩しいくらいのキラキラ感」の理由が分かったような気がしました。
――技術的な指導はいかがでしたか?
私は理解するのにすごく時間がかかるタイプなんです。ひとつの技術を身につけるのにアプローチの仕方が分からなくて、よく先輩方に細かく教わっていました。
――技術を習得するのにはコツが必要ですよね。
先輩からダメ出しをもらったときは、どこがダメなのかを教えて欲しくて、いろいろな先輩に聞いて回りました。
――ダメな部分を教えてもらうのは辛くないですか?
上手くなりたいという気持ちが強かったので、辛くはなかったですね。
「辞めたい」と思ったことは一度もありませんでしたが、「この仕事は向いていないのかも」と思うことは何度もありました。
――今の小室さんからは想像できません。
アシスタントからスタイリストになっても、ダメ出しはありました。
撮影の現場で、モデルさんを仕上げてカメラの前に立ってもらおうとした途端、何も言わずにスプレーで髪を濡らされたこともあったんですよ。
――どういうことですか?
もう一度やり直し、という意味です。モデルさんも「せっかくセットしたのに?」って、驚いていました(笑)。
――それは辛い。
落ち込んでいる暇はありませんでした。撮影スタッフのみなさんをお待たせしていますから、やるしかない。先輩が「ちょっとここを見て。ここが気になるでしょ?」って指導してくださって、ようやく仕上げました。
大変でしたけど、その指導のおかげで雑誌の表紙を飾ることができました。
――一人前になるために、心がけたことはありますか?
3つあります。頼まれた仕事を断らないこと。上手な先輩の仕事を手伝うこと。そして上手な先輩にアドバイスをもらうことですね。
――頼まれた仕事を断らないというのは?
アシスタントのとき、まだ習っていない仕事を頼まれることがありました。そのとき「まだ習っていません」って断るのではなく、とにかくやってみる。挑戦することが大事だと思います。
お客さまと向き合う時間がとれず、退職を決意

――最初のサロンには何年いらしたんですか?
11年です。その当時の店長が体調不良になって、店長代理的な仕事を任されるようになっていました。
――順調にキャリアを重ねていったんですね。
どうなんでしょう。自分の仕事以外に、他のスタイリストの様子やアシスタントの仕事ぶりに目を配らないといけません。
――仕事と責任が増えますよね。
私たちの思いがなかなか伝わらない、もどかしさもありました。組織になってしまうと上層部に決定権があって、形になるまで何度もミーティングをする。上層部に後輩たちの想いを伝えても、「気持ちは分かるけど、できない」と言われることもありました。
――板挟みですね。
私がやりたいのは美容師の仕事であって、組織の中で中間管理職になることじゃない。もっとお客さまに専念できる環境に身を置きたくて、転職を決めました。
念願だった人気ヘアサロンに就職が決まり、センスと技術を磨いた小室さん。順調にキャリアを重ねたものの上層部と後輩たちとの板挟みに悩み、退職を決意しました。
後編では転職先に求めたこと、サロンで働くことに限界を感じたこと、独立するにあたって心がけていることについてご紹介します。
撮影/森 浩司
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