いいところに目を向け、期待をかける。複数店舗の黒字化に成功したマネジメント術【美容師 黒田広徳さん】♯2

東京・埼玉・大阪を中心に、わずか4年で35店舗を展開している美容室「ECLART」。

最新技術を取り入れた髪質改善メニューを手頃な価格で提供し、全店に個室を備えたスタイリッシュな空間作りでも注目を集めています。

今回お話を伺ったのは、美容師歴23年、「ECLART」入社3年目でエリアマネージャーを務める黒田広徳さん。前編では黒田さんの1社目での経験について伺いました。

後編では、黒田さんの「ECLART」への転職のきっかけや、マネジメントで大切にしている考え方を伺います。SNSを通じて「ECLART」代表の南さんと出会い、「自分の周囲をお金持ちにしたい」という考え方に強く共感した黒田さん。20年勤めた会社を辞める決意を、その日のうちに固めたといいます。

お話を伺ったのは…

黒田広徳さん

株式会社ECLART

エリアマネージャー

高校在学中に美容師を志し、卒業後は美容室に就職。働きながら通信制の美容専門学校に通い、美容師免許を取得する。その後20年間にわたり同サロンでキャリアを積み、管理職も経験。美容師が可能性を感じられる職場で、自身のマネジメント力を試したいと2022年に「ECLART」へ入社。現在はエリアマネージャーとして5店舗を担当し、全店の黒字化を達成。その功績が評価され、2025年11月より執行役員に就任予定。

インスタグラム

転職の不安をやわらげられるのは自分自身しかいない

20年勤めたサロンを離れ、「ECLART」へ転職した黒田さん

――転職を決意した理由を、教えてください。

マネジメントの力を磨きたい、美容師がより可能性を持って働ける環境に挑戦したいという漠然とした思いを持っていたときに、SNSで「ECLART」社長の南と知り合ったからです。

もっとも惹かれたのは、社長の「周囲の人間をみんなお金持ちにしたい」という考え方でした。美容室経営者のなかには自分や会社だけが豊かになればよいと考える人もいますが、社長はスタッフの未来を第一に考えていて、その姿勢に強く共感したんです。僕自身も「若いスタッフを貧乏にしたくない。収入が少ないせいで美容師を辞めてしまうようなことがあってほしくない」と常々思っていたので、深く響きました。

さらに社長の人柄そのものにも惹かれ、「この人と一緒に働けばきっと楽しい」と直感しました。その場で転職を決意し、翌日には20年勤めたサロンに退職の意思を伝え、引き継ぎを経て「ECLART」への入社を決めたんです。

――20年も勤めた会社を辞めるのに、ずいぶん早い決断でしたね。

僕にとって、環境を変えることの不安は「自分でやわらげるもの」だと考えています。転職というと安心できる場所を探そうとする人も多いですが、100%安心できる環境なんて存在しません。なぜなら「安心の定義」は人によって違うからです。

大切なのは「環境をどう活かすか」という姿勢。どのサロンに行っても可能性をつかむのは自分次第です。だからこそ、環境を変えてみることに可能性を感じ、一歩を踏み出すことが大事だと思います。そして給料や休みなどの福利厚生だけでなく、その会社に入るとどのように成長できるか、どんなチャンスがあるかという点にも目を向けるべきです。

任された複数店舗の黒字化に成功

黒田さんがマネジメントを担当する店舗の1つ、「ECLART CENTRAL 赤坂店」

――入社してからどんなことを感じましたか?

最初はやはり戸惑うことが多かったです。会計の仕方や物の配置など、細かな違いに慣れるのは大変でしたね。ただ、それらは時間をかければ必ず解消できると考えていました。

入社時は、家から近い川越に店舗ができると聞いていて、そこに配属されると思っていたのですが、なかなか店舗ができる気配がなく(笑)。実際には赤坂店に配属となりました。正直「あれ?」とは思いましたが、当時の自分には配属先にこだわれるほどの実力はないと感じていたので、与えられた環境を素直に受け止め、目の前のタスクを1つひとつ確実にこなすことに集中しました。僕の考えとして、与えられたミッションで成果を出して初めて意見が言えると思っていたからです。

その後は複数店舗を任されるマネージャーとなり、大宮、浦和、川越、池袋、銀座と担当エリアが広がっていきました。そしてミッションとして課されていた「担当店舗すべての黒字化」を無事に達成することができたんです。

――黒字化を達成できた理由は、マネジメント力にあると思います。意識していることは?

いくつかありますが、もっとも大切にしているのは「人のいいところに目を向ける」ことです。悪い部分はどうしても目立つものですが、あえていい部分に注目して伸ばす。人間というのはつまるところ人の役に立つこと、認められていると感じたときに大きな力を発揮するものだと思っています。成果を褒めるときも、特別な場を設けるのではなく、普段の会話のなかで自然に「すごいね」と伝えるようにしています。

また、スタッフには常に期待をかけるようにしています。人は期待されなくなったら成長を止めてしまう。だから「もう少しで達成できるね」と言葉をかけ続け、本人が自分の力を信じられるように導いています。

さらに意識しているのは怒らないこと、そして勝手に解決しないことです。スタッフから相談や報告が上がってこないとき、その原因は多くの場合、上司側にあります。スタッフに「言いづらい」、「怒られるかもしれない」と思わせてしまっているわけですね。僕はスタッフ1人ひとりが自分で解決できる力を持っていると信じています。だからミスを報告されたとしても怒るのではなく、必要な助言をしながら本人に解決を委ねるようにしています。

――振り返ってみて、美容師として大きな転機だったのは?

「ECLART」に入ったことは間違いなく大きな転機でした。社長の経営哲学に共感し、美容師が働きがいと経済的な豊かさを両立できる環境に出会えたからです。

実際に「ECLART」に入って、「給料が上がったから結婚できた」、「自信を持てるようになった」と語るスタッフが大勢います。「ECLART」では人件費や集客費用に積極的に投資し、スタッフに挑戦の機会を与えてくれます。しかもルールをがちがちに決めるのではなく、柔軟に変化を取り入れる社風があるんです。社長もいい意味で隙がある(笑)。だからこそ意見が出やすく、可能性が広がっていきます。それこそが「ECLART」の強みです。

社長の考え方次第で、会社は大きく変わります。「内部留保を優先する経営」では絶対に叶わなかった環境に身を置けたことが、僕にとっての最大の転機でした。

休日が仕事のご褒美だなんて、つまらない

ご自身の仕事観について説明する黒田さん

――黒田さんにとって、「働く」ということは?

「楽しむこと」です。仕事を楽しんでいるからこそ、お客様も楽しんで帰ってくれる。美容室を楽しい場所にすることを、いつも意識しています。うまくいかないことがあっても、それも含めて楽しめるタイプで、働くことそのものに喜びを感じています。

そして僕は「ワークライフバランス」という考え方は持っていません。ワークもライフもひと続きであり、人生のなかに仕事がある。だからこそ休日のために働くのではなく、働くこと自体を楽しむことが大事だと思うんです。

5日間の仕事を苦労と捉えて、2日の休日だけを楽しみにする。そんな人生はつまらないと僕は思います。もちろん人生で何を大切にするかは人それぞれで、僕の考えを強要するつもりは一切ありません。それぞれにとって楽しい働き方で、最終的にそれが世の中の役に立てば社会はもっと豊かになると思っています。

――お話を伺っていると、俯瞰した視点をお持ちですね。

昔から変わっているとよく言われます(笑)。でもほかの人と同じような視点に立ってしまうと、結果も同じになり、自分の成長が止まってしまうように感じるんです。美容業界も同様だと思います。

少子高齢化による労働生産人口の減少など、社会全体が大きく変化している今、美容業界においても、これまでと同じやり方では生産性を高めることが難しく、新しい働き方や価値観が必要だと感じています。

とくに若い世代に対しては、僕たちが経験したことのない方法で美容師という仕事に新たな付加価値を見出し、社会の役に立つ存在になることを期待しているため、僕たちの世代の当たり前の美容師像をそのまま伝えるのが正解とは限りません。いつも若いスタッフたちに対して心のなかで、頼んだよ、期待しているよ、と思っています(笑)。


黒田さんのマネジメントの根底にあるのは「人を信じる力」。スタッフの強みを伸ばし、期待を伝え続ける姿勢が、黒字化の成果と組織の成長につながっているのだと感じました。これからも「ECLART」と黒田さんは美容師1人ひとりが輝ける未来に向けて歩みを進めていくでしょう。


Check it

ECLART CENTRAL 赤坂店
住所:東京都港区赤坂2-14-16F
TEL:03-6770-1232

この記事をシェアする

編集部のおすすめ

関連記事

近くの美容師求人をリジョブで探す

株式会社リジョブでは、美容・リラクゼーション・治療業界に特化した「リジョブ」も運営しております。
転職をご検討中の場合は、以下の地域からぜひ求人をお探しください。

関東
関西
東海
北海道
東北
甲信越・北陸
中国・四国
九州・沖縄