心ある、そして考える医療人を育てる 東京衛生学園専門学校
1953年に創立され、長い歴史と伝統を持つ東京衛生学園専門学校。今回お話を伺うのはあん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師の国家資格取得を目指す、東洋医療総合学科のみなさん。後編では学科長の波田康先生に学校の理念や特徴を伺います。
一生の仕事の基盤となる技術力を培う、実技重視の授業
――この学校の理念を教えてください。
「『心ある、そして考える医療人を育てる』ということを理念としています。医療人というのはどういう人かというと、ただ単に医療の仕事をしている人ということではなくて、人々の生命をまもる技術を身につけたプロフェッショナルではないかと思うんです。衛生学園という学校名って、不思議な名前だと思われるかもしれないんですが、これは『いのち(生命)』を『まもる(衛る)』という意味があります。人の『いのち』の輝きを支えていく人材づくりという使命が学校名にも表れているんです」
――教育面で重要視されていることはどんなことでしょうか?
「ひと言でいうと『実技重視』です。先ほどお伝えした理念に加え、もうひとつの教育理念として『私たちの学ぶ技術は 芸術であり 科学であり 職業でもある』というものがあります。座学中心の学校が多いなか、技術を伝えていく場としての学校でありたいという思いが込められています。法律で決められている単位数以上に実技の授業を組んでいます」
――この学校ならではの教育制度というのはありますでしょうか?
「OSCE(オスキー)という、医学部などで採用されている試験方式を鍼灸学校でいち早く取り入れました。これは臨床能力を客観的に評価するための試験方法です。3年生が試験対象者、2年生が患者役、1年生が見学をするという形で、全学生揃って参加する試験なのですが、そうすることで段階的に臨床能力を培うことができます。あとは鍼灸にはいろいろな流派があるんですが、その有名な先生が教えにきてくださるというのも特徴です」
――2名の学生さんにお話を伺ったら、おふたりとも厳しい学校に魅力を感じたとのことでしたが。
「そうですね、学校説明会では、楽して免許を取りたいなら他の学校に言ってと伝えてるんです(笑)。学生に求めているものの基準はとても高いです。あとは座学でも小テストを細かく実施しています。学生たちは大変だと思いますが、勉強の習慣になりますし、どこにつまずいているかが明確になり、早めにフォローできるんです。学校から離れてかなり時間が経つ年配の学生でも、スムーズに勉強できるよう工夫したカリキュラムになっています」
――幅広い年齢層の学生さんがいるとのことですが、指導するうえでの難しさはありますか?
「ありますね(笑)。だからこそできるようになったときに一緒に喜びを感じられますし、教員としてのやりがいだと思っています。幅広い年齢層の学生がいる利点もあって、年齢の高い学生は社会人としてのふるまいを教えられますし、若い学生は瞬発力があるので呑み込みが早く技術を教えることができるんです。お互いにいい刺激になっていると思います」
オリンピックだって行ける! これからの時代に必要とされる技術
――卒業後もサポートが続くと伺いましたが。
「はい、開業の相談、図書室の利用などもできますし、卒業生との交流が盛んです。あとは卒業生から求人がくることもありますし。あとはふらっと遊びにきて近況報告を聞けるのがとてもうれしいですね」
――学生さんに伝えていきたいことはどんなことでしょうか?
「私自身は『感じる力』を大切にしてほしいと思っています。感じる力というのは、施術をするときに患者さんの体がどのようになっているかということももちろんですが、医療面接をしているときに患者さんがどういうことを言いたいのか、または言えないのかということも感じられるようになってほしいんです。そのためには実技の地道な反復練習が必要ですね」
――卒業後の進路は?
「就職を希望する学生は100%の就職率になりますが、いろいろな年代の学生がいるので、卒業後しばらくは家事や育児に専念する、というような方もいます。この仕事は自分のライフステージに合わせて働き方を調整できるのが魅力でもあります。それで女性の学生がすごく増えまして。女性特有の疾患や不妊など、男性には相談しづらいという方もいますから、女性にとてもいい仕事だと思っています。卒業後の進路で一番印象的なのは僕の初めての教え子に佐藤奈穂さんという方がいるんですが、3年生の面談で『私はオリンピックに出たいんです!』と言ったんです。最初は何を言うんだろうとびっくりしたんですが(笑)、彼女は夢を叶え、卓球女子のナショナルチームでコンディショニングを担当しました。このようにさまざまな場に需要のある仕事です。これからも高い技術を持った学生を育て、在校生、卒業生を結びつける場でありたいと思っています」
入学を後押ししたのは「厳しい学校だよ」のひと言 東京衛生学園専門学校>>