宇田川 大輔 interview #1:ネイルの流行予想と現在の動向を知る
2004年に創刊してからネイルブームと共に歩んできた『NAIL VENUS』。編集長を務める方は、さぞ美意識の高い女性かと思いきや…、実は男性なのです。
ネイル専門誌なのに男性編集長という宇田川大輔さんに興味を抱き、お話を伺いました。第1回目は「宇田川さんと雑誌」についてのインタビューです。
ネイル誌にファッション誌のエッセンスをプラスして新しい雑誌を作る
――まずは編集者になってから、『NAIL VENUS』を創刊するまでをお話しください。
「約15年前に男性ファッション誌の編集部へ配属になったのですが、 その雑誌が休刊になり編集部が解散してしまいました。そこで新しい雑誌の企画を10本ほど立てることになり、そのなかで通ったのが『NAIL VENUS』でした。当時、周りの女性の間でスカルプチャーを付けている人が多くてネイルブームの予感がしたんです。当時はネイルサロンも競合誌もまだ少ない時代で、これから発展する産業になるだろうと思いました。それに、自分のファッション誌の経験とノウハウを注入したら、よりよいものが作れる自信もあったんです。そして『NAIL VENUS』を立ち上げて、かねてからの目標だった雑誌の編集長職に就くことができました」
――女性誌へのデビュー、編集長デビュー、ネイル業界へのデビューと“デビューづくし”の状況ですが、不安はなかったのですか?
「自分が女性向けのメディアに携わるという点には抵抗はありませんでした。逆に、男性誌の編集をしている時は、好きな物への思いなど私情が入ることもあったのですが、女性誌では客観的にジャッジができるという利点に気づいたり。ネイルの知識に関しては多くの時間をネイル雑誌作りに費やしていたので、日ごとに追いついてきました。とくに撮影の現場では、業界トップクラスのネイリストさんの技術を、目の前で説明を受けながら見ることができますから勉強になりましたよ。もちろん、初めての編集長ということもあり色々苦労もありましたが、それはそれでポジティブに捉え、楽しむようにしていました」
――具体的にどんなことが大変だったのでしょうか?
「まず、立ち上げてすぐに大阪で大きなネイルイベントがあり『今度、新しいネイル雑誌を出版する者ですが……』と挨拶をしに行ったのですが、当然ネイル業界に誰も知っている人がいなくて全然取り合ってもらえなかったですね。制作が進んでからは、誌面に出ていただくタレントさんにオファーをしても『貴誌は存じあげないので辞退したい』と、なかなかよい返事が頂けなかったり、販売実績も思うようにいかなかったり。3冊目で結果が残せなかったら休刊の可能性があり、一か八かで、当時人気NO.1だったモデルさんに表紙のオファーをしたんです。すると、お話を受け入れていただき出演してくださることになりました。その結果、本誌も爆発的に売れて休刊を逃れたんです。さらに次の号の表紙に出ていただいたのが大人気アーティストさん。その方のミュージックビデオでもネイルを強調する印象的なシーンがあり話題になっていて。やっとネイルと時代がシンクロしてきたのだと思いましたね」
――『NAIL VENUS』の企画や特集は、どのように思い浮かぶのですか?
「ネイルだけではなくファッションの流行を常につかむようにしています。色、モチーフ、スタイルなどのトレンドは必ずリンクするので。それと、全国各地で開催しているネイルイベントは必ずチェックしています。とくに、人が集まっているブースにはお客さまや読者の関心のヒントが溢れているんですよ。このように、これからの流行予想と現在の動向を知って、両方を誌面に落とし込むようにしています」
後編では、宇田川さんのネイルへの考え方を詳しくうかがいます。
Profile
宇田川大輔さん
編集者、フォトグラファー(株式会社M-3代表取締役)
東京都出身。
求人雑誌の編集者を経て、男性ファッション誌の編集者となる。2004年にファッションとネイルを楽しむ女性のための雑誌『NAIL VENUS』を創刊。約14年間編集長を務める。現在、『NAIL VENUS』のほかメンズファッション誌『LODEAD』、業界初のデンタル&オーラルケアマガジン『美歯NAVI』も発売中。
https://www.instagram.com/udagawadaisuke/
http://m3-mag.jp/nailvenus/
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