仲宗根幸子 interview ＃2：ネイルの基本は爪を健康に美しく保つケア
サロンの数が増え続け、年々広がりを見せているネイル業界。そんな日本のネイル文化は、いったい、どのように発展してきたのでしょうか？
今回は、日本ネイリスト協会の会長、仲宗根幸子さんにインタビュー。まだ日本にネイルサロンがない頃に、海外からネイルの技術を持ち込み、浸透させたネイル業界の先駆者です。そんな仲宗根さんに、日本にネイルが根付いたいきさつや現状の課題などを伺います。
中編では、現在のネイル業界の課題や一流のネイリストにとって大切なことについて伺いました。
日本にネイルが広がったと感じた瞬間
――日本にネイルが広まったと感じた時はいつですか？
「ネイルスクールの説明会に参加する人が増えた時です。以前は1、2人だったのが、40人以上集まるようになりました。また、高校を卒業したらネイルをやりたいという若い子が増え、親御さんも一緒に来るようになったんです。説明を聞いたお母さんから、『私が習いたい』と言われることもありましたね（笑）。親がネイリストを認めてくれたので、『これから若い世代にますます広まるな』と感じました」
ネイルが原因で爪が薄くなる
――現状のネイル業界の課題を教えてください。
「爪が痛んでいる人が増えています。ジェルネイルが現れるなど、技術が進歩したことで、誰でも気軽にネイルができるようになったからです。ジェルネイルは、ジェルを爪の上にのせ、その後にUVライトを当て硬化させます。光を当てない限り、固まらないので模倣しやすいんです。しかし、ジェルは化学物質ですから爪や周りの皮膚にとって、決してよいものではありません。付けて剥がすことを繰り返すと、少しずつ爪が薄くなるんです。以前は、すぐに硬化をするアクリルとリキットを使っていたので、手早く作業することが求められ、技術を持っているプロにしかできませんでした。ネイリストはきちんとした知識を持ち、お客さまに丁寧に説明することが、今後ますます大切になります」
ネイリストは、接客のプロであるべき
――競争が激しくなっているネイル業界で、長年営業を続けているサロンはどのようなお店でしょうか？
「価格を落とさず、きちんとした技術をお客さまに提供しているお店です。安い値段で、派手なネイルを提供するお店が最近増えていますから。値段を下げると、お客さまを増やすことが求められ、スピード重視になります。結果、丁寧な接客ができません。それに、ネイルの基本は、爪を健康に美しく保つケアです。本来であれば、付け爪やアートは、その後にあります。また、40代以降のお客さまは、デコレーションをしたい方が少なく、爪を美しく保ちたい方が多いんです。そのため、丁寧に爪の手入れするサロンに行きます。ちなみに、最近、介護施設やデイケアハウスがネイリストを呼ぶことも増えているんです。これからは、高齢化が進むので、ますます技術が大切になってきます。ネイリストには、価格ではなく技術でお客さまにサービスしてほしいですね」
――一流のネイリストに必要なことを教えてください。
「接客のプロであることですね。技術はあって当たり前ですから。たとえば、『オトコネイル』という男性専用のサロンがあります。ネイリストは全員女性で、支店を出すほど繁盛しているお店なんです。男性に直接触れる仕事ですから、『これまでに何かトラブルはありましたか？』と聞いたところ、『一度もありません』と。接客をきちんとしているので、お客さまもプロとして見てくれると言っていましたね」
1998年には、韓国のネイリスト協会設立のきっかけを作ったと言う仲宗根さん。韓国でコンテストを開催した際には、会場が超満員になったそうです。ネイルがどんどん世に浸透していく姿を見ることが本当にうれしかったと語ってくださいました。後編では、美容に関わる仕事の魅力について伺います。
Profile
仲宗根幸子さん
NPO法人日本ネイリスト協会会長
NSJネイルアカデミー院長
ネイルズ仲宗根株式会社代表取締役
株式会社仲宗根ネイル研究所所長
公益法人日本ネイリスト検定試験センター理事
日本におけるネイリストの先駆者であり、つねにネイル業界の第一線で活躍。ネイリスト育成歴は40年以上。NPO法人日本ネイリスト協会では15年間講師会会長を務め、認定講師の教育にあたる。国内コンテストをはじめWINBA、IBSニューヨーク、IBSロングビーチなど米国ネイルコンテストの審査員や、国内の地方大会で審査委員長も務めている。
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