思考力が高ければどんなスタイルも切れる。その力が身につく「コレクション」はうちならではの活動です【nenen代表 イッシキケンタさん】#2

サロンワークだけにととまらず、数々のヘアコンテストでも存在感を発揮。デザイン性の高いカットやカラー、思わず引き込まれるような世界観あふれるスタイル提案で、業界からの注目度も高いイッシキケンタさんにインタビュー。

クリエイティブな印象が強いイッシキさんですが、これまでどんな美容師人生を送ってきたのか、どんな考えを持つ人なのか、気になるところ!

【後編】では、独立から自身のサロンオープンまでの道のりや、nenenならではのクリエイティブな活動などについてお聞きしました。

「New look, New me」新しい自分に出会う美容室をコンセプトに

――「nenen」は2022年にオープンされたとのことですが、独立したきっかけは?

前職のサロンに背中を押してもらった形です。

いろいろ迷うこともありましたが、いざ独立してやるぞ!となったら、メラメラと実感がわいてきて、物件探しからサロン作りの立ち上げが始まりました。

――サロンの内装はシンプルでかっこいい雰囲気ですね。

デザイナーさんに入ってもらいました。フロントのデザインがちょっと独特。床は海外の線路の枕木を再利用しているそうです。

僕は個人的に写真が好きで、ヘアスタイルの写真を大きくプリントして絵のように飾ったり、2階への階段部分にも写真を加工したものを使ってもらいました。

サロン内に飾られたスタイル写真。nenenの世界観に思わず引き込まれる。
階段や壁のインテリアにも、写真を加工したものをデザイン。

――サロン名「nenen(ネネン)」の由来は?

名前を決める時に、何を大事にしていこうかというところからスタートしました。

造語なんですが、「縁」と「円」が由来です。enとenがつながって、さらに最初にnをつけて回文みたいなおもしろさも加えて「nenen」です。

生涯顧客を目指して、お客さんと一緒に歩んでいきたい、そういう意味で「縁」を大切にしていこうというのがまず一つ。

美容師とお客さんの関係って特別ですよね。定期的に会うし(たまに会う友達よりも頻度高そう)、けっこう親密な話もしたり。家族や友達にも言わないようなことを話してくれたり、そういう絶妙な距離感がありますよね。

――「円」の方はどんな意味がありますか?

線は始まりと終わりがあるけど、円は終わりがなくつながっていますよね。そこから、常にチャレンジして磨き続けようという意味合いです。

「デザインは尖ってもいいけど、人は尖っちゃいけない」と、僕は思います。尖ったデザインのスタッフがたくさんいても、みんなが集まれば角がとれて丸くなる(円になる)、そんなイメージもあります。

――得意としているスタイルやデザインはありますか?

うちでは「New look, New me」というのを一つのテーマにしています。nenenで、今までにない新しい自分のスタイルに出会って、感動やワクワクを味わっていただけたらと思っているので、あえてデザインや方向性は限定していません。

作るスタイルの雰囲気、客層もさまざまだし、スタッフのタイプもいろいろいるので、それぞれの得意をいかして働いています。

――スタッフもいろんな個性の集合体なわけですね。

それぞれのやり方があって、ジャンルもいろいろだけど、みんなが集まることで相乗効果も生まれます。

それをどうまとめ、このサロンにいる意味を作るのが僕の仕事。今フリーランスで働く美容師も多いけれど、nenenで働くことにどんな魅力や旨みがあるか、それは常に考えています。

全員で取り組むコレクション。「思考力」が高まることが大きな魅力

スタッフ全員で取り組んでいる「コレクション」。完成度の高さに驚く。

――nenenならではの魅力ってどんなところでしょう?

半年に一回、みんなでコレクションという活動をしているのですが、他にはあまりない取り組みだと思います。

コレクションとは、シーズンごとにキービジュアルを作るというものです。社内でフォトコンを開催して、そこで1〜3位までの子と僕とでコレクションのチームを作り、どういうテーマでいくか、どんなスタイルで表現するかなどを決め、あとは全員が参加して作り上げていきます。

1位の子がメインでディレクションできるので、気合いが入りますよ。やりたいことを具現化していく中で、僕はそのサポート役です。

――コレクションを冊子にしたものを拝見しましたが、スタイルが素敵なだけでなく、これどこで撮影したの!? っていうロケのクオリティの高さにも驚きです。

ですよね(笑)。まず衣装チームやキャスティングチームなど、いろんなチームに分かれて進行していきます。あらゆる手配、段取りを細かく設定して、もうみんなが制作会社なみの働きなんですよ。

<コレクション当日のタイムテーブルを見せてもらうと…>

朝から時間が細かく決められ、移動から撮影場所、ロケ地近くのトイレやコンビニはどこかまで調べ、データ上のリンクからすぐに確認できるようにしています。

こっちのチームが準備している間に、別のチームは次の行動にうつるなど、すべてをこのタイムテーブルにまとめて、全員で共有してコレクションに臨みます。

それはもう大変な作業ですが、思考力も上がるんですよね。そしてこれくらい準備ができるとお客さんも絶対素敵にできますよ。

――確かに、めちゃくちゃいろんな力が身につきそうです。

先日、LECOの内田さんのラジオにゲスト出演していたDoubleの山下さんが言ってたのは、「練習じゃなくて研究しよう」ということ。

何でこうなるのかをしっかり考えて、自分の答えを導き出す、そのために研究するんだと。もっとよくするためには、勝つためには、とか、何をどうしたらいいのか考える時間が増えると、考えることが習慣化しますよね。それって思考力も高めてくれると思うんです。

何か一つだけを極めて得意な人はそれだけかもしれないけど、考えられる人はどんなスタイルも切れるし、全部に対応できると思います。

――コレクションが完成した時は、ものすごい達成感でしょうね。

そうですね。チームワークもそうだし、スタッフそれぞれがいろんな面で成長できるのがコレクションのいいところです。

技術の向上だけじゃなく、人としての成長を大切にしたい

――サロンで働く環境や教育について、取り組んでいることはありますか?

毎月一回、スタッフ一人ひとりとミーティングをしています。細かいカリキュラムの進捗などもそうですが、目指しているところへの道筋が今正しいのかどうかを確認し合うというのを大切にしています。

その人がどういう風に成長しているか、歩んでいるか。

システムで固める教育よりも、人を大事にしたいです。技術を教えるだけじゃなく、人を作るというのをベースに考えています。

――最後に、イッシキさんにとって「働く」とは?

僕自身で言うと、人生そのものですかね。美容師をしていなかったら、生きている意味がないってくらい。一度も辞めたいと思ったことはありませんね。

美容師であることが生活の一部というか、生きることそのものという感覚です。

お客さんと一緒に人生を歩んでいけるのは、いい仕事だなとつくづく思います。結婚して、子供がうまれて、そのお子さんも切りに来てくれたりすると本当にうれしい。

美容師は、人の人生に良い形で関われる仕事だと思うし、そういう部分にすごく幸せを感じています。

取材・文:青木麻理(tokiwa)
撮影:生駒由美


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