苦労を重ねてたどり着いた理想のカタチ。これからは女性スタッフが辞めずに長く働ける企業を目指して【#péil nail代表 桑原絵里奈さん】#2
東京・渋谷の人気店で経験を積み、独立後は自身のネイルサロンをオープン。現在の活躍ぶりを見ると順風満帆のように思えますが、表参道でお店が軌道にのるまでは、山あり谷あり。今回は、努力と行動力で道を開いてきたネイリストの桑原絵里奈さんの美容人生にクローズアップ。
【後編】では、独立後のサロンオープンまでのストーリーをお届け。#péil nailのコンセプトやお店の魅力、働き方に対する考え方まで幅広くお聞きしました。
サロンオープン直後、コロナ禍に…調子にのっていた自分に猛反省

――人気サロンで7年の勤務を経て、独立したのはいつ頃でしたか?
最初のお店をオープンしたのは、2020年の4月です。場所は広尾でした。
物件を探すところからすべて自分で準備して、さあまたがんばるぞ! というところで、何とコロナ禍に…。
1ヶ月半、営業ができなくて5月にまた再開したものの、60件あったはずのお客様が10件まで減りました。
――タイミングとしては、相当厳しいスタートだったのですね。
お客様が減っても家賃などの固定費はもちろんかかるし、一人暮らしで生活費も必要、貯金はどんどん減っていく…もう地獄でした。
でもその時に感じたのは、「あぁ、私は調子にのっていたんだ」ということ。
いい感じに独立できたし、みんなにおめでとうも言ってもらえたし、お客様にも来ていただける、これまで通りやれば行ける行ける! みたいな。
結局、かたいお客様は10人しかいなかった。お客様は何も悪くないけれど、自分の実力なんて全然で、サロンに支えてもらっていたんだと。めちゃくちゃ反省して、もう一度、一からがんばろうという気持ちになれました。
――それからどうやって持ち直していったのでしょう?
広尾という地域の特性を調べたらキレイめが主流だったので、デザインもそういった路線を研究しました。
自分のやりたいニュアンスネイルはひとまず横に置いて、まずはお客様に選んでもらえるネイルをしようと。
チラシを配って、ホットペッパーも始めて、ご近所の飲食店の人たちと知り合いになって一緒にご飯に行ったり、つながりも作っていきました。
――コロナ禍にもめげず、すごく努力されたのですね。
お店は持ち直していきましたが、自分の中では正直やりたいことがやれていない、そんな気持ちがありました。
やりたいネイルを叶えるために、知人の協力を得てもう一店舗、表参道にもサロンを出すことに。
しばらく2店舗を経営して、ニュアンスネイルは表参道の客層の方が需要が高く、デザインのテイストもマッチすると感じたので、こちらへ拠点をうつしました。
一度来たら忘れられない、空間にまでこだわったネイルサロンを作りたい

――サロンの内装はお洒落で、すごく印象的です。
ありがとうございます。この物件に引っ越してきた時に、内装はデザイナーさんにお願いしました。
ネイルサロンって、空間にまでこだわったお店はなかなかないと思うんです。だから、扉を開けた瞬間に、「何、ここ!?」みたいな驚きがあるくらい、印象に残るサロンにしたくて。
――今日お店に入って来た瞬間、洞窟かと思いました!
最初は全部の壁をぶち抜いて、広〜い一つの空間にしようと思ったのですが、壁は残してほしいとオーナーさんの意向があり。
だったら個室が何個もあるという造りをいかして、長い廊下を洞窟のようなデザインに…と、いろいろ試行錯誤して完成しました!
ネイルブースの他、お客様の待合スペースや奥にはスタッフルームも作りました。

――サロン名「#peil nail」の由来は?
ペイルはフランス語で「淡い」という意味。#は色の記号で、たくさんの色で色とりどりのデザインをする、という意味合いです。
お店のコンセプトとしては、自分たちの個性をいかすサロン。
苦手なことより、得意なことをどんどんのばして行こう、自分の好きな世界観を推して行こうというイメージです。
――定額ネイルを打ち出していますか?
はい、スタッフそれぞれの定額ネイルがあります。みんなそれぞれ得意なテイストで展開しているので、お客様もその時のやりたいネイルに合わせてスタッフを変える場合も。
担当を変えるのは気まずい…という雰囲気は全くなくて、みんなが交差していくことでコミュニケーションになり、スタッフのデザインの勉強になるとも思っています。

――サロンワーク以外の仕事もされているとお聞きしました。
「henum(へニュウム)」というジェルネイルブランドのプロデューサーをしていて、商材を作ったりイベントに出演したり。ブランドを立ち上げるところから携わっています。
あと中目黒でシェアサロンを運営しているのと、ロンドンにもお手伝いしているところがあります。
――え! 海外にもお店があるんですか?
ロンドンの美容室の一角にネイルスペースがありまして、そちらのサポートをしています。監修のような形ですね。アドバイスしたり、道具を送ったり、私も年2回ほど渡航してネイルを教えています。
これは知人からつながったご縁だったのですが、うちのスタッフで働いてみたいという子がいたのでロンドンに派遣しています。
――インスタに雑貨屋さんのリンクがありますが、それも手がけているのですか?
実は雑貨のセレクトショップも始めたんです。
私はセミナーなど出張が多いので、その時に見つけた可愛いアイテムを買い付けて販売しています。こちらはオンラインです。
サロンに素敵な雑貨を飾ったり、お客様に出す飲み物も可愛いコップで出せたらいいですね。
――ネイルでボランティア活動もされているそうですが。
インスタから一緒に参加してくれるネイリストを募集して、何人かで介護施設でネイルをしています。
私は自分の祖母も介護が必要で、もう亡くなってしまいましたが、若い時は何も手伝うことができませんでした。今自分ができることとして、おばあちゃんたちにネイルで喜んでもらえればと思っています。
若い頃の思い出や経験を刺激されると、認知症が緩和されるという話もあるそうです。
あとは、児童養護施設へはこの春も行ってきました。児童養護施設にいる方は、将来にすごく悩んでいたり不安を抱える人が多いそうです。そういった気持ちが少しでも晴れるように、美容やネイリストという仕事の可能性は無限なんだよというのも伝えたくて。
女性のライフスタイルに合わせて長く働いていける企業を目指して

――働く環境について、何かルールを作っていたりしますか?
うちは自由な働き方が基本です。でも自由って何をしてもいいわけではなく、自由には責任が伴います。自分で責任を取れる行動をしたうえで、自由に働いてほしいです。
――今後、どんなサロンへ成長していきたいですか?
最近はネイルサロンも独立ブームです。サロン勤務せず、自分で場所を借りてオープンする方も多いですよね。
でも、そこから10年先はどうなっているか…年をとって、自分のライフスタイルが変わっていく中で、一人で働いていくのは難しいと思います。
そんな考えもあり、私は企業として長くいられるようなサロンでありたいです。
――女性は特に、ライフスタイルの変動も多いですしね。
産休や育休など、せっかく国のいい制度があるのだから、それを活用して子育てしながら働いた方が絶対にいい。
私は若い頃、制度があることすら知らなかったんですよね。もし知っていたら進む道は変わったかもしれないな〜と思うと、そういう苦労が少しでも減らせる会社でありたいです。
女性のライフスタイルに合わせて何年も辞めずに働いていけるような会社が目標。ネイルもあり、商材の仕事だって可能性はある、独立した子たちも経営に困ったら再就職してもらうのも全然ありです!
――最後に、桑原さんにとって「働く」とは?
う〜ん、これめちゃくちゃ難しい質問ですね。
仕事してお金を稼ぐことは大切だけど、それだけだと心が折れる時もある。だけど、働いていく中で新しい出会いや発見があると、世界が広がるし、働くことにやりがいや楽しさを感じられると思うんです。
そのためには、自分が身を置く環境はしっかり選ぶべき。そうしたうえで、誰かの役に立てることを一生懸命やっていけば仕事も自然と増えていくだろうし、自己肯定感も上がるのではないでしょうか。
――「自分が身を置く環境」選び。最大の課題です!
いい職場を探すのって難しいです。例えば、憧れの美容師さんやネイリストさんがいるサロンへ…と思っても、人間関係なんかは入ってみないとわかりませんし。
憧れの人も、みんな人間なんで(笑)いろいろあります。
その会社のメリットだけでなくデメリットまでちゃんと伝えてくれる会社は信用度が高いと思います。
入りたいサロンがあったら、一度足を運んでみて自分で接客を受けてみる、企業説明会に参加してみるなど、まずは行動あるのみです!
取材・文:青木麻理(tokiwa)
撮影:高嶋佳代
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