銀座から仙川へ。居心地のいいマンツーマンサロンで全世代のお客様をキレイにしていきたい！【Hair Make ibee／代表 太田知佳さん】#2

都内人気店・K-twoで経験を積み、ディレクターまで昇進。表参道や銀座の美意識が高い女性客たちからも支持を得ていた美容師の太田知佳さん。

2023年に独立し、現在は都心から少し離れた地で、子育てをしながらマンツーマンサロンを経営しています。

今回は、出産・育児、コロナ禍、独立…と、ここ数年で大きな変化、そして進化を遂げてきた太田さんにクローズアップ。＜後編＞では、独立開業から現在まで、多忙を極めながらも、自分のスタイルを確立してイキイキと働き続けていける秘訣に迫ります。

お話を伺ったのは…

Hair Make ibee　代表　太田知佳さん

長野県出身。地元の美容専門学校を卒業し、横浜のサロンへ就職。K-twoに転職し、表参道・銀座の店舗でスタイリストとして活躍。2023年に独立。調布市で「Hair Make ibee」をオープンさせ、カウンセリングから仕上げまで、すべてマンツーマンで行う予約制の貸し切りプライベートサロンを経営している。その人の持つ個性を引き出しながら、今っぽいトレンドもさりげなく盛り込んだ抜け感スタイルが得意。働く女性、ママ世代のみならず、新店オープンからは60代、70代のお客様も増えている。

銀座から仙川へ。街の雰囲気も客層も変わり、世界が広がった

――新しいお店は、日差しがたくさん入って気持ちがいいですね。内装もシンプルで居心地がよさそう。

ありがとうございます！ 内装は、デザイナー等は特に入れてなくて、自分でいろいろ考えて工務店さんにお願いした形です。コンクリートのお洒落な雰囲気もかっこいいな〜なんて思ったりもしましたが、白と木だけでシンプルに、柔らかいイメージに仕上げました。

――慣れないお店作り、しかも子育てしながらで大変だったのでは？

上の子は保育園にあずけて、下の子はまだ小さい時だったので世話をしながら。自分だけでどうしてもできない時は、夫に業者さんとの打ち合わせに行ってもらったりして、何とかオープンにこぎつけました。

美容室の建物の造りって、保健所の決まりがけっこうあるんですよね。配管が一段上がってないといけないとか、ここは仕切りが必要、幅はどのくらい……などなど。すべて自由に作れるわけではないので、その辺をクリアにしながら動線も考え、イメージに近づけていった感じです。

――場所は京王線の「仙川」という駅。前サロンとはうってかわって、かなりゆったりとした雰囲気の街です。

駅前は開発が進んで、新しいお店や施設なんかも増えてきました。でもだいぶのどかですよね、道の横には野菜の無人販売があったりして（笑）。駅からけっこう歩くにも関わらず、K-two時代のお客様はたくさん来てくださっていて、本当に感謝しかないです。

駅からは遠いのですが、サロンのまわりは住宅が多く、ご近所の方々には近くて通いやすいから便利とのお声も。2階なのでみなさんに見つけてもらえるよう、下の看板はちょっと大きめに目立つようにしました。

一生通えるサロンを目指して。予約制のマンツーマンサロンにこだわる

――「Hair Make ibee」のコンセプトは？

コンセプトは、「一生通えるサロン」。落ち着いたアットホームな雰囲気で、友達の家くらい気軽に来られるようなサロンを目指しています。

サロン名「ibee」の由来は、植物のアイビーからです。花言葉が「友情」や「深いつながり」といった、そんな絆を大切にするような意味合いで、ぴったりだなと決めました。お客様と一生つき合っていける関係性を大事にしながら、長く続けていきたいです。

ちなみに、「ivy」でなく「ibee」なのは、ご年配の方でも読みやすいようにと、義理の母のアイデア。おばあちゃまたちにもたくさん来ていただきたいです！

――客層はやはり変わりましたか？

そうですね、以前は30〜40代くらいの女性客が多かったのに対し、こちらへ来てからは、上は70〜80代の方もいらっしゃいます。客層が変わったというよりは、だいぶ広がったという感覚です。同じビル内に義理の弟の整形外科がありまして、そこに通ってらっしゃる患者さんも来ていただいたり。

――オーダーの内容もいろいろ変わってきそうです。

今までに巻いたことのないような、ものすごく細いロッドでくりくりパーマにしたり（！） 20年近く多くのお客様を担当してきましたけど、まだまだ知らない世界があるし、もっと素敵にできるいろんなやり方があるはず！ と日々、試行錯誤です。

――セット面もシャンプー台も一つのみ。完全マンツーマンスタイルですか？

アシスタントもなしで、私一人のみです。広さ的にはもっと席を作れますが、中途半端な人数だとお客様も話がしずらいだろうし、いつでもリラックスしていただけるよう貸し切り状態の営業にしています。

完全に一対一だと、お客様といろんな会話をしますよ〜。私も子供がいるので、子育てについて、旦那さんについてなんかも話しますし、一緒に涙ぐんじゃったりして。おばあちゃまからの人生のアドバイスは本当に貴重です。

――作業的には一人だとやはり大変じゃないですか？

う〜ん、大変、面倒と思ったことはほぼないですね。そこまで予約は詰められませんから、自分のペースと予定を見ながら、確実に施術・対応できるようスケジューリングしています。一人だと必然的に全部の流れを把握して組み立てることになりますが、私はその方がやりやすいタイプかもしれません。

――予約は一日にだいたい何件くらい？

平均すると、一日3、4人です。10時半から17時まで、毎日この定時で営業しています。朝子供二人を保育園にあずけてサロンへ、終わったらお迎えに行くというルーティーン。

この4月から上の子が小学校に入るタイミングで、サロンの近くに引っ越してきます。自宅とサロンが近くなるので、うまく調整しながらいろんなことに挑戦していきたいです。

全世代のお客様を素敵にしたい！ 私の美容魂がここにきて再燃

――サロンを立ち上げて、新しく始めたことは？

お客様のカルテ管理を「ライム」にして、完全にデジタル化しました。使用した薬剤などを記録しておくのは今までもそうですが、写真を撮って画像保存できる点がとても便利。

仕上がりの写真を残しておけば、「前回よりもちょっとだけ長めにしたい」のような次回のオーダー時にも目で見て確認しやすく、お客様ともデータを共有できるのでお互いイメージしやすいです。

LINEと連携しており、お客様とのやりとりもできます。カットした日は必ずメッセージを送りますし、髪の相談を受けたりなど、お客様との距離は前よりさらに近くなりましたね。一人でやっているからこそ、こういう効率的なシステムは取り入れていきたいです。

――今後、挑戦したいことはありますか？

髪だけでなく、メイクや着付けにも力を入れていきたいです。着付けは免許を持っていて既にできるので、今後、お客様の成人式や記念日などでヘアメイク＆着付けのトータルでお手伝いできたらうれしいです。（ただし着付けは朝早いので、子供がもう少し大きくなって自由がもっときくようになってきたら本格的に始動したいです！）

――メイクはこれまでもやってらっしゃいましたよね？

はい、でも撮影用のメイクがほとんどでした。モデルさんにだけでなく、一般のお客様にもメイクをしてもっと素敵に変身してもらいたいです。

ナチュラルなベースメイクってすごく難しくて、その技術をもっとしっかり学びたい。以前、ご高齢のお客様のシミをベースメイクでカバーして仕上げたんですね。そうしたら、「お化粧でこんなに簡単にキレイになれちゃうのね〜！」と、すごくキラキラされていて。こちらもうれしくなりましたし、「年を重ねても、もっともっと美しくなれるんですよ！ むしろ美しくします!!」と、私の美容魂が再燃しています。

「Hair Make ibee」にしたのも、髪とメイクを両方やっていきたいという思いから。これからチャレンジしていきたでいす！

――最後に、太田さんにとって「働く」とは？

私にとっては「ライフワーク」。プライベートと仕事の境界があまりないタイプかもしれません。お客様をキレイにすることも、会話をすることも大好きで、それが全力で仕事としてできるなんて！ という思いです。

年をとっておばあちゃんになっても、「素敵な髪型にしたいの」「このシミをとりたいのよ」という気持ちがあるのって最高じゃないですか。自分自身もそう思いたいし、お客様のそういう気持ちにずっとずっと応えていきたい。そんな関係性を大切に、美容師を続けていきたいと思っています。

取材・文：青木麻理（tokiwa）
撮影：高嶋佳代