「今日からカラーリスト」。自分の強みを宣言して集客に成功【美容師 イトウチナツさん】♯2
東京・阿佐ヶ谷でオープン10年目を迎える美容室「Lucky3349」。夫であるオーナーや、ほかのスタッフとともに働くのが、美容師歴20年のイトウチナツさんです。
前編ではイトウさんが美容師となったきっかけや、新人時代にぶつかった壁について伺いました。
後編ではイトウさんのスタイリストデビュー後について伺います。スタイリストとしてデビューしてから、思うようにお客様の心をつかむことができなかったというイトウさん。先輩に相談したところ、イトウさんがカラーの技術が得意だったことから「今日からカラーリストを名乗ってみたら?」とアドバイスをもらったそう。自分の強みを明確にしたことで、徐々にお客様がつくようになったといいます。
お話を伺ったのは…
イトウチナツさん
美容専門学校卒業後、全国にチェーン店を展開している美容室の高円寺(東京)店で働き始める。25歳のとき、尊敬している先輩の独立についていく形で転職。その後、夫である現オーナーが経営を引き継ぎ、「Lucky3349」が誕生。現在は2児の子育てをしながら美容師を続けている。2025年5月には新会社を立ち上げて代表取締役となり、自宅近くの京王線・聖蹟桜ヶ丘駅(東京)でバーを併設した美容室「QVIZm hair department」をオープン。
インスタグラム
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お客様の心がつかめない日々。強みを前面に押し出してアピール

――美容師として壁にぶつかったことは?
スタイリストになってしばらく経ってからも、あまりお客様がつかなくて、そのときは不安を感じていました。アシスタント時代というのは、先輩たちに教えていただいて技術を身につけて、ステップアップしていく形だったのが、デビューをしてからは急に独り立ちをしたような気がしていて。すべてにおいて、自分次第のところがあって、成果がついてこないことに焦りを感じていました。
――それはどのようにして乗り越えたのでしょうか。
ある先輩からのアドバイスで乗り越えることができたと思います。その先輩から「一番好きな技術は何?」と聞かれて、カラーの施術が好きだったのでそのように答えたら、じゃあ「今日からあなたはカラーリストね」と言われたんです。自分が好きな技術をひとつだけ前面に押し出してみたら、そこに反応してくれるお客様がいるよ、と。
確かに色彩検定やカラーコーディネーターの資格も所持していたので、間違いではないと思い、集客サイトのプロフィールにもカラーリストと付け加えました。実際、そこから徐々にお客様が増えていったんです。
自分では何が強みなのかが分からなかったですし、専門家を名乗ることに対して少し抵抗感もあったのですが、打ち出してみたことでお客様に届きやすくなったのだと思います。またもっと専門性を持って仕事に臨まないといけないと、自分の技術に対する責任感も覚えるようになりました。今でもカラーを求めるお客様が多いので、あのときの悩みがあってよかったなと思います。
アシスタント時代から約20年。お客様と長くつながれる幸せ

――美容師としてやりがいを感じたエピソードを教えてください。
入社1年目のアシスタント時代からかかわらせていただいている、ある女性のお客様のことが印象に残っています。当時私の先輩スタイリストのお客様だったのですが、2回目にアシスタントに入らせていただいたときに、「○○ちゃん、お元気ですか」と娘さんのことをお聞きしたんです。そうしたら「一度しか伝えていない娘の名前を覚えていてくれた」ととても喜んでくださって。
私がデビューしたときにも私に担当してほしいと言ってくださり、そこからは私のお客様になりました。今でもこのお店に通ってくださっていて、今年で20年ほどになる、一番お付き合いの長いお客様になりました。
美容師の仕事は技術力ももちろん大切ですが、お客様と人と人としてつながれることも大きなやりがいだと思っています。シャンプーしかできなかった当時の私を気に入ってくださり、何十年も付き合いが続く。お客様にはいつも感謝しかありません。
――美容師として心がけてきたことは。
先ほどの話しともつながるのですが、お客様の情報を忘れないようにすることです。お客様の施術内容はもちろん、プライベートな情報などはすべてカルテに残すようにしています。こういった情報がきちんと頭に入っているかどうかで、お客様の信頼度が大きく変わる気がしています。
またお客様のプライベートに土足で入っていかないことも気をつけるようにしています。私自身が、距離感の近い、フレンドリーすぎる美容師にはすごく抵抗感があって。お客様に「どんなお仕事をしているのですか?」とか、「今日、このあとのご予定は?」というような感じでずかずかと踏み込んでいくのではなく、お客様が好む距離感を把握して、そのラインからはみ出てしてしまわないように接客することはとくに心がけていますね。
――どのようにすればお客様の好む距離感を知ることができるのでしょうか。
入り口はあくまで美容のことから、少しずつお客様を知るようにしています。カウンセリングをしながらお客様の反応を見て、おしゃべりが苦手そうであればあまりこちらからは話しかけないようにしていますし、たくさんお話しをする方でしたらお客様のお話ししたいことを引き出したり。そうすることで徐々にお客様の情報が集まっていくのが、美容師とお客様の理想的な形だと思っています。
仕事がプライベートを、プライベートが仕事を輝かせる

――今後の目標を教えてください。
5月に私が代表取締役として新たな会社を立ち上げて、自宅近くの京王線・聖蹟桜ヶ丘駅に新たな美容室を立ち上げました。夫が自宅の近くにいい物件を見つけてきてくれて、「今度はあなたが代表として、子育てと仕事を両立しやすいようにお店をやってみない?」と声をかけてくれたんです。
自宅近くでもお店を構えることによって、お客様のニーズを満たしつつ、さらに自分の子育てと仕事の両立ができる状態を目指していきたいと考えています。また将来的には同じように子育てをしているママさん美容師がお互いを助け合いながら働いたり、お客様が子連れで来店されても安心できるような空間を作れたらなと思っています。バースペースも併設する予定なので、このお店を起点にさまざまな人とつながれたらうれしいです。
――イトウさんにとって働くこととは?
元々は私の人生のほとんどを占めていたものですが、子どもが生まれてからは、少しずつ仕事に対する捉え方が変わってきた気がします。仕事の充実がプライベートの充実につながるし、プライベートの充実が仕事の充実にもつながる。どちらもかえがえのないものです。
今後、新たなサロンを出店することで、さらに仕事もプライベートも大切にできるようになればと考えています。
終始にこやかに、ご自身の美容師人生について振り返ってくれたイトウさん。ご自身を飽きっぽい性格だと称されていましたが、お客様やスタッフ、家族など、ご自身の周囲にいる人を大切にすることでマンネリ化することなく仕事を充実させてきたのだと感じられました。そんなイトウさんが、新たにオープンさせるサロンも、人と人がつながる素敵な空間になるのではないでしょうか。
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Lucky3349
東京都杉並区阿佐谷南3-34-9
03-6873-6158
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