【子育て応援メソッド】「お母さんともっといたい」子どもの一言で仕事と育児のバランスを見直し MICHIさん #1
美容業界で働くワーママ・ワーパパたち。子育てには目に見えない細かなお世話もあり、時間に追われている人も多いと思います。そんな多忙なママ・パパに「仕事と育児を両立するために助けられているもの」をインタビューする「子育て応援メソッド」。
今回は、フリーランス美容師&ヘアメイクのMICHIさんにインタビュー。産後すぐに仕事復帰したかったけれど、保育園が見つからず、託児所併設のサロンに移られたお話を伺いました。
土日もベビーシッターを雇って働いていたが…
――出産をきっかけにフリーランスになったのですか?
「いえ、40才で出産したときは、別のサロンでフリーランスとして働いていました。産後すぐに仕事復帰したかったのですが、保育園が見つからなくて。保活で悩んでいたところ、現在所属しているPaL at Lanai(パルアットラナイ)に提携託児所があることを知り、移ることになりました」
――お子さんが何才のときですか?
「生後4ヶ月のときです。当時は、出産前と同じペースで仕事をしなければという思いが強く、平日週5日の月極で提携託児所に預かってもらい、さらに土曜は託児所に別料金を払い、日祝日に予約が入ればベビーシッターを雇って働いていました。高い保育料でしたが、『キャリアを保つため』と自分に言い聞かせていましたね。いまなら、それは無理な働き方だと分かるのですが…。でも、ここでポイントを稼げたので、次の春に認可保育園に入ることができました」
――出産前と同じペースで…という気持ち、よく分かります。フリーランスだとなおさらそう思ってしまうのかもしれませんね。
「そうかもしれません。そんな働き方を続けて、息子がちょうど2才になった頃でしょうか。ベビーシッターさんが来る日の朝、ふと、『お母さんともっといたい』と言われたんです。そのときに、ハッとしました。私にとって、たぶん最初で最後の子育てなのに、こんなに仕事を優先していいのだろうか。子どもが『一緒にいたい』と言っているのに。もちろん仕事も大事だけれど、いま、この瞬間のほうがきっと大事なんだろうなと思って、お客様に手紙を書きました。
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日曜に予約をいただいておりましたが
保育園のない土日にお受けすることができなくなりました。
平日も夕方以降のご予約をお受けすることができません。
本当に申し訳ありませんが、何卒ご了承ください。
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――お客様の反応はいかがでしたか?
「『全然いいですよ』と温かく対応してくださるお客様ばかりでした。『え? 予約とれないんですか』という方がひとりもいらっしゃらなくて、本当にありがたかったです。長いお付き合いのお客様が多かったので、ご理解いただけたのかもしれませんね。『お子さん、連れてきていいから』というお客様には、保育園にお迎えに行ってから、子どもを連れて対応させていただいたこともありました」
――仕事もしたいし、子どもも大事だし。どっちもがんばりたいという気持ち、すごくよく分かります。
「育児雑誌には、『高齢出産は、精神的にも経済的にも安定しているから穏やかに子育てできる』なんて書いてありますが、どこにそんな余裕があるの? という感じでした。それまでの自由な生き方と育児とのギャップは、想像をはるかに超えていました。
とくに産後すぐは、ほぼ1日授乳しているのに、飲んでいるのかどうか分からない。うまくできない。でも、ちゃんとしなきゃという思いが交錯して、産後うつの一歩手前になってしまい、区の産前産後センターに泣きながら電話したこともありました。助産師さんがすぐに来てくれて、「お母さん辛かったね」と言葉をかけてくださって、号泣しました。聞いてくれる、分かってくれる人がいるということが本当に心強くて。その助産師さんとは今でもずっとつながっています」
業務委託も受けているので集客の悩みはなし
――産前産後センターに電話したことは大正解でしたね。現在のサロンでは、仕事と育児は両立しやすいですか?
「PaL at Lanaiは、ママ・パパ美容師がとても多いので、いろんな事情を分かってくれていて、本当に働きやすい環境を提供してもらっています。子どもが保育園で熱を出し、急遽お迎えに行かなくてはいけなかったときは、お客様の対応を他のスタッフに代わってもらったこともありました。
以前のサロンでは、完全な面貸しでSNSでの集客などもしていなかったので、お客様が減ってしまうこともありました。女性のお客様は、結婚・出産・郊外への引っ越しなどでライフスタイルが変わっていくと、それまで通っていた美容院に行くのが大変になる場合も多いですからね。現在は、サロンの業務委託も受けているので、ありがたいことに集客の悩みはありません。
オーナーは2児のパパで、まだ若いのですが、すごくしっかりしています。『お子さんが大きくなったら、いつでも社員になってくれていいですよ』と言ってくれる頼もしい人です」
――それは心強いですね。他にもフリーランスのメリットはありますか?
「保育園のイベントなど前もって都合がつけやすいことです。運動会や保護者会などは、平日に行われることが多いのですが、予定が分かっている日は予約を受けないようにして、保育園のイベントに参加するようにしています。
フリーランスは自分で時間を作れるので、出産前は、英語や料理を習ったりしていました。いまは子どもが小さいので難しいですが、自分の時間を充実させることができると思います」
――ヘアメイクのお仕事もされているのですよね?
「はい。雑誌のほかにウェブ媒体含め、月に4~5回というペースです」
――ヘアメイクのお仕事も保育園の時間内でおさまりますか?
「コロナ禍で保育園の延長保育がなくなり、18:30までにお迎えに行かなくてはいけないんです。以前は、ママ友にお迎えをお願いしたこともありましたが、コロナになってからはそれも控えているので、いまは保育園のお迎えに間に合う仕事のみ受けるというスタンスです。朝早い仕事は、夫に保育園の送りを頼めるかどうか確認してから受けるようにしています」
――現在の保育園はどんな園ですか?
「渋谷区の私立保育園なのですが、先生方が本当によくしてくださいます。夏祭りでの縁日ごっこでは、風船釣り、わにわにパニックとブースをまわる毎にスタンプを押していき、スタンプラリーを全部まわったらお菓子をもらえます。子どもたちは大喜びです。保護者の参加人数を前もって伝えておくと、調理師さんが手作りの軽食を用意してくださったり。親が準備する保育園も多いとお客様から聞きますが、先生方がすべて準備してくださいます」
――忙しいパパ・ママは助かりますね。
「本当にその通りです。今年はコロナ禍で外向けのイベントはほとんどなくなりましたが、園内では縮小して開催されていて、後で写真販売してくれるので、保護者もイベントの様子を見ることができます。保育園の先生たちが素晴らしくて、0才から通っていてお友達とも仲良くなっているし、ママ友とのつながりもできていたので、引っ越しで家が遠くなってしまいましたが、片道50分かけて通っています」
MICHIさんが助けられているものは
産後すぐは、仕事と育児のバランスに大いに戸惑ったそうですが、お子さんの一言が心に響き、仕事をセーブするようになったMICHIさん。それを理解してくれるお客様やサロン環境に助けられています。
1.長いお付き合いで培ったお客様との信頼関係
2.育児を理解してくれるクライアントやサロン環境
3.保護者の負担の少ない保育園
後編では、ご主人の育児協力や、ママになったことで美容師・ヘアメイクの仕事にどんな変化があったかなどを伺います。
▽後編はこちら▽
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撮影/古谷利幸
取材・文/永瀬紀子