ネイリストの独立 一人の環境ではなく、スタッフがいればネイルの世界はもっと面白くなる Vol.17【AOEWD 代表 米山成美さん】#2

美容業界で働く上で「独立」という目標を持つ人は多いはず。そんな人に向けて、独立して成功されている先輩オーナーの方々の経験談をお届けする本企画。

前回に引き続き、「AOEWD」代表の米山成美さんにお話を伺います。恵比寿と代官山に2店舗を構え、スタッフは現在9名体制。米山さんが選んだのは自分一人のお店ではなく、スタッフと意見交換ができるお店でした。

後編では、米山さんの教育スタイルや、スタッフを抱えるメリットを伺います。絶えず「新しさ」を生み出し続けるサロンづくりのヒントがここにありました。

「この人が良い」と求めてもらえるネイリストに育てたい

――米山さんの教育スタイルを教えていただけますか?

とにかくオリジナルのものをつくってほしい、ということを口うるさく言っているんです。外部からはうちのお店は「デザイン性が一貫している」とよく言われるのですが、それは良くもあるけど、新しい発想にかけるという意味では悪い部分でもあるのかなと。

スタッフのみんなには「普段可愛いと思って洋服を選ぶ感覚で、ネイルも自分が本当に可愛いと思うデザインを作ってほしい」と伝えています。誰々のアートがすごいから真似をする、という発想自体を遮断してほしいんです。ネイルのデザインは見るな! とも言っていますね。

あと、ミーティングのときも必ず一人一回以上は発言するようにしています。聞いているだけのミーティングって結構多いと思うんですが、それってただの時間の無駄だと思うし、お店のみんなが集まる機会はあまりないじゃないですか。それに今の時代、自分の意見を大人数の前で発言することって貴重だと思うんです。1対1でなら自分の考えを話しやすいけど、大人数を前にしてもきちんと自分の考えを伝えられることが大事だなと。というのも、スタッフには意思を持って働いてもらいたいからなんです。

――意思を持つということは、自分ならではのデザインを持つということに通ずるのかもしれませんね。

そうですね。お客様に「担当は誰でも良いよ」と言っていただけると経営的にはラクなんですけど、私が今まで積み重ねてきたネイルは「誰でも良い」と思っていたらできないことばかりだったし、自分を求めてもらえることに喜びや楽しさを感じてきたので。せっかく技術者として働くんだったらそういう喜びを感じてほしいし、そうやってステップアップしていけるような環境にしたいと考えています。

――こちらのスタッフさんたちはどんな方々なんでしょうか?

もう、クセが強い(笑)。クセが強すぎてまとめられないくらい。まあ、私がそういう子ばかりを採用しているからなんですけどね。面接をするときに、やっぱり個性がある子に惹かれるので、結局動物園みたいなサロンになっちゃうんです(笑)。

とはいえ、彼女たちはまだまだ主張は足りないですけどね。私が今まで散々主張してきた方なので、当時の私に比べたら全然。私的にはもっと仕事の意見を言ってほしいと思っています。

――2店舗目となる「AOEWD Atelier」もスタッフさんの成長を考えてのオープンだったとか。

恵比寿の「AOEWD」は駅から徒歩2〜3分と近いので、アクセスの良さで来てくれるお客様が多くて。より一層自分のデザインを極めて「自分のスタイルはこれです!」という子がのびのびと活動できる環境をつくろうと思って、代官山に「AOEWD Atelier」を出したんです。恵比寿で指名がついてきたら代官山に移って完全指名制でやる、という感じですね。「この人にやってもらいたい」と思ってもらえる子に育てたいので、1対1の空間を大事にしたかったんです。

スタッフがいる環境の方が刺激的

――ネイル業界では一人でお店をやっている人も多いですが、米山さんにとって多くのスタッフさんを抱えてお店を経営する良さとは何でしょうか?

自分では思いつかないことを吸収できることですね。正直、独立って自己満足との境目が際どいと思ったりもしていて…。自分のやりたいスタイルで働くことができるし、自分で全部決められるし、自分の発信するデザインでお客様が来てくれる。それらはメリットでもあるけれど、私にとってはマイナスポイント。だって自分だけの世界だと刺激はないですよね。他のスタッフのデザインを見て「可愛い!」「こういう考えもあるんだ」と感動することができないですから。私とスタッフとでは着眼点も疑問に思う部分も違いますが、そこが良いんですよね。スタッフを抱えての経営はそれなりに大変なことは多いけど、自分一人の環境の方がつまらないと思っちゃいます。

――代表となった今でもネイル活動は充実されていますか?

経営者とネイリストとしての脳の使い分けに苦戦はしていますが、ネイルにも没頭できています。このお店のコンセプトは「新しいものを生み出す」なので、自分もそれをやめたくないですね。

――これからの目標を教えてください。

スタッフ教育の大変さを実感した今、人として向き合うことを大事にしていきたいと思っています。ネイルの技術は少しずつ任せられるようになると思うので、私はスタッフ一人ひとりの考え方に寄り添っていきたいですね。100店舗出すぞ! とか全国展開は全く考えていないです(笑)。

また、今まではビジネス志向だったんですが、今世の中の考え方がどんどん変わってきているので、私たちもシフトしていく時なのかなと思っていて。サスティナブルな思考が広がって、ネイルを華美にすること自体が疑問視されるようになってきているのかなと。ネイルってすごく人工的なものじゃないですか。それをどうやってお客様のニーズに合わせていけるかを考えていかなくてはと思っています。

うちのお店は尖ったデザインをすることも多いこともあって、外部からはデザイン性で売っていると思われがちなんです。でも、本来の自爪に立ち返ることを怠ってはいけないし、自爪がどうあるべきかを追求していきたいですね。

ちょうど今、セルフネイラーさんに向けて動画を配信しているところなんですが、やっぱり自粛期間中にネイルをオフしている人が多くて、「みんな今はこういう気持ちなんだよな」ということを身をもって実感しています。今のこの状態からジェルネイルをやりたいと思う瞬間ってどんなときだろう? とか、このデザインを良いと思う人ってどういう考え方なんだろう? とか、そんなことをいつも考えています。

――コロナでネイルのあり方も変わったと感じますか?

すごく変わったと思うし、これからもっと変わっていくと思います。だから、今あるものに満足しないで、色々な角度から追求していかないといけないと思っています。

独立を目指すあなたへ

偉そうなことは言えないけど、なぜ独立するのかを見つめ直し、それを忘れないことです。私は独立して6年目になりましたが、年月が経つごとに「自分が独立したのは何でだっけ?」と思い返すことが多くなりました。どんなことがあっても「私はこういう想いで独立したんだ!」と思い返せば続けていけると思うんです。独立した理由がはっきりしていない人や勢いだけで独立しちゃった人は、「もういいや」と簡単に手放してしまいますからね。ネイルは個人でやる人も多いので、そういう意味では自分との戦いなんです。だから個人でやる人ほどなぜ独立したのかを忘れないでください。(AOEWD代表 米山成美さん)

▽前編はこちら▽
ネイリストの独立 任されたことに全力を尽くしてはじめて「独立」を選択できる Vol.17【AOEWD 代表 米山成美さん】#1>>

取材・文/佐藤咲稀(レ・キャトル)
撮影/岩田慶(fort)

Salon Data

AOEWD 恵比寿店

住所:東京都渋谷区恵比寿 1-7-12 西原ビル3F
TEL:03-6277-4076

AOEWD/Atelier 代官山

住所:東京都渋谷区恵比寿南3-6-7 第2十一ビル3F
TEL:03-6412-8636

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