1つのことに固執しない。美のオールラウンダーを目指せば仕事の幅がグンと広がる!【ティナロッサ代表・齊藤あきさん#2】
起業からさまざまな問題を乗り越えて、順調に業績を伸ばしているサロン経営者に秘訣を伺う本企画。
前編に続いて「スキンケアサロン ティナロッサ」の代表、齊藤あきさんをご紹介します。前編では美容師からエステティシャン、そしてサロン経営者になるまで、さらに2011年に起きた東日本大震災をきっかけに化粧品を開発したお話を伺いました。後編では、このコロナ禍による試練をどう克服したのか、また経営を継続させるために齊藤さんご自身が心していることなどをお話しいただきました。
お話を伺ったのは…
スキンケアサロン ティナロッサ
代表 齊藤あきさん
岩手県出身。地元の美容専門学校を卒業後、岩手と東京で美容師としての経験を積む。その後、大手化粧品会社のプレステージサロンにエステティシャンとして勤務。2008年に美肌・美髪専門サロンを開業する。パーソナルビューティプロデューサー、毛髪診断士としてさまざまなメディアに出演するほか、講演会やセミナーの講師としても活躍している。近著に『美髪ケア大全』(主婦の友社)が。
コロナでサロンの売上は激減。その代わり化粧品の監修などの仕事が激増
――2020年に始まったコロナ禍で、どのサロンも売上が激減しています。
外出制限もありましたから、サロンにいらっしゃるお客さまの数は減りました。今もまだ外出を控えているお客さまもいらっしゃいます。そうは言っても、お客さまとのお付き合いは10年を超える方がほとんど。直接サロンにいらっしゃらなくても、私のことを心配してお電話をくださる方も。忘れないでいてくださるのが、とてもありがたいですね。
――売上の減少には、どのように対処なさいましたか?
サロンでの仕事が減ってしまった代わりに、化粧品の販売や開発のための監修、それと本の監修などの仕事が立て込み、売上をカバーすることができました。
――齊藤さんは美容師免許のほかにいろいろな資格を持っていらっしゃいます。それも役立っていますか?
1つのことに固執しないことも大事です。「サロンが上手くいかないなら、ほかのこと」と切り替えることができます。長年お客さまに接しているうちに、肌や髪のケアだけでは根本的な問題解決にはならないことに気づきました。内側から美しくなれるものと言えば食事ですよね。それで東洋医学をベースにした「望診法(ぼうしんほう)」を3年かけて学びました。お客さまからご希望があれば、LINEを使って食事の指導をすることもあるんですよ。
――収入が減ってしまったとき、やってはいけないことはありますか?
価格を下げることと、接客やサービスの質を下げることですね。価格を下げるのは、自分とお店のブランドを安売りすることと同じです。それにいったん下げた価格を上げるのはとても難しいですよ。サービスの質が下がると、お客さまにはすぐ分かってしまうもの。それがいっそう客足を遠のかせる原因になります。逆に少しでも質を上げる努力をしたいですね。
ご自身が大切にしているコンセプトがあれば、困難なときこそその軸がブレないように意識するといいと思います。
常に2~3歩先を見据え、時代の変化に対応できる力が必要!
――齊藤さんは14年にわたってサロンを経営しています。経営を継続させるにはどんなことは必要でしょうか?
お客さまあっての商売です。常にお客さま目線の気持ちをもって、謙虚さを忘れないことでしょうか。
例えば、このサロンでは1日3名のお客さまに限定しています。カウンセリングに時間をかけていることもありますが、施術が終わった後のおしゃべりを楽しみにしてくださっている方も多いです。私はお客さまの時間を大切にしたいと思っています。
それに1日に3名を超える施術をすると、私が疲れてしまいます(笑)。自分のコンディションが落ちている状態で、施術をするのは失礼ですよね。
あとは流行や時代の流れに乗り遅れないことでしょうか。今はSNSが普及して、お客さまの方が情報を早くキャッチしていらっしゃることも。私たちは最先端の情報の引き出しを持てるように、常に学び続けることが必要です。そうは言っても、流行に流されてはいけません。ご自身の理念がブレないように注意したいですね。
――齊藤さんご自身が壁にぶつかったときは、どんなことをなさいましたか?
先ずは自分から動くことですね。行動することでアイデアやひらめきが降りてきます。
毛髪診断士や望診法指導士の資格も、私自身の引き出しを増やしたくて取得したものです。勉強するなかで身につけたことにオリジナルメソッドを加えれば、ほかのサロンと差別化することができます。
ただ頭の中で考えたり悩んだりするだけでは、解決策は生まれません。
――これから起業を考えている方に、成功させるために必要なことを教えてください。
不安になることも多いと思いますが、先ずは行動を起こすことです。中途半端で終わる方が多いので、最後まで突き進んでください。まずはゴールを設定して。その目標をクリアするためのロードマップをつくること。このマップをいつも目に付く場所に貼り付けておくといいでしょう。携帯の壁紙にしてもいいですね。目標をクリアする期限を決めておくことも重要です。成功しなかったときに備えて自分にちょっとした罰を考えておくと、頑張れるかもしれませんね(笑)。
日本人は周りの目を気にしすぎだと思います。常識にとらわれず、ご自身の信念や直感を大事にしてください。最終的にご自身で決めることなのですから。自分自身に誇りを持ってください。
美容業界で起業するには資格や技術力も必要ですが、最終的にその人の魅力や人間力がいちばんの武器になります。その人の魅力に共感しなければ顧客はつきません。自分自身を磨く努力を怠らないでください。憧れる人を真似ることから始めてもいいでしょう。
エステサロンはある意味、どなたにでも開業できます。店舗が多いですから、魅力がなければすぐに淘汰されてしまいます。常に時代を読んで、これから先に何が必要なのかを考えることも大切です。
――失敗しないための心構えはありますか?
起業するとどうしても売上を第一に考えがちですよね。真っ先に考えるべきなのは、何がお客さまの役に立ち、何をすれば喜んでいただけるか、ということ。お金はそのリターンです。
起業すれば、自分がやりたかったことに何でもチャレンジできます。そのためにもセルフブランディングをしっかり行って、ブレない軸を作ってください。
齊藤さんが考える起業を成功させる3つのポイント
1.1つのことに固執せず、いろいろな引き出しをつくっておくこと
2.常にお客さま目線で考え、謙虚さを忘れないこと
3.時代の2~3歩先を読みつつ、流行に流されない軸を持つこと
今年で14年目を迎える「スキンケアサロン ティナロッサ」の代表として、いろいろな出来事を乗り越えてきた齊藤さん。お客さまファーストの姿勢だからこそ、10年を軽く超える「もうひとつの家族」のような関係が築けるのかもしれません。
撮影/森 浩司