面接を通過できる人の共通点は「一緒に働いているイメージが湧く」人【MINX shibuya smart salonディレクター 取締役 池戸 裕二さん】#3
美容師を目指す学生、新天地を目指すスタイリストさんにとって、避けては通れない就職活動。晴れて採用を勝ち取るためには、どんな準備が必要? 心がまえは? そんな疑問を、実際のサロン採用担当者にインタビュー!
教育サロンとして信頼と実績のある「MINX」。前回に引き続き、「MINX shibuya smart salon」のディレクター兼MINXの取締役である池戸 裕二さんにお話をお聞きします。
第3回となる今回は、面接のポイントについて。MINXの主な面接フローは、集団面接とサロンワークとのこと。面接内容の詳細やそれぞれどんなところを見ているのか、詳しく教えていただきます。
お話を伺ったのは…
MINX shibuya smart salonディレクター 取締役 池戸 裕二さん
松本理容美容専門学校卒業後、1997年より、MINXに入社。多くのヘアスタイルを提案し、メディアの第一線で活躍を続け、数々の賞を獲得するなどプレイヤーとしての実績は多数。役職を歴任し、現在は取締役に就任。採用担当として店舗運営を担う傍ら、ヘアショーや技術セミナーの講師などサロンの垣根を越えて業界の発展のために尽力しており、活躍の場は広い。
志望理由は将来のビジョンに紐づけた回答にすると採用の確立が上がる
――面接のフローをお聞かせください。
全部で、一次・二次・三次と面接があります。一次は会社の役員と各サロンの代表者およそ15名が面接官となり、一人ずつ名前、自己紹介、自己PRをしてもらいます。二次は、複数のグループを作る集団面接。三次でサロンワークを行ったあと、最終面談で終了です。
――まずは、一次試験について教えてください。
MINX全店舗の代表者が一斉に集まり、半日かけて面接を行います。面接官の人数は10名ほど。その人数の前で1人1分ずつ自己PRをしていただく形です。
――一次面接で求めることは?
大勢の前で話すのは緊張すると思いますが、できるだけ元気良くハキハキ話してもらえると印象に残ります。
1人で10名以上の試験官を目の前にして話すので、在籍しているスタッフからも「あのときは緊張した」とよく言われます(笑)。そうした声があるのは認知のうえ、我々もできるだけ和やかな雰囲気作りを意識していますので、安心して受けにきていただきたいですね。頑張って暗記したものも緊張で忘れてしまう方もいらっしゃいますが、まずは自分らしく、笑顔で元気に話してもらえると嬉しいです。
――では、二次面接について伺います。必ず聞いていることはありますか?
まずは、どんな美容師になりたいのか、将来のビジョンについて質問をします。それに付随して、なぜMINXが良いのかという理由も聞いています。
大体の人が教育カリキュラムが手厚い点を理由にしているため、そのカリキュラムを元にどんなことができるようになりたいのか、将来目指している美容師像に紐づけて考えた理由が聞きたくて。「MINXの教育カリキュラムを身につけたい」に加えて、MINXのカリキュラムを身につけてどんなことを実現したいのか、肉付けをしてもらえると我々も理解しやすいですね。
あとは、その人の素を見るために突然関係のない質問もします。
――どのような真意が?
働き始めたら、数多くのお客様やスタッフと関わるので、必ずしもマニュアル通りに…とは進まないことが多いんです。だからこそ、志望動機や自己PRなど準備してきたであろう質問以外に、最近の政治・経済などから「●●についてどう思う?」「●●(そのとき話題のトピック)って知ってる?」と質問をしています。とっさの話題に対して、どういう対応をするのかなと、反応を見てその人の対応力を見ています。何も意地悪をしたいわけではありません(笑)。
同様に、協調性はある程度持っていてほしいです。教育サロンとして謳っていますから、自分だけ良ければ良いというタイプの考えは厳しいですね。言葉だけで「協調性があります」と宣言するよりは、学生時代に仲間と優勝を目指して部活動に取り組んだとか、話すことが苦手だから克服するために飲食店でアルバイトを経験したとか、具体的に取り組んだ出来事を盛り込んで説明してもらえると、納得しやすいです。
――ずばり、三次に進んでいる人たちの共通点は?
一緒に働いているところが想像できる人です。なんて言ったって、これから「一緒に働く」ことが目的。MINXの方針やコンセプトに賛同いただいた前提で、共に行動できそうだと感じられたら、角度は高いのではないでしょうか。
自分がやるべきことが分かっている人は一目置かれる
――三次で行われるサロンワークについて、フローを教えてください。
期間は1人につき、2日間。勤務先は、都内にある原宿、渋谷、銀座、青山のMINXの直営店のどこかに配属されます。
お客様には触れることはできません。主な業務は、スタイリストのアシスタントをするようなイメージです。施術の際にロットやドライヤーなど必要なアイテムを手渡したり、お客様のご来店に合わせてタブレットやドリンクを出したり。ほかにも、店内清掃や洗い物などといった雑務をメインにこなしてもらいます。
――特に見ているところは?
周りを見て、いろいろなことに気づけるかどうかは気にしています。「今、自分がやるべきことは何か」を考えて、率先して動ける力が好ましいですね。もっと求めるならば、周りの人たちと協力し合うことを視野に入れながら行動できる人が望ましいです。
――好印象だった人は?
誰もが少し面倒くさい、嫌だと思うような業務を積極的にできる人は、すごいなと思いました。
サロンは、カラーやパーマなど施術ごとに多くの備品を使用します。MINXは回転率が高いので、その都度薬剤のカップやロッドなどを洗う必要があるんですね。知ってか知らずかある年の応募者で、ずっと洗い物をしている方がいました。普通はできるだけ自分を良く見せるために表でアピールしたいと思うはず。ところが、その方は率先してバックヤードで洗い物をしていたんですね。やっぱりそういう方には、思わず声をかけちゃいますよ。周りを見て、自分がやるべきことがしっかりと見えている方なんだと感じましたね。その方はもちろん、MINXの一員として活躍しています。
――NGだった行動はありましたか?
自分が率先してやるべきことを…と話しましたが、自分の評価だけを気にして単独行動をする人は、不安になってしまいますね。採用されたいがために、周りと協力せず、全て自分でやろうとする人も稀にいて。もちろん、大勢いる中で採用を勝ち取ることに必死になる気持ちは分かりますが、その中で自分ができることを考えるのが先決だと思います。
誰がどのポジションにいて、どう動いたら効率よく場を回せるのか、考えて働ける人を求めています。
――サロンワーク後の最終面談について教えてください。
2日間とも、一日働いたあとに個人面談をします。主に、その日働いてみての感想がメイン。「あれができなかった」「こうすれば良いと思った」など、一日を振り返りながら、応募者は改めてMINXで働きたいのか、こちらも一緒に働いていくイメージが湧くのか、両者が再確認できる重要な機会とも言えます。
――合否に関わる、サロンワークの重要度は?
ここですべて決まるわけではありませんが、合否を決める貴重な判断材料となります。
三次のサロンワーク体験は、いよいよ自分の行動が直接、スタッフに見られる場面です。MINXについてしっかり予習したうえで、採用されるためにどう動いていくと良いのか、考えて取り組んでほしいですね。
見ている人は細部まで見ている。的外れな自己PRはなるべく避けるべき
――一連の採用試験の中で、気にしているところがあれば教えてください。
良い意味でも悪い意味でも気になると感じた人に対して、歩き方や所作も見るようにしています。
面接では良いことを言っていたけど、そのあとの歩き方や背筋を見て「あれ?」って思うことがあって。もし気になるようであれば、そういうところにも気を配ってみるといいかもしれません。
――全体的に、マイナスになりかねない行動はありますか?
こちらが求めている以外のことをされたときでしょうか。例えば、一発芸をするとか歌を歌ってみるとか…これらは過去に実際にあった事例です。
自分が働きたい会社であれば、必ず企業研究をしますよね? そのうえで受けに来ていると思っているので、的外れなアピールをされるとその程度だったんだと思ってしまいます。自分を知ってもらうために表現するときは、それぞれの企業に合わせた方法で勝負するべきだと僕は思いますね。
採用される面接時のポイントまとめ
1.入社したい理由を将来のビジョンも見据えて伝えられる
2.今まで経験してきた出来事が何の役に立つのか自分で説明できる
3.面接の種類に応じて、常に適切な判断・行動ができる
次回は、採用したい人材の特徴などについて詳しくお聞きします。
取材・文/東 菜々(レ・キャトル)