お子さんの障害診断を受け、夢を持って独立。「gooen」代表・中村麻理さん

美容業界でもママ美容師として働く人が増えている一方、小さな子どもを育てながら店舗を構えて独立する人はまだまだ少ないのが現状ではないでしょうか。

そんななか福岡の美容室「gooen」の代表を務める中村麻理さんは、当時小学校2年生と年長のお子さんを育てながら独立。その大きなきっかけとなったのは、下のお子さんが中度知的障害の診断を受けたことだったといいます。お子さんの選択肢が広がり、さらにご自身の夢も叶えられればと独立した中村さん。1日6時間と短い営業時間でありながら、早くも予約の取れない人気店となっているのはなぜなのか、お話を伺いました。

今回、お話を伺ったのは…

中村麻理さん

美容師/「gooen」代表

東京にある美容室「morio」で13年間キャリアを積み、コンテスト入賞経験多数の実力派美容師として活躍。妊娠、出産を機に故郷の長崎にも近い福岡に移住し、「rocca」に3年間勤める。2021年12月に独立して「gooen」をオープン。開業から10ヶ月足らずで、予約のとれない人気店に成長させている。

中度知的障害の診断を受け、お子さんの可能性を広げるためにも独立を決意

2021年12月にオープンした中村さんのサロン「gooen」

――上のお子さんが小2、下のお子さんが年長さんとまだ小さいときに独立されていますね。その理由は?

夫が自営業で内装の仕事をしていることもあり、2020年の夏ぐらいから独立を勧められていたんです。それまで独立を考えたことはまったくありませんでしたが、夫が物件も探してきてグイグイ勧めてきて(笑)。物件のデータを見ていると実感がわいてきて、独立もいいかもと思い始めていました。

それから半年くらい経ったときに、下の息子に中度知的障害があると診断されて。一時は独立の話しが白紙になるくらいショックでしたし色々と悩みましたが、一番不安だったのが子どもの将来のことだったんです。この子に働く場所はあるのかということを考えてしまって。でも私がお店を構えていれば、夫か私のお店でも働ける可能性が増えますし、選択肢が広がると思ったのと、子どもに何かが起きたときに自分がすぐに動ける状態にしておきたいと思い、独立を決めました。今まで働いていたお店も良い方ばかりで子育てに関してもフォローをしてもらえる環境だったのですが、私自身がお休みをしたり、調整をしてもらうのが申し訳ないと思っていたので…。子どもの診断のことで思い切って決断できたことは、結果としてよかったと思っています。

――独立の形として、自宅サロンなど小さく始めることもできると思いますが、店舗を構えたのはなぜなのでしょうか?

ひとつは、独立するからには店舗を大きくしたいという思いがあったからです。自宅サロンにしてしまえば、家賃はかかりませんが、1人での施術になるので売上の限界はすぐに来てしまうと思いましたし、それだと店舗が大きくなる展望が見えなくて

もうひとつの理由が、仕事とプライベートをきっちりわけて、がんばり過ぎないようにするためです。東京で美容師として働いていたときも、がんばり過ぎてしまって生活に支障をきたすことがよくありました。今は子ども達もいますし、私が倒れてしまったら大変なことになると思ったんです。

 1日6時間、週休2日でがんばり過ぎない営業スタイルを確立

ママ美容師である中村さんを頼り、キッズカットに訪れる人も多いそう

――がんばり過ぎないように心がけていることは、ほかにもありますか?

店舗を構えると決めたときに、自分ががんばり過ぎない基準として10時から16時までの1日6時間営業、週休2日と決めました。実際6時間にしてみると、体もとても楽で、朝お越しいただいたお客さまにも、夕方お越しいただいたお客さまに、100%の力で施術ができるようになりました。心の余裕もできてとてもいい営業スタイルが確立できていると思っています

――独立してからの集客はどのようにしていますか?

ありがたいことに前のお店から継続して来てくださる方が全体の7割くらいはいらっしゃるので、予約サイトを使っているくらいでとくにこれといってやっていることはありません。前のお店のオーナーが理解してくださり、とても良好な形で辞めることができたのが大きかったと思います。前のお店で担当していたお客さまには辞めることと後任の担当者も伝えたうえで、お客さまにどちらを取るか選んでもらえる形を取らせてもらえたんです。

あとは割と大きな道に面した1階のお店なので、オープン当初から「ここは何なんだろう?」と目に留めて来てくださっている新規のお客さまが多いですね。出店をしてから何かをしたというより、出店の前に集客に困らないよう、エリアを選んだのも功を奏したかもしれません。1日あたりの乗降客数やどれくらい住民がいるかなど、お客さまになってくださる層の人数については調べて、問題ないと思ったのでここに出店しました。

東京時代に培った技術と接客で、お客さまとの信頼関係を築く

中村さんの確かな技術力にお客さまの信頼も厚い

――おひとりでお店を経営されているということで、お子さんの急な発熱等でお休みになることもあるかと思います。お客さまにはどのようにして理解をしていただいていますか?

お客さまとの会話のなかで子どもがいるということはお伝えしていて、ご理解いただいています。予約を変更していただいたときは、そのあとになるべく早くご来店していただけるように調整しますし、難しい場合は定休日にお店を開けることもあります。私のお客さまはママさんも多いのですが、これはお客さまの都合で予約が変更になったときも同じです。私の都合で休みになってしまい、どうしてもこの日でないとだめというお客さまには、以前働いていたお店に協力してもらって担当していただくこともあります。

――そういった急な変更も、お客さまとの信頼関係が築けていないと難しいと思うのですが、信頼関係を築くために意識していることはありますか?

お客さまとコミュニケーションをしっかりとって、お客さまのことを知ることが基本だと思っています。この軸は東京時代に働いていた「morio」で築かれたものかもしれません。「morio」ではお客さまと話をしてきちんと知るために、基本的に雑誌をお渡ししないことが多いんです。お話が苦手な方もいらっしゃるので、お客さまの表情から状況を察するようにもしていました。

たとえば小さいお子さんを抱えて疲れているお客さまに、「髪をきれいにするためにこのトリートメントをつけてみましょう」とか「このシャンプーがおすすめです」と伝えても響かないですよね。だったら手入れが楽な髪型を提案する方がお客さまもうれしいと思うんです。そして接客のときに少しでも気持ちのケアができるように心がけてきました。このようにお客さまの生活環境を知ることは基本であり、すごく大切なことだと思っています。

――東京時代は数々のコンテストに出場されていて優勝経験もあるとのことですが、その経験もサロンワークに活きていますでしょうか?

そうですね。このモデルさんを輝かせるにはどうしたらいいか、審査員からどのように見られるかなど、他者目線を意識するようになったのかなと。美容師としては自分の好きなこと、やりたいことにこだわり抜くだけでなく、お客さまに求められているものは何なのかを見抜くことも必要だと思っています。


ママ美容師でありながら独立が成功した3つの理由

1.自宅兼サロンではなく、別に店舗を構えることで仕事とプライベートをきっちりわけた

2.1日6時間営業、週休2日制にしてがんばり過ぎないようにした

3.これまで培った技術と接客でお客さまとの信頼関係を築いた

後編では、ママになったからこそストレスのない働き方ができるようになったという中村さんに、そのポイントを伺います。何かをしながら考える「ながら考え」をやめる、決めたら即行動する、効率より楽しい方を重視するなど、工夫をしているという中村さん。その結果、仕事の時間が楽しく、息抜きにもなっているといいます。 後編もお楽しみに!

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Salon Data

gooen
住所:福岡県福岡市西区姪の浜4-2-4-2
TEL:092-834-8417
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