大切な仲間とお客様がいるUn amiで、ずっと働きたい!妊娠・出産後も変わらない思い【美容師 花野未帆さん】#1
相手の心をほぐすような笑顔と、細やかな気遣いで接客する花野未帆さん。独身時代も現在も、おしゃれを楽しむ働く女性や、子育てママ世代からの指名が多い人気美容師です。仕事ひと筋の20代を過ごしながら、本人も驚くほどのスピーディな展開で今や一児のママに。「このサロンだからこそ、出産後も変わらず働きたいと思った」と、Un amiでは3人目のママ美容師として活躍中です。
前編では、独身時代の働き方やパートナーとの出会い、産休と緊急事態宣言が重なってドタバタの経験をしたことなどを語っていただきました。
お話を伺ったのは…
joemi by Un ami
トップスタイリスト 花野未帆さん
20代後半〜40代の働く女性からの支持が高く、ライフスタイルや髪悩みに合わせて心地よく過ごせるヘアスタイルを提案。都内1店舗を経て、2011年に22歳でアンアミ入社。2015年にjoemi by Un amiでスタイリストデビューし、翌年トップスタイリストに昇格。2019年に30歳で結婚、2020年4月から産休・育休を取得し、男の子を出産。2021年4月に職場復帰。
Un amiとの出会いが、美容師人生のターニングポイント
――サロンワークのほかにヘアカタログや雑誌の撮影でも活躍されていますが、それはいつ頃から?
自分でヘアを担当して撮影に参加したのは、スタイリストになって1年後くらいからです。でもアシスタントのときから、先輩の撮影にメイク担当として参加させてもらっていました。
特にメイクの勉強をしていたわけではなかったので、何もわからないところからのスタート。最初にアシスタントとしてついた先輩が、やってみなよと言ってくれて。先輩の作品撮りのお手伝いから始まり、メイクカリキュラムでも学びつつ、徐々にいろいろな撮影でメイクをさせてもらうようになりました。
――今ではメイクが花野さんの武器になっていますね。
そうですね。出産を経て復帰した今も、またヘアメイクをさせてもらっています。若いモデルさんだけではなく、自分より上の年代の方のメイクもするようになり、全員ができる経験ではないのでありがたいなと思います。
私にとって、Un amiに入社したことが美容師としてのターニングポイントだったなと感じます。最初の美容室を辞めて次のお店を探していたときに、どこにも受からなかったらもう美容師を辞めようと思っていたので。アンアミに入れて、いろいろな経験をして、今もこうして働けているのが感慨深いです。
――独身時代は、将来的な結婚や出産についてどのように考えていましたか。
いずれ結婚したいなと漠然と思っていましたが、20代のうちは仕事に打ち込みたいという気持ちが強かったですね。というか、結婚できないかもと思っていました(笑)。なにしろ、朝8時前後にはお店に行って、練習と勉強会をしてからサロンワーク、さらに夜も練習。朝から晩までずっとお店にいて、帰宅するのは日付が変わる頃。結婚したくても、相手と一体いつ出会うんだろうって。
パートナーとの出会いから、結婚・妊娠までスピード展開
――パートナーとの出会いについて教えてください。
29歳のときに、友人に誘われて飲みに行った先で知り合いました。話すうちに意気投合して、毎週飲みに行く仲に。そんな感じが数ヶ月続いて、私の誕生日におつきあいすることになりました。彼はCGアニメーション制作の仕事をしていて、私は美容師で、お互いに不規則な生活。その点でも理解し合える部分が大きかったのかもしれません。
そして、つきあって半年くらいでプロポーズされました。本当に自分でもびっくり。ついこの間まで、一日中お店にいる生活だったのに…と。
――その頃は、ママ美容師になっている先輩はいたのですか。
子どもを生んで戻ってきた先輩がいて、彼女はUn amiのママ美容師第一号。それまでは、このサロンでママ美容師が成立するのか謎でしたし、産休がとれるのかどうかもわからず不安でした。その先輩が手探りで進みながら、レールを敷いてくれたんです。さらに、出産を控えている先輩もひとりいました。
――ご自身が妊娠した際は、その後の働き方についてどのように考えましたか。
妊娠がわかったとき、「まだまだUn amiで働きたい」という思いがまっさきに浮かびました。家の近くの美容室に移るとか、美容師を辞めるとか、そういうことは一切考えなかった。会社に妊娠の報告をしたときも、私がママ美容師として働くにあたって、いろいろ考えてくれているのが伝わってきました。
美容師としての仕事が好きなのはもちろん、Un amiのスタッフがすごく好き。そして、このお店に来てくださるお客様も好き。美容師自体はどこででもできるんですが、うちのスタッフやお客様にはここでしか会えない。私がここで働き続けたい理由は、やっぱり「人」ですね。
――妊娠中に大変だったことはありますか。
一度、切迫流産になったことがあります。実は妊娠前、子宮や卵巣に病気があって治療をしていたのですが、それを知っている夫や職場の先輩にすごく心配されて。気をつけなきゃダメなんだと自覚して、自宅で2〜3週間しっかり休養し、体調を整えてからサロンワークに戻りました。
おなかが大きくなってくると、些細なことでもまわりのみんなが気にかけてくれました。お客様に雑誌をお出しするのまで「やります!」と言ってくれて、まるで女王様みたいな扱い!バックヤードでは社長にイスを譲られるし、先輩も後輩も至れり尽くせり…。もし、誰か後輩が妊婦さんになったら、私も同じようにその子を大事にしてあげたいです。
緊急事態宣言とともに始まった産休・育休
――産休に入る前、仕事の引き継ぎはどのように?
私がお休みすることで、お客様が美容室難民になるのは一番悲しいパターンだと思ったので、自分のお客様は全員誰かに引き継ぎをしました。ひとりだけじゃなくて、最低でもふたりは「この子なら絶対間違いないです」というスタイリストをお客様に紹介しました。そのスタイリストの名刺を渡したり、時間が合えば直接話をしてもらったり。カルテにも引き継ぎ事項を詳細に書きました。
――100%引き継ぎとは、すごい!
ただ、予定していた産休開始日よりも先に、緊急事態宣言下でお店が休業になってしまったんです。産休前のギリギリまで予約が入っていたのですが、全部キャンセルさせていただくことになり、最後に直接お話しできなかったお客様もいて本当に残念でした。
休業になる前日は、住んでいる市で開催されたママの勉強会に参加していたんです。そうしたら先輩から急に電話が来て、「明日から休業だから、今から店に来れる?お客様に自分で電話する?」と言われて。急いでお店に行きました。どうしてもその日のうちに髪を切ってほしいというお客様も来られて、とにかくバタバタの一日だったことを覚えています。
――予期しない形で産休に入ったわけですね…。
産休・育休について自分なりに調べたりしていたのですが、私の場合はイレギュラーすぎましたね。どうなるかなんて、誰もわからない。保活もままならないし、どちらを向いても立ち行かない感じがしました。
保活は、そろそろ保育園の見学をしようかなとか、市役所から前年度の資料を取り寄せようかなとか、動き始めたばかりの頃。保育園の見学は感染者数によって当日に可否がわかるため、ほぼ毎日どこかの保育園に電話をしていた気がします。見学できたとしても、中には入れず入り口から見る感じでした。
大変ではありましたが、予定より3週間ほど前倒しで産休に入ったので、時間がたっぷりあったという点では助かりました。
――産休中、仕事復帰への不安はありましたか。
サロンが休業中は、「休業中に自分でできることを見つけて実践しましょう」「それぞれ目標を持ってインスタグラムを更新しましょう」などのメッセージがグループラインに流れてきて、強い気持ちをもらっていました。私は産休に入ったけれど、とにかくできることをやろうと思えたんです。
Un amiに関わる「人」が大好きという花野さんの思いは、仕事を続ける原動力。先輩ママ美容師の存在や会社のサポート、パートナーの理解などを「すごくありがたい」と感じながら、仕事と子育てを朗らかに両立しています。
後編では、産休・育休中に始めたヘアアレンジ動画の配信や、復帰してよかったと思うこと、ママ美容師だからこその強みなどをお聞きします。
取材・文/井上菜々子
撮影/喜多二三雄